【界 松本/長野県】浅間温泉でおこもりステイ。ワインと音楽を嗜む湯宿へ。

Lifestyle

『界 松本』全館リニューアルオープン、
松本の奥座敷、浅間温泉で‘おこもり’

2011年11月、日本初の温泉旅館ブランド「界」が誕生し、「界 津軽」「界 松本」「界 出雲(現・界 玉造)」「界 阿蘇」の4軒がほぼ同時期にデビューしたのは衝撃的でした。

早いものであれから15年が経ちました。共通するコンセプトに挙げた「王道なのに、あたらしい。」は、いまも古びることなくすべての「界」に継がれ、それぞれの「界」で新鮮なテイストを奏でています。

「界」は、それぞれの地元の歴史や伝統に敬意を払い、その土地に継承される伝統工芸、芸能、郷土食、文化の一端を再発見できるよう「ご当地楽」として、スタッフ自らが演じ、時には踊り、時には弁士のように語る、様々な方法で滞在客にその土地の魅力と「界」の特徴を披露し訪れる私たちを楽しませています。

レトロモダンでスタイリッシュな「界松本」の外観。筒形の建物は「ソノリテコンサート」が開催されるドーム型のロビー。

「界 松本」は、国宝松本城のある城下町松本の中心からは車で20分ほど。繁華街を過ぎ、なだらかな坂道を登り、松本市街を見渡せる小高い坂地に広がる浅間温泉の一角に「界 松本」が佇んでいます。

晴れていれば宿からの見晴らしは素晴らしく、国宝のある松本市街を通して絵葉書のように美しい北アルプス連峰が遠望できるのです。ここ浅間温泉の歴史は古く、開湯1300年、飛鳥時代にまで遡るという老舗の温泉です。またかつては松本城主の御殿湯としても知られる名湯でもありました。

美しく全面改装されたロビー。松本は「楽都」として知られる文化都市。この街を愛した故小澤征爾さんは毎年、松本でクラシックコンサート”サイトウ・キネン・フェスティバル松本”(総監督:小澤征爾)でタクトを振るった。ウィンドウにはギターが飾られている。ギター生産数日本一は長野県、特に松本周辺が盛んで長野は国内生産の約半分を占める。

浅間温泉旅館協同組合の資料によれば、「江戸時代には松本城の殿様が通い、明治になると与謝野晶子や竹久夢二に愛された」とあり、一方で、浅間温泉は“美人の湯”としても繁栄を続け、いまに至るという豊かな歴史が宿る名湯温泉地なのです。

温泉三昧とワインと音楽、
「松本エレガンテに浸る湯宿」

客室「GAKUスイート」(133㎡)、リビングと寝室に分かれ、温泉露天風呂、サウナ、水風呂、テラスが備わる。

浅間温泉が松本の奥座敷と呼ばれる所以はなぜでしょうか。賑わう繁華街があるわけではなく、松本市街地から遠く離れている訳でもありません。それでも奥座敷と呼ばれるのは、山あいの風情を残す閑静な湯治場・行楽地であり続けていること、今尚、奥まった印象の静かな家並の続く坂の上にあるからに違いありません。

「GAKUスイート」の寝室。天気が良ければ眼下には松本の街が見渡せる。

「界 松本」にチェックイン後はゆったりと温泉に浸かり、おいしい食事を摂り、忙しい日常を離れてのんびりと過ごす、そして音楽や信州ワインに親しむ……おこもりがお勧めです。なんとも贅沢なこの「おこもりの温泉宿」は、2026年8月4日、全館リニューアルオープンを迎えたばかりなのです。温泉は八種十三通りの湯浴みが楽しめ、内風呂、露天風呂、日本では珍しい「ラディアントバス」(石とタイルで作られた寝椅子でじんわりと体を温めリラックス効果)、檜の芳香が心地よい「檜おがくず風呂」、寝湯など、8種類もの入浴が満喫でき、まさに温泉三昧が可能です。さらにスイートルームや特別室には、贅沢なプライベートサウナが設置されているのです。

