【パリのインテリア】見た目も機能性も◎ パリジェンヌのキッチン実例集。

Interiors 2025.06.13

自分の感性をもとに、知恵と工夫を凝らして日常を楽しく過ごす、フランス流の暮らしの美学「アールドゥヴィーヴル」(Art de Vivre)は、パリジェンヌの住まいのあちこちに息づいている。生活の基盤となるキッチンは、普段使いするものも飾るように置いて、自分らしさと実用性が共存するのがポイントだ。幸せあふれる食空間から、人生を豊かにするヒントを探してみよう。


自身のルーツに繋がる多国籍な感性をキッチンの随所に。
ジュマナ・ジャコブ(料理家)

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プライベートシェフやケータリングを中心に活動する料理家ジュマナにとって、キッチンはワークスペースでもあり、とりわけ神聖なスペース。photography: Mari Shimura

出身地のレバノンや地中海料理にインスパイアされた多国籍な料理を得意とするジュマナ。オスマン建築のアパルトマンである自宅のキッチンも同様に、ヨーロッパやアフリカ、アジアから集めてきた調理器具や器、雑貨を配して、心地よい空間をつくりあげている。料理家だけに、広い作業台やたっぷりの収納スペースに目を奪われるものの、すべてを隠すのではなく、鍋やティーポットは棚にディスプレイ。壁面にはマグネットスタンドを設置し、包丁などの調理道具ホルダーにしているが、これも見せる収納テクニックのひとつ。使いたい時にさっと取れるよう、実用的な工夫を凝らしているのがジュマナ流だ。

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棚の下段には、自家製キムチや調味料がずらり。調理料は、袋からガラス瓶に入れ替えて保存するのがパリジェンヌのキッチンルール。器は料理を引き立たせるように、コバルトや白、茶系などシックな配色のものが主流。

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木の温もりが心地よい台所に、新旧のキッチンアイテムを調和させる。
クレマンティーヌ・ラルーメ(クリエイティブスタジオ「サンラザール」共同創始者)

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木目の味わいが趣を感じさせるキッチンに、道端で見つけた果物と花の静物画がなじむ。マリオン・グローとコラボしたグリーンの水差しや、蚤の市で入手したガラスのカラフとともに。photography: Julie Ansiau

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10代の娘が作ったカラフルな器は、ゲストが来た時のアペロで活躍。

著名な建築家であるウージェーヌ・ヴィオレ=ル=デュックによる19世紀のアパルトマンに、家族とともに暮らすクレマンティーヌ。サンラザールで手掛けてきた空間デザイン同様に、住居にも出自の異なるオブジェを調和させて、物語のあるパーソナルなスペースを生み出している。その世界観はキッチンでも健在だ。古いものと現代デザインが同居するキッチンに並ぶのは、掘り出し物の食器、デザイナーもののコーヒーカップ、娘が制作した色とりどりの陶器など、思い入れのあるものばかり。クレマンティーヌの審美眼のもと集められた食雑貨が仲良くまとまり、温かなダイニングシーンを彩っている。

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自然の素材感を随所に配して、統一感を出す。キッチン脇に置かれたシンプルなビストロテーブルは、閉店したレストランが放出したもの。木製ボックスは、サンラザールの製品で、踏み台やスツールとして使える。

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実用性と美が宿る、旅の思い出の品々をディスプレイ。
ステファニー・コーエン(「デモデ」アーティスティックディレクター)

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キッチンのコーナーに、ウッドプレートとスパイスなどの調味料を飾るようにセッティング。調味料は中身が見えるようにガラス瓶で保存。あえて不揃いな入れ物にすることで空間にリズミカルな動きを加えている。photography: Shiro Muramatsu

インテリアデザイナーのステファニーは、パリでは珍しい一軒家に住まう。家族旅行や仕事で訪れた先で手に入れた、さまざまな国の思い出の雑貨が家中に飾られるが、セレクトの基準は「その土地の人たちが愛用してきたものならではの、実用性と美が宿っている」ものであること。キッチンには世界中から集めたウッドプレートやスパイスがひしめき、器はナチュラルな素材のもので揃えるが、まるで南仏で暮らしているかのような素朴な温もりがそこにはある。タイムレスでスタイルに囚われない心地良い空間は、彼女がディレクターを務める「デモデ」の世界観そのものだ。

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ノスタルジーが交錯する、色あふれる空間。
カミーユ・ウィット(イラストレーター)

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黄色い収納家具、水色とグレーの床のタイル、色見本のポスターを配したキッチン。ハーブの植木鉢を常備し、レシピ本を参考にして腕をふるう。photography: Mana Kikuta

