自宅で過ごす年末年始、パリ・オペラ座でバレエをレンタル。

パリとバレエとオペラ座と。

パリ・オペラ座に生まれたデジタルプラットフォームの「L'Opéra chez soi(オペラ・シェ・ソワ)」。これは中国を除く世界各国からアクセスが可能なので、劇場が閉鎖中のいまの時期、パリにいようが東京にいようがパリ・オペラ座バレエ団の仕事を堪能できる状況は同じ、ということになる。11月のコンテンポラリー作品の公演『Créer aujoud’hui』の有料配信はフェイスブックにて、『ラ・バイヤデール』のリハーサルを見せるアドベントカレンダーはツイッターにて、ということで、こうしたソーシャルネットワークを活用していないバレエファンは歯がゆい思いをしたのだが、今回はそんなこともない。このオペラ・シェ・ソワによってオペラ座がこれまでにないほど、大勢と結びつくようになったのだ。

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自宅でパリ・オペラ座を!! オペラ・シェ・ソワでの購入やレンタルには登録が必要。言語はフランス語、英語。https://chezsoi.operadeparis.frwww.operadeparis.frからもアクセスできる。

12月13日にオペラ・バスティーユで観客なしで踊られた『ラ・バイヤデール』の有料ライブ配信を楽しんだ人は多い。ステージで踊るダンサーたちが発するエネルギーをスクリーン越しにも感じ、シルヴィア・サン=マルタン(プルミエール・ダンスーズ)やアクセル・マリアーノ(スジェ)などこれまで実際に踊るのを見る機会がなかったダンサーの発見に、心をときめかせた人も多いことだろう。公演の最後にはポール・マルクのエトワール任命というビッグサプライズもあり、それを報じるメディアによってオペラ・シェ・ソワの知名度もぐんとアップ!

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12月13日、『ラ・バイヤデール』でブロンズアイドルを踊り、ポール・マルクがエトワールに任命された。photo : Svetlana Loboff/Opéra national de Paris

オペラ・シェ・ソワではCatalogueをチェックするとレンタル可能な作品が見つけられる。今後追加されるそうだが、現在、バレエ関連は合計8本。バラエティに富んだセレクションで、日本で公演が行われたことのない作品も含まれている。以下に紹介しよう。料金、期間は作品によって異なるが、多くが30日間有効で1本7.90ユーロだ。古い撮影のものもあり、すでに引退したダンサーが主役だったり、現在活躍しているダンサーたちがコール・ド・バレエで後ろの方で踊っていたり……。過去に作品を見たことのある人にとっては、懐かしさとともに再び感動の時間を過ごす喜びがある。

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『白鳥の湖』Lac des Cygnes(2016年12月)

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https://chezsoi.operadeparis.fr/products/le-lac-des-cygnes-season-16-17
出演:オデット&オディール/アマンディーヌ・アルビッソン、ジークフリード/マチュー・ガニオ 、ロットバルト/フランソワ・アリュほか。

クラシックバレエ・ファンを喜ばせるのは、なんといってもルドルフ・ヌレエフによる古典大作だろう。目下レンタルできるのは『白鳥の湖』と『ドン・キホーテ』というタイプ異なる2作品である。この『白鳥の湖』は2016年の公演で、シリーズ最終日近くに主役を踊ったジェルマン・ルーヴェとレオノール・ボラックの2名がエトワールに任命された。彼らの任命前に撮影されたこの公演日は、スジェだったジェルマン、プルミエール・ダンスーズだったレオノールはパ・ド・トロワを踊っている。

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『ドン・キホーテ』Don Quichotte(2012年12月)

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https://chezsoi.operadeparis.fr/products/don-quichotte-saison-12-13
出演:キトリ/ドロテ・ジルベール、バジリオ/カール・パケット、ドリアードの女王/エロイーズ・ブルドンほか。photo : Julien Benhamou/ Opéra national de Paris

