「ウーマン・イン・モーション」アワードはジュリアン・ムーアに! ディナーをレポート。
文・立田敦子
第79回カンヌ国際映画祭が最も盛り上がる週末、5月17日(日)、ケリングとカンヌ国際映画祭による恒例イベント「ウーマン・イン・モーション」のディナー&アワードが開催された。2015年にスタートしたこのプログラムは、映画界や文化芸術分野で活躍する女性たちに光を当て、その創造性や功績を称え、サポートすることを目的としている。レッドカーペットの華やかさとは別に、映画業界における女性たちの声を可視化する場として、いまやカンヌに欠かせないイベントとなった。

今年の「ウーマン・イン・モーション」アワードを受賞したのは、俳優として40年以上にわたり第一線で活躍を続ける米国出身の俳優ジュリアン・ムーア。朋友トッド・ヘインズ監督の『エデンより彼方に』(2002年)ではヴェネチア国際映画祭女優賞、スティーヴン・ダルドリー監督の『めぐりあう時間たち』(03年)でベルリン国際映画祭女優賞、デヴィッド・クローネンバーグの『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(14年)でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞。また、若年性アルツハイマーに侵された大学教授を演じた『アリスのままで』(14年)でアカデミー賞主演女優賞を受賞するなど、常に女性たちの複雑な感情や人生を体現してきた俳優でもある。
また、新たな才能を支援するエマージング・タレント・アワードは、イタリアの若手映画作家のマルゲリータ・スパンピナートに授与された。同賞は、次世代の女性映画人を支援するために設立されたもので、歴代受賞者には後に世界的に飛躍した監督たちも名を連ねている。
力強い賛辞となったジュリアン・ムーアのスピーチ。
ディナー冒頭、ケリング取締役会会長のフランソワ=アンリ・ピノーはウーマン・イン・モーションが単なる賞ではなく、映画産業の未来を考えるためのプラットフォームであり、女性たちの創造性や視点は映画文化をより豊かなものにするためのものであることを強調。長年にわたり映画界におけるジェンダー平等を支援してきたケリングの姿勢をあらためて示した。
共同ホストを務めるカンヌ映画祭のプレジデント、イリス・ノブロックと映画祭総代表のティエリー・フレモーもムーアのキャリアを称えた。フレモーは、ムーアについて「現代映画を代表する最も重要な俳優のひとり」と、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンという世界三大映画祭すべてで演技賞を受賞した数少ない存在であることに触れながら、そのキャリアを紹介。会場では、その女優人生を振り返るビデオクリップが流された。
満場の拍手で迎えられ、壇上に立ったムーアのスピーチは、単なる受賞の喜びを語ることにとどまらず、女性の視点そのものへの力強い賛辞となった。「特にアメリカには、女性の物語はより小さいもの、それほどおもしろくないものだという文化的な思い込みがあります」と語った。さらに「もし女性が物語の中心にいるなら強くなければならない。あるいは男性的な何かをしていなければ観客に見てもらえないと思われている」と続け、そうした価値観に対して真っ向から異議を唱える。「私は女性たちが本当に大好きなんです。彼女たちに自分を重ねることが好きなのです」。会場が笑いと拍手に包まれる中、さらに「日々の生活の中でも、私はいつも女性たちを探している」と続けた。その言葉は、女性たちが互いの存在を支えにしながら生きてきた歴史そのものを思わせるものだった。また「男女を二分して語りたいわけではない」と前置きしたうえで、「女性の視点が重要であり、それが物語において決定的に大切なのだと祝福したい」と語った。最後には「もっと多くの女性の声、女性脚本家、女性監督、女性俳優が必要です」と呼びかけ、会場から大きなスタンディングオベーションを受けた。

エマージング・タレント・アワードを受賞したスパンピナートは、自身の作品が家族の記憶や個人的経験から生まれていることを明かし、「若い女性映画作家たちには、自分の視点を疑わずにいてほしい」とコメント。この賞が新しい世代の女性映画人たちにとって大きな後押しになることへの感謝を述べた。
南仏らしいディナーと、映画人の活気あふれる交流。
ディナーでは、地中海産スズキとマントン産レモンを詰めたズッキーニの花、地鶏とグリーンアスパラガス、モリーユ茸を合わせたメイン料理など、南仏らしい季節感を活かしたコースが、芳醇なワイン、シャトー・ラトゥールとともに振る舞われた。

多彩なセレブリティが世界中から来場。
映画祭の喧騒の中で、夕暮れのカンヌを見下ろす会場には審査員長のパク・チャヌクをはじめ、クロエ・ジャオ、デミ・ムーアやステラン・スカルスガルド、ルース・ネガら審査員団、イザベル・ユペールやラミ・マレック、シャルロット・ルボン、ヴィッキー・クリーブス、オデッサ・アザイオン、ハン・ソヒ、ユナ、ピエール・ニネイ、ハリス・ディキンソン、日本からは岡本多緒、是枝裕和、本木雅弘、内田也哉子らが出席。俳優、監督など、世界各国のから集った映画人はテーブルごとに活発な会話が交わされた。ディナーが進むにつれて人々がテーブルを移動しながら交流する場面も多く見られ、会場は遅い時間まで活気に包まれていた。





- text: Atsuko Tatsuta
- editing: Momoko Suzuki