「GAKUスイート」の露天風呂はゆったりと広い。バスルームにはシャワー、一般の湯船も設置。
「GAKUスイート」のプライベートサウナ。
自慢の広いスペースの大浴場、8種13通りの湯浴みを楽しめるのが特徴。
写真は内湯「貴天」、もうひとつは「祥雲」、時間で男女が入れ替わる。源泉52℃で湧き出るアルカリ単純泉のなめらかな温泉。
大浴場にある「ラディアントバス」、床面から温熱が伝わる輻射熱温浴で医師とタイル性。じわじわと体を温め……。

「界 松本」の新たなコンセプトには、「松本エレガンテに浸る湯宿」と掲げられました。信州松本は、工芸文化も、食文化も充実し、とりわけクラシック音楽が浸透した「楽都」としても知られた街なのです。外せない魅力の“音楽“に浸るスモールラグジュアリーな温泉宿「界 松本」として、全室に懐かしいレコードプレーヤーが置かれ、LPレコードの音色を懐かしむのも新しい提案です。“学都“と呼ばれる松本市では、年に一度の芸術祭が開催され、「セイジ・オザワ松本フェスティバル」が大好評です。音楽に親しむ街らしく、ここ「界 松本」のご当地楽は、ロビーで毎晩開催される本格的な生演奏会「ソノリテコンサート」です。宿泊のゲストは、食後のゆったりとした時間に生演奏を楽しむという贅沢なご当地楽なのです。私も久しぶりの生演奏を間近で聴いて、音楽に対する感性が呼び起こされた気分でした。

演奏舞台となるロビーは、ドーム型の天井まで10mもあるホールに早変わり。音響効果も高く、美しくリニューアルされたロビー空間は、まるで音楽を聴くために造られたような印象を受けます。そういえば、ロビーの様子は、改装前とはすっかり印象が変わり、より明るくゴージャスな雰囲気が漂っています。そしてロビーの一角にはワインバーも造られ、ワイングラス片手に信州ワイン「NAGANO WINE」を楽しみながら、優雅に生演奏を堪能することが可能なのです。私の滞在したこの夜はピアノとギター2本の生演奏でした。音楽は五感に心地よく響き渡り、人の心に感動を呼び覚まし、さらに余韻を残してくれるのだと実感した夜となりました。

今回の大掛かりなリニューアルと同時に改定されたのは、湯宿の夕食として定番の会席料理ではなく、地元信州の厳選ワインとのペアリングが楽しめる“イタリアン”のコースが提供されています。

夕食のイタリアンで最初に出されるストゥツキーノ(Stuzzichino)。イタリアンのコースの始まり、アンティパストの前に「おつまみ」や「お通し」のように。黒光の器はピアノをイメージ。
薄く重ねたサーモンをレコード盤に見立てた層状(ミルフィーユ仕立て)に。新鮮野菜を添えて。

到着後に温泉で旅の疲れを癒し、ラフな服装や館内着のまま夕食へ。そして夕食には、信州ならではの食材を活かした料理が供され、同時に信州ワインのマリアージュも楽しめるのです。桔梗ケ原地域にある18のワイナリーのうち、9つのワイナリーを中心に、宿には厳選ワイン約50種が常備されています。“桔梗ケ原ワイン”とは、松本の隣町である塩尻市に位置し、日本を代表するワイン産地(桔梗ヶ原ワインバレー)の有名な銘柄です。

館内中央部に造られた「テラス」、中央にはガス暖炉。朝の目覚めを爽やかにするアクティビティの一つ「界の現代湯治体操」もここで。

「界」に泊まる満足感は、日本の温泉旅館の新しい魅力を再発見すると同時に、こうして地元ならではの食材の楽しみや、その土地に継承される文化的な魅力を知る高揚感も大いにあります。「界 松本」では、第一に“館内おこもり”がお勧めですが、実は、城下町らしい老舗の和菓子、鰹節、飴、蕎麦店、アンティーク家具や食器のギャラリーも多く、また国宝松本城の見学、充実した美術館巡りなど、松本に降りればショッピングや散策も楽しめるため、是非、2泊以上の連泊滞在をお勧めします。

界 松本
長野県松本市浅間温泉1-31-1
界予約センター(9:30〜18:00)
050-3134-8092
https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaimatsumoto/

せきね きょうこ

ホテルジャーナリスト

スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。