パリから田舎へ イル・ド・フランス5月のマルシェ
パリのマルシェとレシピ。
初夏、ブロカントのシーズンが始まるとソワソワ。やっぱり週末は田舎に行きたい。
ブロカントに行きがてら、パリから車で30分程、かつては王族の狩猟の場として有名だったRambouillet(ランブイエ)の森の南にある Dourdan(ドゥルダン)に行ってきました。
着いた途端に、ああ~素敵! やっぱり城下町ね、と感嘆。お城が有って昔栄えた街、貴族の館があった処は、どこも洗練されていて落ち着いた佇まい。そして、そこには必ず舌の肥えた住人と質の良い地元の産物があるのです。
こんなファサードも贅沢ですね。
街の中心ジェネラル・ドゴール広場まで歩くと、中世風の屋根付き市場とその周りに沢山のスタンドが並んでいます。
田舎のマルシェならでは! とうれしくなったのは、ここには地元の鶏、牛、豚、それぞれのスペシャリストがスタンドを構えていること。残念ながら魚はいまひとつ。
日本への「旅は素晴らしかったわ!」と話す女主人Delphine Meunier(デルフィーヌ・ムニエ―ル)さん。創業1890年、家族代々続けてきて、以前は自分の養鶏場を持っていたけれど、いまは近隣10カ所の放し飼いの養鶏場から気に入ったものを仕入れて、自分で捌いているそう。
さすがは鶏のプロ、パリの肉屋では扱っていないさまざまな部位が揃っています。モツ好きな友人はウハウハ。行列の人が多すぎるので、終盤に行ってみるとほとんど売り切れ。それでも、ウツに良いというDinde(ダンド、七面鳥)のSot l’y laisse(ソリレス、ぼんじり)を買いました。火の通し方やレシピも親切に教えてくれます。
ここから10kmのところにあるBriis-sous-Forges(ブリ・スー・フォルジュ)の自家牧場からの直売。味見させてくれた自家製、子牛の青唐辛子入りパテがとっても美味しかった。毎週のように来るという地元の常連さん達の列に並んでショーケースを見てみると、さしの入った立派な骨付きEntre côte(アントルコ―ト)がパリの半額! これは大行列ができる訳ですね。私たちもこれを厚切りにしてもらいました。
こちらは、豚肉とシャルキュトリ―の専門。バラ色のピカピカした三枚肉を一塊切ってもらいました。自家製のソーセージにもそそられます。
ノルマンディーの弟が作ってるというチーズ屋さんは、プロレスラー悪役のような面構え&実は優しいという個性をお持ちのお兄さま。
ここだけマラケシュの市場のような趣のオリーブ屋さん。
外に出ると大きな教会の横に更にスタンドが広がっています。
もうサクランボが出て来ました。毎年のことながら初物はうれしいもの。
春が旬のプチポワ(えんどう豆)は、そろそろ食べ納め。
Rattes(ラット)という種類の子芋もいまからがおいしい頃です。
私が好きな”フランスの週末風景”食いしん坊な男性が楽しみながらお買い物しているところ。
商店街通りには、ここから20kmのEssonne(エッソンヌ)県D'Huison-Longueville(デュイゾン ロングビル)という村から来ている農家のおじさん。そこはエッソンヌ川から清流を引きこんだCressonnière クレソニエール(クレソン畑)が有名なところで、毎年4月にはクレソン祭りがあるそうな。そろそろ旬も終わりなので、クレソン一束と柔らかそうなホウレン草も一袋買いました。自家製のジャムやはちみつも今度試してみよう。
お向かいには近くのイチゴ農家のものが。
一通りの買い出しが終わって広場のカフェでひと息してから手芸屋さんへ。
(上)後ろにあるのは1220年、Philippe Auguste(フィリップ・オーギュスト)によって造られたというChâteau de Dourdan(ドゥルダン城)。ここいちばんの観光名所には目もくれず、
ひたすらボタン選びに夢中。(下)久々に大はしゃぎ。もうすべて買い占めたいくらい可愛いのです!
ブロカントに出発する前に教会に入ってみると……
なんと美しい荘厳なゴシックスタイル。Eglise Saint-German L'Auxerrois(エグリーズ サン ジェルマン ロクセロワ)は12世紀に完成してから、戦火や革命で何度も破壊され、そのたびに熱い信仰心を持って復活を遂げてきたというから、パリのノートルダムもがんばってね!と心から願います。
会うたびに、「まったくあなたも酷い目に遭っちゃったわよね」と話しかける、フランスの至る所にいるジャンヌ・ダルクさん。
聖アントワンヌさんも切なく美しく。
暫し見入ってしまったこの美!!
今日ご紹介するのは、”やっぱりフランス内陸は、お肉ですね”ということで、ランチにも作り置きにも美味しいお豚さまです。
■『豚のロティoh!Miso』
Rôti de porc au Miso
―材料 4人分
豚三枚肉 800g~1kg
*マリネ液*
*味噌 大さじ2
*酒 大さじ2
*ハチミツ 大さじ1
ニンニク 1片
子芋 300g
新玉ネギ 1束(10個くらい)
油 大さじ1~2
塩・胡椒 少々
タイム 少々
―作り方
1. ビニール袋にマリネ液の材料と肉を入れ、よく揉み込んでから冷蔵庫に入れ一晩置く。
2. ココット鍋に薄く油をしき強火に。煙が出てきたら弱火にし、マリネ液をよく落とした肉を焼く(マリネ液は取っておく)。焦げ付かないように注意しながら油を少し加えて軽く色つくように返しながら4面を焼く。横に皮付きの子芋、新玉ネギ、潰したニンニク、タイムと塩少々を振り入れ、蓋をして30~40分蒸し焼きにする。その間に時々返してまんべんなく火を通す。中心あたりにナイフを刺して、透明な肉汁が上がってきたら焼き上がり。
3. 皿に肉と野菜を並べ、鍋の焼き汁の中にマリネ液大さじ2と水を大さじ2加えて煮詰める。トロッとしてきたら火を止めて肉の上に塗り、胡椒を挽いて振りかける。
肉にしっかりと味噌の味が付いているので、冷めても美味しい。最近はフランスでも話題の味噌ですが、材料をまとめ買いしたときに、取りあえずマリネしておけば日持ちもするので重宝しています。
マルシェで買ったお肉は、どれも本当においしかった。これを目当てに、また通いたいマルシェが増えてしまいました。今度はゆっくり街を散歩してみたい。
パリ近郊にも、まだまだ知らない素敵な所があるものです。
■Marché Dourdan マルシェ・ドゥルダン
Place du Général de Gaulle, 91410 Dourdan France
営)水・土曜 8~12時
アクセス:パリAusterlitz駅からRER・C線でDourdan駅下車
料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業 適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理 教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。2016年春、ベジタリアン向けの料理本『LA CUISINE VEGETARIENNE』をフランス全土と海外県、ベルギー、スイス、イギリスなどのヨーロッパ各地で発売。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
Instagram : @haradasachiyo