古いラジオがヴィンテージ感を漂わせる、4ツ星のホテル・プレイ。
PARIS DECO
地下のセミナールーム&スタジオ。ホテル名のPleyとPlayをかけた遊びを掲げている。photo : Nicolas Anetson
昔のラジオ、レコードプレイヤー、レコードジャケット……ホテル内の随所にレトロ感を演出。photos : Nicolas Anetson
いまの時代に珍しく、創業者家族が持ち主というホテルの「Pley(プレイ)」。跡を継いだ3代目が大々的な改装拡張工事を行い、昨年秋にリニューアルオープンを果たした。客室は100室に増え、この際にホテルの名もホテル・エトワール・サン・トノーレから、プレイに変わった。この名前、すぐ近くのコンサートホール「Salle Pleyel(サル・プレイエル)」にちなんだそうだ。ピアノ製造会社のプレイエルがクラシック音楽の演奏会場として1893年に開いたホールである。ホテルでも1階のパブリックスペースに、1903年製造のプレイエル社のグランドピアノを設置。これは創業者が所有していたものだという。
サントノーレ通りに面したガラスの大扉が、ホテルの入り口。お向かいは板チョコでおなじみBonnatのブティックだ。photo : Nicolas Anetson
左 : プレイエルのピアノ。 右 : 1階のバーカウンター。
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1階、フロントの奥に広がるスペースは、大きなガラス張りのホテルの扉からの光が届くように遮るものなくひと続きのスペースとしてデザインされた。ホテルは3つの建物で構成され、どの建物もここに直結しているので、ゲストたちにとってミーティングポイントの役も果たすスペースである。明るくゆったりとした空間。朝食、ティータイム、カクテル……宿泊者も宿泊者以外もここで寛ぎの時間を過ごせる。
1階のレストランスペース。左の白い壁にはポップな装飾が。photo : Nicolas Anetson
食事にカクテルに、と一日の間さまざまに活用できる1階。地下にはエステサロン、フィットネスルームを備えている。photos : The Travel Buds
フランスにおけるラジオ局誕生の地である8区に所在するホテルであることから、ホテルのインテリアは懐かしきラジオの時代をインスピレーション源に選んだ。ホテルに入ってすぐの左手の壁、1901年に初めてラジオで発声された「One, two, three, four. Is it snowing where you are?」というフレーズが掲げられている。現代アーティストのジュリアン・ネデレックによる作品だ。ホテル内、蚤の市やブロカントなどで掘り出した古いラジオ、フランスのFMラジオ局のアーカイブからの広告ポスターなどが飾られ……と、ラジオにオマージュ。地下の会議場がポッドキャストに必要な機能を備えていたり、また録音スタジオに変身したりと、ラジオのインスピレーションを現代のニーズに対応させている。
フロントの向かい側の壁に注目を。photo : Mariko Omura
ラジオを意識して作り上げられたホテル内の散歩が楽しい。photos : Mariko Omura
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内装を担当したのは室内建築家のファビアン・ロックだ。彼は温かみを求めてブルーを1階のパブリックスペースに配すいっぽう、客室は快適さと静けさが感じられるようにとインテリアは落ち着いた色調で、極めてシンプルにまとめあげた。もちろん、ベッドサイドにはラジオが。バスルームは白を基調に清潔で機能的な造り。アメニティはTerre de Marsというフランス製ヴィーガンプロダクトである。100の客室は5つのカテゴリに分かれていて、スイートルームのひとつからはルーフトップにダイレクトなアクセスがあり、一部をプライベートに利用できるという特権も。
ホテルがあるのはシャンゼリゼ大通りに近い、パリ西部。エッフェル塔が窓の外に眺められる部屋もある。photo : Nicolas Anetson
左 : 客室例。室料は180ユーロ〜。photo : Mariko Omura 右 : 部屋のカテゴリーが異なれど、バスルームはどこも白でまとめられている。photo : Nicolas Anetson
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ルーフトップといったら、数年前からパリっ子たちのアペリティフタイムには欠かせない存在である。ルーフトップのバーはホテル宿泊客以外にも開かれているので、エッフェル塔を含めパリ西部の眺めを楽しみながら一杯!という楽しみ方ができる。昨年のリニューアルオープン時も、大人気だった。年内にはレストランもオープンする。いまの時代に珍しく、肉が売りもの。ロレーヌ地方で牛を飼育し、パリのボーパッサージュにも店をもつ肉屋Polmardがパートナーだそうだ。
食についていえば、ホテルに隣接するストリート・シーフードでおなじみ「Mersea(メールシー)」の存在も忘れてはならない。ホテルのルームサービスも担当しているので、「Le PLEY Mersea(ル・プレイ・メールシー)」と命名されている。シャンゼリゼ大通りから、そう遠くない場所である。飲食に利用できる場所としてもプレイ・ホテルを覚えておくのもいいだろう。
左 : アペリティフ・タイムはルーフトップでパリの美しい日没を眺めながら。photo : The Travel Buds 右 : ル・プレイ・メールシー。photo : PLEY Mersea
大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。
Instagram : @mariko_paris_madamefigarojapon
réalisation : MARIKO OMURA