パリの風景や日常をシックなパステルカラーで生き生きと描くカミーユが暮らす、モンマルトルのアパルトマンは、彼女の水彩画と同様、やさしい色であふれている。小さいけれど機能的なキッチンでは、母方の祖母から譲り受けたという黄色い収納家具が主役だ。中には父からの祖母が毎年クリスマスに1本ずつ贈ってくれる、銀のカトラリーを収納しており、友人をもてなす時には、モダンな食器と合わせてコーディネートする。「私の作る料理もカラフル。グリーンの皿に真っ赤なビーツとモッツァレラを盛りつけたり、組み合わせを考えるのも楽しくて」と語るカミーユの暮らしは、どんなシーンも色とともにある。

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カミーユが生まれた時から1本ずつ、クリストフのシルバーのカトラリーが父方の祖母から贈られている。家族との思い出がつまった品に囲まれて暮らすのも、生粋のパリジェンヌならでは。

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アフリカとヴィンテージのミックスに、赤のスパイスを加えて。
オンディーヌ・サグリオ(「CSAO」アーティスティックディレクター)

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白いキッチンに置かれた赤いテーブルと椅子は、ヴィッド・グルニエと呼ばれるガレージセールで見つけたという。テーブルは15ユーロ、椅子は4脚9ユーロで入手した掘り出し物だ。壁には大好きなヴェネチアングラスの鏡を飾って。photography: Mariko Omura

マレ地区にあるCSAO(サオ)は、セネガルの女性たちが刺繍職人として生活できるよう支援するフェアトレードブランドだ。布選びから刺繍のアイデアなどを担当するオンディーヌは、とにかく色が大好き。アフリカの色鮮やかなアイテムの中でも、主に赤とグリーンの雑貨を自宅用に選ぶ。そこにヴィンテージの家具をミックスさせることで、居心地のよい陽気な雰囲気を形作っている。キッチンは、スプーン1本に至るまで雑貨を赤でコーディネートするこだわりよう。料理が苦手で台所で過ごす時間はほとんどないという彼女だが、ここで家族と過ごす食事の時間は、笑顔あふれるものになっているはず。

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赤でまとめられたキッチン回りの雑貨とアート。キャニスターは、同種類のものを複数並べることで、統一感ある空間に。photography: Mariko Omura

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サオのブティックでも扱っているハンドペイントされたお皿や、セネガルの伝統的な技法で編まれたカバーをかけた瓶やカラフを愛用する。photography: Mariko Omura

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味わいのある古道具やオブジェを、レトロな台所に飾る。
ヴィクトワール・ムヌール(フォトグラファー)

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おばあちゃんの家のようにレトロかわいいキッチン。白の空間に市松模様の床のタイルがよく映える。photography: Shiro Muramatsu

幼い頃から雑貨やアンティークに囲まれて育ったというヴィクトワールは、「時を経て変化していくものに、ポエティックな美しさを感じる」という審美眼の持ち主。だから、キッチンにも味わいのある古い道具やオブジェを集める。蚤の市で出合ったそれらは、時を経たものだけが纏う雰囲気をたたえており、そこに存在するだけで心を和ませてくれる。

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ウォールシェルフに飾った古いキッチン道具は、出合った時にひとめぼれ。棚全体がひとつのアート作品であるかのよう。

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ノルマンディの蚤の市で見つけた木のオブジェは、カフェの看板に使われていたもの。壁に飾られた叔父のイラスト作品とともに、味わい深い存在感を放つ。

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シンク周りを彩る、使い込んだ道具とヴィンテージ雑貨。
ゾエ・ドゥ・ラス・カーズ(インテリアデコレーター)

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キッチンのシンク周りでは、それぞれ形が異なるまな板が真っ先に目に飛び込んでくる。木のいびつな趣が愛らしい。photography: Panda Yoshida

アールドゥヴィーヴルの暮らしを体現するインテリアデコレーターのゾエ。古きものと現代的な感覚のスタイルミックスを提案する彼女のノルマンディの別荘には、使い込まれた道具が随所にちりばめられている。やさしい光が差し込むキッチンには、木のカットボードやお揃いのグラス製品と一緒に、ヴィンテージの水筒、額、雑貨をディスプレイ。物でいっぱいなのにすっきり見せているのは、置き方に規則性をもたせているから。日常的に使うものはシンプルに統一しつつ、水筒や雑貨の多様な色や形でアクセントを作り出している。

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庭を眺める、玄関正面のキッチン。季節の花、かごバッグ、ストライプのエプロンなど、置かれてあるもののひとつひとつに美が宿る。

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キッチンで使われている「zangra」の照明。日が落ちると、カットが施された裸電球からニュアンスのある温かな光が点される。

*この記事は、madame FIGARO.jpの2018年8月~2024年10月の記事を再編集し、制作したものです。

editing: ERI ARIMOTO

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