【ネタバレあり】小栗旬、広瀬すず、林遣都、UTAが語る、Netflixシリーズ「ガス人間」が描く現代の闇とは?
映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』、Netflixシリーズ「地獄が呼んでいる」「寄生獣 -ザ・グレイ-」など次々と世界的な話題作を生み出すヨン・サンホがエグゼクティブプロデューサーと脚本を担当し、配信シリーズ「ガンニバル」など野心作を次々と手がける片山慎三が監督したNetflixシリーズ「ガス人間」。配信開始から話題を呼び続ける本作に参加した俳優、小栗旬、広瀬すず、林遣都、UTAに取り組みと見どころを聞いた。

>>前編:「日常に起こり得るカオス」Netflixシリーズ「ガス人間」出演俳優4人が語る、片山慎三監督の演出とは?
「思わぬ事件」に巻き込まれてしまった人々
――世界的な傾向として、弱者切り捨ての政治への批判も見え隠れします。
小栗 最初にこの企画のベースにあったのはオリンピックで、そこに絡むある出来事を隠蔽するという設定で、そこから改稿を重ねていまのバージョンになったんです。オリンピック開催のために何か隠蔽したいことがあるという設定は観客にとってすごくわかりやすい。都合の悪いことを隠蔽するために動く大人たちがいるというのもわかりやすい。だから、政治の出来事とも直結して描きやすかったと思うんです。

でも、企画を練る段階で「あまりにもわかりやすい構造の利権を描くことより、むしろ、どこまでがすごくて、どこまでがすごくないのかがわからないくらいの平和を守ろうとした人たちの話にした方がいいのではないか? 逆説的に言うと、ある利権を守ろうとした人たちのみみっちさが少しだけ見える程度の話にした方が多くの人たちにとって地続きの世界観になるのではないか」と、いまのバージョンになったんです。

――UTAさんはタイトルロールにあるガス人間を演じています。物語もかなり後半になって、彼がなぜ、ガス人間になってしまったのかが明かされますが、こういう人間離れしたパワーを得てしまった人間を演じる上で大切にしたことは?
UTA 僕はこれまで生きてきた中で、レンという青年がガス人間になるにいたるまでのような経験は一度もしてきませんでした。彼には守るべき存在がいて、その人との絆を大事にしようと思って生きていた。自分が経験した残酷さや恐怖をその人には絶対に感じさせたくないという気持ちが強い。その切実な姿勢を、演じるにあたって大事にしました。
もうひとつ参考にしたのがNetflixドキュメンタリーシリーズ「私は生き延びた: 韓国を揺るがせた悲劇の中で」(2025年配信)です。朴正煕政権時代から1980年代の軍事独裁期に、都市の美化や社会浄化の名目で人々を強制収容した施設があり、孤児や子ども、浮浪者などを強制的に収容して、強制労働をさせ、数千から数万人規模の暴力、性被害、行方不明などの被害者が出た人権侵害事件についてのドキュメンタリーなのですが、その映像や、そこで実際に暮らしていた人のインタビューを読み、本当に卑怯な世界だなと強く感じました。
ガス人間が命をかけて絶対に守りたいと思った存在と、その考え方を、僕はガス人間の過去に込めて演じました。
――広瀬すずさんと林遣都さん演じる兄妹は中盤から登場し、動画配信者としてガス人間の事件を追います。物語をいい意味でかく乱させる存在ですが、この作品における役割をどう感じましたか?

林遣都(以下、林) 僕と広瀬さんは動画配信者の兄妹を演じています。劇中、このふたりの背景はそこまで明かされているわけじゃないんですけど、ほぼふたりだけで生きてきた。僕はその関係性を大切にしながら演じていました。
UTA君が演じたガス人間と同じく、境遇は違うものの、巻き込まれなくてもいい出来事に巻き込まれてしまう人々としての共通点があるかと思います。作品で任されている部分としては、現代のこのネット社会で動画配信をしていると、軽はずみな言動で思わぬ事件が起きたり、誰かを傷つけてしまう出来事を起こしてしまう。そういった感受性の負の部分の役割をこの兄と妹に任されているんだろうなと解釈していました。
――広瀬さんの演じる華歩には生まれつきのあざがあり、それに悩んでいます。ラストまで観ると、彼女がありのままの自身を受け入れるまでの成長記にもなっていますね。
林 僕の台詞で、「お前は自分が思っているよりきれいだよ」という内容のものがあるのですが、そこも本当にその台詞でいいのか、観ている人に意図が伝わるのか、ギリギリまで片山監督は悩まれていましたね。

