ケニアのスラムに暮らすアーティストたちが「語る主体」となって表現する展覧会。

Society & Business

ニュースや映像の中で目にする「スラム」の映像は、誰が撮ったものだろう。そこに暮らす人たちが自分たちの日常をカメラで切り取った作品を、私たちはこれまでどれだけ見てきただろう。東京・八重洲のアートセンターBUGで、5月31日まで開催中の展覧会『キベラ”スラム”から見つめる世界 語られてきた私から、語る私へ。』は、そんな問いを静かに投げかけてくる。

会場の展示風景。撮影:政近遼

ケニア・ナイロビに広がる巨大スラム、キベラ。これまでこの場所は、海外のメディアやアーティストによって「貧困の象徴」として撮られ続けてきた。事件や暴動が起きたときだけカメラが向けられ、その断片が世界へと流れていく。その中で、そこに生きる人々の日常は、ずっと見えないままにされてきた。

この展覧会は、そのまなざしをくるりと反転させる試みだ。キベラに暮らす12人のアーティスト自身が、自らのコミュニティを自らの視点で撮り直した、100点を超える写真と映像作品が並ぶ。

32名の応募から書類選考と対面オーディションを経て選ばれた12人それぞれの目を通すと、「スラム」という言葉では到底とらえきれない、人々の営みや感情 、質感が浮かびあがってくる。

本店を企画したのは、SHIFT80を立ち上げた坂田ミギー。

SHIFT80の代表理事/クリエティブディレクターの坂田ミギー。

フィガロジャポン「Business with Attitude」ピッチコンテスト2022のProfessional Award受賞者でもある彼女は、キベラに通い始めて13年。現地の仲間と少しずつ積み上げてきたものが、今回ようやく東京で一つの展示として形になった。

会場には、キベラから持ち帰った日用品で構成された「キベラの小屋」も設置されている。一袋約12円の日用品や、再利用された道具たちが並ぶその空間は、生活の知恵とたくましさを、言葉よりずっと雄弁に伝えてくれる。ちょっと立ち止まって、じっくり眺めてみてほしいコーナーだ。

「キベラの小屋」にはさまざまな日用品が展示されるほか、映像作品の上映も。撮影:政近遼
キベラに暮らす人々によって撮影された、日常の瞬間をとらえた写真の数々。来場者が1枚持ち帰ることで、その写真は自身の生活とキベラをつなぐ“窓”となってくれるはずだ。撮影:政近遼

さらに、来場者がキベラの若者へ質問や感想を送ることができる「語りの往復」プロジェクトも実施。後日、彼ら・彼女らからの返信がInstagram(@shift80official)で届く仕組みで、「見る側」と「見られる側」という一方通行の関係を、少しずつ解いていく試みだ。

入場は無料。JR東京駅八重洲南口直結なので、仕事帰りにもふらりと立ち寄れる。誰かの日常を、その人自身の目線で見てみる。そんな時間が、自分の中の何かを動かしてくれるかもしれない。

キベラ”スラム”から見つめる世界 語られてきた私から、語る私へ。

会期:開催中~2026年5月31日(日)
アートセンターBUG
東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー1F
開)11:00~19:00
休)火
※イベント開催のため、5/23(土)5/30(土)は18時に閉館します。
入場無料
https://bug.art/exhibition/crawl-sakata

  • edit: KOTOMI NARIMATSU