シトウレイの東京見聞録

新しいものに出合える、服好きたちが通う店。

シトウレイの東京見聞録

「久々にワクワクするお店みつけた!」って、ファッションのプロやセンスの鋭い彼女たちが絶賛するお店がある。青山、9月に新たにオープンしたレショップの2階、レディスのフロア。

ここは雰囲気がなんだか少し、私の好きな古着屋さんに似ている。いい意味でわかりやすくないレイアウト。てくてく宝探しのような感覚で「これ!」って思う洋服やアクセサリーを見つけ出す感じが。

「実は私、バイヤー経験がなくてこのお店が初めてなんです」。このレディスフロアのバイヤー谷山さんがそう話し出して、私は少し驚いてしまう。この商品のラインナップの幅広さ、たとえばアフリカの部族の人たちが作ってる土産物のネックレス、LAのギャルなブランドのセットアップや古着もあって、ベーシックでトラッドなブランドもあって……。きっと経験の豊富なプロの目利きがやっているんだって思ってたから。

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コロラントというニューヨークのブランドは、天然染めというところが気に入ってバイイングしたそう。ワンピース¥51,321

「レショップは、服好きの為の総菜屋というコンセプトのもとスタートしました。美味しいおかずをたくさん取り揃えているので、お好みスタイルで好きなものをピックアップしてください、というスタンス。なので、シーズンのテーマの設定だとか、コーディネートの提案はあえてしません。とにかくなるべく幅広いものを置こうとは意識しています。自分の好き嫌いって判断じゃなくて、自分の価値観にはなかった視点でものづくりをしているデザイナーだったりブランドだったり、自分がいままで見たことなかったものを取り扱おう、と」

ストリートスタイルフォトグラファーとして、被写体を選ぶ基準は「好きか、そうでないか」がすべてなので、まったく考えてみもしなかった判断機軸で「選ぶ」というその価値観になんだか感動してしまう。こんな考え方があったんだ。

なるほど、なんでここがおもしろいのか、ファッションのプロに支持されているのかが腑に落ちる。このお店の醍醐味は「予定調和のない」その点なんだろう。好き嫌いで選ぶと、価値観やテイストは固定されたり似通ってしまったりする。その価値観が確立されたライフスタイルとばっちりはまる人には密月がずっと続くけれど、常に新しいものおもしろいものを身に着けたい、チャレンジしたいって人には、付き合いが長くなるほど意外性が目減りする。そしていつの日か退屈が訪れる。この店は、そんな予定調和を見事に裏切る。その裏切りがお客さんの立場でいえば新しいファッションとの出合いにつながる。ファッションが好きな人たちは、ファッションに能動的にかかわることが楽しみであったりする。つまり上げ膳据え膳で洋服やブランドがどんどん提案されて出てくるよりも、狩猟にでも行くかのように能動的に自分で探して見つけるそのことがワクワクの基になんだと思う。逆に、ファッションに距離を置く人は、見つけるための手間暇時間の面倒くささが敬遠の要因なのだともいえる。スティーブ・ジョブズが同じスタイルを365日続けていたように。ファッションのプロや好きな人たちにとって、ここは「見つけ出す」楽しみ、「探す」ワクワクが詰まった空間なんだろう。

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キルティングのパッチワークで、“可愛い”をひたすら追求しているところにおもしろさを感じたというカーリーンのコレクション。スカート¥78,840

「ただ、『わかりにくい』とも言われます。置いてあるものも『これどうやって着るんだろう』ってクセがあるものも多いし、いわゆるいま売れている有名なブランドや、すでに人気のあるブランドは扱っていないこともあって。誰にでも似合う服ではなく、着る人を選ぶ服が多いのかもしれません。お客様はやはりファッション業界の方が多かったり、昔からファッションが好きだったであろう大人、40代や50代の方が多いです。トレンドやネームバリューで服を買わない、ある意味自分の価値観が確立した人というか。もう少しいろんな人に来てもらいたいなっていうのは今後の私たちの課題でもあるんです」
谷山さんはバイイングの時期以外は販売員として店頭に立つ。
「もともと接客が好きだっていうのもありますが、何よりお客様の反応が見られたり意見がもらえたりするのがかけがえがなくて。耳が痛いアドバイスをくれるお客様もいるんです。そういうのはとても貴重です。お店を気にかけてくれているからこそのものですから」
作る人、買う人お互いの顔を見て寄り添って、その両者をつなぐという仕事のスタンスは昔ながらのプリミティブだけど、これからのビジネスにとって必要なことだ。

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バイヤーの谷山紀子さん。

ふと柳宗悦の言葉を思い出す。ある人が「どうしたら美しいものが見えるようになりますか」と質問をした時の彼の答えが「今見ヨ、イツ見ルモ」だった。それは「いま、初めて見たかのような素直な気持ちでものを見ると、美しさを見出すことができる」ということ。フラットな気持ちで自分の価値観に固執せず、興味を持ってひと、もの、ことに接していくこと。ピュアな視点で世の中を見つめる、ということ。

人の心を動かすことができる人に共通して言えること。

L'ÉCHOPPE 
東京都港区南青山3-17-3 1F & 2F
tel:03-5413-4714
営)11:00~20:00
休)不定休
lechoppe.jp

シトウレイ

日本を代表するストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト。
石川県出身。早稲田大学卒業。
被写体の魅力を写真と言葉で紡ぐスタイルのファンは国内外に多数。

毎シーズン、世界各国のコレクション取材を行い、類い稀なセンスで見極められた写真とコメントを発信中。ストリートスタイルの随一の目利きであり、「東京スタイル」の案内人。

ストリートスタイルフォトグラファーとしての経験を元に TVやラジオ、ファッションセミナー、執筆、講演等、活動は多岐にわたる。

IG : @reishito
TWI : @stylefromtokyo
FB : https://bit.ly/2NJF53r
YouTube : https://bit.ly/3ePodV8

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