テーマは、「HEAT、ME-HEAT、RE-HEAT」。熱する、暖まる、温め直す。
「エミール・エルメス賞2011」(Prix Émile Hermès)の作品公募が始まりました。同賞はエルメス財団が主催するデザイン・アワード。3年に1度の開催です。
対象は40歳以下、プロのデザイナーやエンジニアと、プロのデザイナーを志す人々(最終学年に在籍する学生)。2008年のエルメス財団発足と同時に第1回が開催され、今回が2回目。前回はヨーロッパの国々に限っての公募となっていましたが、今回は世界規模で作品を募集しています。



前回、第1回「エミール・エルメス賞」受賞作の展覧会風景。2008年秋にパリ 装飾美術館、2009年春にミラノ トリエンナーレで催され、各時期にちょうどパリとミラノにいた私は双方を鑑賞できました。写真はミラノ。Photos: Noriko Kawakami
人類の歩みと切り離せない、「火」。文明の発展に大きな影響を及ぼしてきた「火」そして「熱」。今回のテーマを説明する応募要項に目を通してみると、若きデザイナーたちの深い洞察が期待されていることが伝わってきました。
「火を支配することは、どの時代においても、人類の挑戦でした」。応募要項から一部を抜き出してみます。「何世紀にも渡って、人間は創意工夫により、エネルギーを生み出す新しい方法を見いだし、また『熱し、暖まり、温め直す』ことを意図した新しいものを創造してきました。熱の応用と利用法は、終わることのなきテーマなのです」
「最も原始的なものから、最先端のテクノロジーまで、生命に不可欠な要素である熱は、一貫して人類の研究対象でありました。また、エネルギー源の支配は、地政学に密接に関わっている争点でもあります」
ライフスタイルやデザインの考察はもちろん、人間について、さらにはヒューマニズムに関する考察も不可欠な根源的なテーマ。だからこそ、作品を審査するのは、デザイナー、エンジニア、デザイン史家……と幅広い分野の専門家たち。
審査員長には建築家の伊東豊雄さん。他の審査員には、オランダのデザイナー、Jürgen Bey(ユルゲン・ベイ)、アメリカのデザイン史家、Mel Byars(メル・バイアーズ)、ポンピドゥ・センター デザイン部長のFrançoise Guichon(フランソワーズ・ギション)、デザイン誌『intramuros(アントラミュロス)』編集長のChantal Hamaide(シャンタル・アメイド)、フランスのエンジニア、Bernard Yannou(ベルナルド・ナヌー)。錚々たる顔ぶれです。
エルメス財団会長でエルメス・インターナショナルのアーティスティック・ディレクターを務めるPierre-Alexis Dumas(ピエール・アレクシィ・デュマ)、エルメス財団副会長で『petit h』アーティスティック・ディレクターのPascale Mussard(パスカル・ミュサール)も審査に加わります。
今回、「エミール・エルメス賞2011」のイメージ。Courtesy of Hermès Japon
応募要項には、「未来に目を向け、地球環境をきちんとふまえた作品を歓迎する」ともありました。「必要なエネルギー源についても言及してください。また、生産にあたっては、環境へのダメージを最小限にし、各土地で入手可能な資源を利用できることが望ましいです」。ドリームプランではなく、プロダクト化が可能な提案を、とも。
コンセプトが明瞭で、機能をしっかりとふまえながら、創造性に富み、革新的であること。審美性を備えていること。手作業や工業技術をきちんと理解し、完成度が高く、環境への具体的な配慮も怠っていないこと……エルメスの企業哲学として常に大切にされている様々な側面が、今回の選考基準にも反映されていることを感じます。
生活のあらゆる局面に関わる「火」「熱」を巡る考察と、地球へのダメージを軽減していく手腕がまさに試されるインターナショナルな作品選考。興味を持った方々は、以下のホームページでエントリーを。11月30日(パリ時間)までオンラインによる申し込みを受け付け中です。そして結果発表はちょうど1年後、来年10月とのことです。
それにしても、世界中からどのような力作が寄せられるのでしょうか。以前に私は
水をテーマにしたデザイン展の企画に関わったことがあるのですが、身近な水を熱することも沸騰させることもできるのが、火という存在。天上の火を盗んだプロメテウスの時代から、エネルギー問題を直視しなくてはならない現代まで、「火」と人間の関係は、考えるほどに興味深い……。結果発表まで、実に気になるデザイン・アワードです。
応募要項、エントリーフォーム
http://www.prixemilehermes.com
Noriko Kawakami
ジャーナリスト
デザイン誌「AXIS」編集部を経て独立。デザイン、アートを中心に取材、執筆を行うほか、デザイン展覧会の企画、キュレーションも手がける。21_21 DESIGN SIGHTアソシエイトディレクターとして同館の展覧会企画も。
http://norikokawakami.jp
instagram: @noriko_kawakami