広瀬すず(以下、広瀬) 私が演じた華歩は社会を知らない。同時に、配信者としての結果もまだない。だからSNSで発信する上で、何かひと言、なにかひとつ発信を間違えてしまえば、自分たちのことが全世界に知られてしまうという危うさも感じていない。リスクの一歩手前の際にいる設定が、私にとってはとても自由な役だなと思って、それも含めて演じたいなと思いました。
あざに関しては、当初は髪の毛で隠れるくらいのサイズだったのですが、準備の段階で顔半分にするということになりました。撮影当日、華歩としてロケ地に行くまでの道を歩いていると、本当にいろんな人に顔を見られたんです。その目線を受けて、あざがない人にはわからない心境があるなと思いましたし、お兄ちゃん(林)の「自分が思っているよりもきれいだ」という台詞も、言われた時に優しさや愛情はもちろん、シンプルにお兄ちゃんの言う美しさとは何かがわかり、素直に受け入れられた言葉だったと思います。
キャラクターを際立たせる、柘植伊佐夫の衣装
――キャラクター造形として柘植伊佐夫さんが入られていますが、皆さんの役どころの見せ方についてお聞きできますか?
小栗 自分の父親(青木崇高が演じる岡本信也)と同じような格好を賢治が踏襲していて、お互いにサスペンダーを着けてるんです。最初、柘植さんも含めた賢治の衣装合わせで用意されたものを見たとき、少しレトロというか、オリジナル版の世界観にやや持っていき過ぎているんじゃないかな、刑事という職業としても、見た目としてかっこよく見え過ぎじゃないかと感じて、これってどうなんだろうと思っていたんですけど、その後、青木君の撮影を見に行った時に同じような格好をしているのを見て「ああ、この父親の息子なのか」と感じられて、逆にすごくうれしくなりました。
UTA 僕は柘植さんを小さい頃からよく知っていたので、仕事でお会いすることにちょっとしたご縁を感じるというか、不思議な感覚になりました。ガス人間の衣装を決める時も、シェードの入った青だったり、できるだけ無機質で不気味な感じが出るような衣裳を、といろいろ見ていったのですが、最終的に決まったのが、ガスの色に近いグレー寄りのサックスブルーのあの形のスーツでした。出来上がった作品ではそれがすごく綺麗に映っていると感じました。
広瀬 2回目の衣装合わせに行った時、何を着ても普通で、当時の私の地毛に合わせて試してくださったんですけど、何かが違うな、でも、求められているものをどう言葉にするのかわからなくて。「だったら兄も妹もロン毛にしようか」と。それでトリッキーさが一気に増して、インパクトが増した感じがおもしろいなと思いました。
林 僕は柘植さんと前回組んだのも、NHKドラマ「精霊の守り人」でロン毛だったんですけど、今回も身近な人たちから富士太のビジュアルを見て、「珍しいね」と言ってもらえて、毎回、自分の可能性を広げてくださっているのでうれしいです。
覚醒を呼ぶ曲、「リクエストを、どうぞ」。
――配信が始まっているのでお聞きしますが、劇中サザンオールスターズの「いとしのエリー」のメロディがとても重要になってきます。自分を覚醒させる曲があれば、ぜひ教えてください。

UTA ガス人間を演じた僕としたら真っ先に挙げなくてはいけないのが「いとしのエリー」ですけど、個人的にはレディオヘッドの「Creep」(1992年、デビューシングルリリース)。曲調が「いとしのエリー」に似ていますし、ちょっと異様な雰囲気の曲で。サビが「I’m a creep, I’m a weirdo / What the hell am I doing here? / I don’t belong here(僕は嫌なやつ、変なやつだ。ここで何をしているんだ? 僕の居場所じゃない)というもので、歌詞でトム・ヨークが言っていることも、「ガス人間」の内容にちょっと当てはまるものがあるんじゃないかと思います。

広瀬 私は普段あまり音楽を聴かなくて……。その中でもよく聴くのがRADWIMPSで、声も音も大好きなんですけど、どちらかというと聴くというより、ずっと流していて。落ち着くための曲として聴いています。

小栗 確かにね、落ち着くための曲ってあるよね。僕はFAT BOY SLIMの「Satisfaction Skank」。僕がガス人間だったら、劇中、これが流れたら覚醒する。自分にとっても、ガソリン源となる曲です。

林 僕はドラえもんの主題歌の「夢をかなえてドラえもん」。この前、自分の子どもが初めて僕のために歌ってくれて……。
広瀬 やめて、泣いちゃう(笑)。
林 いや、泣きました(笑)。多分、自分がガス人間になって、自我がなくなったり、記憶がなくなったとしても、この曲を聞いたら、何かに突き動かされて一瞬でも昔の自分に戻るじゃないかなって想像しました。
一同 いい話! 最後に林さんに全部持っていかれました(笑)。
Netflixシリーズ「ガス人間」
2026年7月2日(木)より世界独占配信中
- photography: Seiji Tonomura
- text: Yuka Kimbara
- styling: Shinichi Mita(KiKi inc., Oguri), Yoko Kageyama(eight peace, Hirose), Yonosuke Kikuchi(Hayashi), Rena Semba(UTA)
- hair&make: Kentaro Shibuya(SUNVALLEY, Oguri), Aiko Tokashiki(Hirose), Tazuru Takei(&'s management, Hayahi) hair: Jun Goto(Republish-ota office, UTA) makeup: Hiroko Uejima(UTA)