これは2012年の年末公演の録画とかなり古い。このシリーズにおける主役のほかの組み合わせは、マチュー・ガニオ×リュドミラ・パリエロ、アリス・ルナヴァン×フランソワ・アリュ、マチルド・フルステ×アルチュール・ラヴォー、ミュリエル・ジュスペルギー×ヴァンサン・シャイエ。当時の上層部が期待をかけたダンサーたちが配役され、それにマリア・ヤコヴレワ×デニス・チェリェヴィチコがゲストカップルで加わった。この作品はしばらく公演がなく、2012年の次は2017年。カール・パケットの相手役はミリアム・ウルド=ブラームに代わり、ドロテ・ジルベールの相手役には当時スジェだったポール・マルクが抜擢された。

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『マノン』L’Histoire de Manon(2015年5月)

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https://chezsoi.operadeparis.fr/products/l-histoire-de-manon-saison-14-15
出演:マノン/オレリー・デュポン、デ・グリュウ/ロベルト・ボッレ(ゲスト)ほか。

現在の芸術監督オレリー・デュポンが2015年5月18日のアデュー公演の演目に選んだのは、ケネス・マクミランによる『マノン』。2012年の公演ではジョシュア・オファルトをパートナーに踊った彼女だが、この時はロベルト・ボッレがゲストダンサーとして招かれ、オペラ座でのダンサーのキャリアを彼女はゴージャスに終えた。この映像の撮影はオレリーと親しいセドリック・クラピッシュ監督によるもの。アベ・プレヴォーの小説が原作のこの作品はジョン・ノイマイヤーの『椿姫』、ジョン・クランコの『オネーギン』とともに、女性ダンサーが一度は踊ってみたいと願う演劇要素の強いバレエである。

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『マーラー交響曲第三番』Troisième symphonie de Gustav Mahler(2013年4月)

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https://chezsoi.operadeparis.fr/products/la-troisieme-symphonie-de-gustav-mahler
出演:カール・パケット、
イザベル・シアラヴォラ、マチアス・エイマン、ステファン・ビュリオンほか。photo : Sébastien Mathé/ Opéra national de Paris

ジョン・ノイマイヤーが1975年にハンブルク・バレエ団のためにクリエイトし、2009年にパリ・オペラ座のレパートリーに加えられた作品。マーラーの曲を使ったバレエは多数あるが、この作曲家の名に最も強く結びつくコレオグラファーがノイマイヤーだ。オーケストラの生演奏、アルト独唱、合唱……バレエと音楽が渾然一体となった美しいステージを鑑賞できる。

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『アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル』Anne Teresa de Keersmaeker(2015年10月)

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https://chezsoi.operadeparis.fr/products/anne-teresa-de-keersmaeker-saison-15-16

この公演で踊られた3作品は、ベルギーのコレオグラファー、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルによって1995年までの10年間に作られた。音楽との対話による彼女の創作という。『Quatuor n°4』はベラ・バルトーク、『Die grosse Fuge』はベートーベン、『Verklärte Nacht(La Nuit transfigurée)』(写真)はアルノルト・シェーンベルクの曲を使い、音楽のタイトルがバレエの作品名となっているように、音楽が重要な鍵を握る3部構成のプログラムである。最初の2作品は、ミュージシャンがステージ上で演奏。『Quatuor n°4』はセ・ウン・パク、ジュリエット・イレール、シャルロット・ランソン、ローラ・バックマンの4人が、エロスの芽生えを感じさせる思春期の女性を蠱惑的に踊る。それに対し、『Die grosse Fuge』は紅一点のアリス・ルナヴァンと8名の男性ダンサーたちが舞台空間を縦にも横にも活用して踊り、パワフルそのものだ。2018年の公演で活きのいい舞台を見せたのは、ポール・マルク、フランチェスコ・ムーラ、トマ・ドキールたち。いつかそれも見られることを期待しよう。最後の『Verklärte Nacht(La Nuit transfigurée)』は夜の森を舞台に語られる男女の物語。静かでミステリアスに進行する。主演はマリ=アニエス・ジロ、エミリー・コゼット、ステファン・ブリヨン。以下の動画で、3演目の一部が見られるのでレンタルするか迷ったら参考にしてみるといいだろう。

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『ティエレ、シェクター、ペレーズ、パイト』Soirée Thierrée, Shechter, Pérez, Pite(2018年5月)

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https://chezsoi.operadeparis.fr/products/thierree-shechter-perez-pite

4名のコレオグラファーの作品を集めたプログラム。ホフェッシュ・シェクターの作品を除く3作は、この公演のために創作された。ジェームス・ティエレの『Frôlons』はオペラ・ガルニエの公共スペースから始まり、ステージ上で終わる作品。アマンディーヌ・アルビッソンやヴァランティーヌ・コラサントといったエトワールも配役されているが、全員がかぶりもの付きの衣装ゆえ男女の区別すら難しい。シェクターの『The Art of not Looking Back』はオニール八菜を含む女性ダンサー9名がステージ上でパワーを発揮し、それに続くイヴァン・ペレーズの『The Male Dancer』はユーゴ・マルシャン、フランソワ・アリュなど10名の男性ダンサーによる。そして最後はクリスタル・パイトがパリ・オペラ座のために初めて創作したヒット作の『Seasons’ Canon』(写真)。自然界の生き物たちの群れが、ヴィヴァルディの『四季』と戯れるさまが感動的。パリ・オペラ座バレエ団のファンにとって、これは必見作品のひとつである。

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『オペラ座バレエ学校創立300周年』(2013年4月)

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https://chezsoi.operadeparis.fr/products/tricentenaire-de-l-ecole-francaise-de-danse

4作品で構成されたガラで、『D’ores et déjà』(写真)、『ワルプルギスの夜』『ペッシェ・ドゥ・ジュネス』は学校の生徒たちが踊る。『セレブレーション』は350周年を記念してピエール・ラコットによって創作された作品で、衣装は元エトワールのアニエス・ルテスチュが担当した。ラコット特有の複雑で細かいステップがちりばめられた作品を優雅に踊るのは、リュドミラ・パリエロとマチュー・ガニオだ。

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『スカラムーシュの子供たち』Les Enfants de Scaramouche(2014年4月)

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https://chezsoi.operadeparis.fr/products/les-enfants-de-scaramouche

2005年にジョゼ・マルティネーズがバレエ学校の生徒のために創作した『スカラムーシュ』にインスパイアされた映像作品。彼がオペラ座バレエ団のために創作した『天井桟敷の子供たち』のパ・ド・ドゥを踊るイザベル・シアラヴォラとマチュー・ガニオの姿も挿入されている。プチ・ラの夢を描いたこの作品で楽しそうに踊っている生徒たちの中には、6年後のいま、カンパニーで活躍するアンドレア・サーリ(スカラムーシュ役)、オーレリアン・ゲイ、ギヨーム・ディオップ、アレクサンドル・ボカラ、ジョルジオ・フーレスの愛らしい姿がみつけられる。このレンタル料は4.90ユーロ。

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オペラ・シェ・ソワではバレエ作品だけでなく、オペラ作品もレンタルできる。『カルメン』『ラ・トラヴィアータ(椿姫)』『セビリアの理髪師』……。最近では、現代に時代を置き換えた演出も多く、そうした作品ではコンテンポラリーアーティストによる舞台装置も見もののひとつである。オペラ作品は上演時間が長いので劇場で初体験をするのはなかなか勇気を要するものだけど、自宅で見るのならポーズも自由。この機会にオペラ鑑賞デビューするのもいいだろう。さらにコンサートやドキュメンタリーなど、無料で楽しめるコンテンツも。かつてはパリ・オペラ座のサイトにあった「3e Scène(サード・ステージ)」の作品も一部こちらで視聴できるようになった。

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自宅でオペラも鑑賞してみよう。レンタル期間は14日のものが少なくない。左:『リゴレット』photo Charles Duprat/ Opéra national de Paris  右:『セビリアの理髪師』photo Bernard Coutant/ Opéra national de Paris

L'Opéra chez soi
https://chezsoi.operadeparis.fr/

 

大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。
Instagram : @mariko_paris_madamefigarojapon

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