フランス史上最悪の森林火災はなぜ起きた? 熱波と干ばつが示す気候変動の危機。
熱波、乾燥、森林火災。
今年の夏が残したものとは?
今年の夏は厳しかった。熱波の到来は8月半ばの時点で5回を数えた。パリでも6月27日以来雨らしい雨がなく、全国で地下水面の減少が深刻化している。農作物への影響はもちろん、水不足でカラカラに乾いた森林の大規模な火災が続いた。欧州森林火災情報システム(EFFIS)によると、今年8月の時点でフランスで起きた30ha以上の規模の森林火災はすでに356件。96364haが焼失し、史上最悪といわれた2022年の記録をあっさり抜いてしまった。熱波、乾燥、森林火災は目下最大の問題。気候変動の顕著な影響が、この夏一気に具体的な形をとったというわけだ。


最大の森林火災はフランス南西部ランド地方で起きた。10日間近く燃え続け、22万人が避難し42000haを灰にした火災は、ボルドーから50kmの場所で発生し、ヴァカンス客が集まるアルカッションを飲み込み、カップ・フェレ岬を寸断してボルドー市街に迫った。まるでマッチ棒のようにパチパチと音を立てて木々が燃え上がる映像は恐怖そのもので、空高く立ち上った煙が電気を帯びた雲を形成して落雷を呼ぶメガファイアとなった。火がこれほどまでに早く広がったのは、もちろん熱波と乾燥という気象条件のせいなのだが、火災が起きた一帯の森林は、欧州最大のマツの人工林。規則正しく密接して植えられたマツは可燃性の樹脂を含んで燃えやすく、マツボックリが弾けて乾燥した下草に火が広がり、燃焼が一気に進んだといわれる。

一方、普段森林火災とは縁のないパリジャンが胸を痛めたのは、7月12日に起きたフォンテーヌブローの森の火事だった。2日間にわたった火災で、森の1割にあたる2000haあまりが消失した。鹿やキツネをはじめ、リスやコウモリ、小鳥や爬虫類を含め6600種の動物と5685種の植物が生息するとのデータもある国有林は、ユネスコの生物圏保護区。クライミングのメッカであり、数々のハイキングコースを提案するパリジャン御用達のピクニックスポットだ。それだけに市民の反応は大きく、火災の制圧とともに、複数の動物保護協会が行った野生動物の救出・保護活動には4000人以上のボランティアが参加。森の再建のための募金は国家遺産財団に一本化され、1週間で60万ユーロ、8月中旬の時点で120万ユーロ以上に達している。200万ユーロを目標とした募金は、気候変動により強くより美しい森づくりを謳う。樹液が引火しやすいマツの割合を再考し、単一樹種を避けた植林が求められるという。

気候変動懐疑派も身をもって地球温暖化を体験した2026年の夏は、気候変動対策へのターニングポイント。ランド地方とフォンテーヌブローの火災は、メガファイアの恐ろしさとともに、都市生活者も森林火災と無縁ではいられないことを示した。熱波、乾燥、森林火災のトリプルショックを機会に、バイオダイバーシティと火災に強い森林づくり、かんばつを見据えた水源管理、暑さに強い住環境づくりなど、エコロジーを鑑みた長期的な視点がますます求められている。9月から本格化する次期大統領選挙への論争に、気候変動に向けた長期的な政策は争点となるだろうか。喉口過ぎればなんとやら、にならなければいいのだが。

Masae Takata
2017年よりフィガロジャポンのパリ支局長。パリの熱波がようやく一段落した8月19日、夏休みの一時帰国で猛暑の京都に到着。世界中、暑さから逃げられない夏にため息。
- photography & text: Masae Takata (Paris Office)
- ●1ユーロ=約186円(2026年9月現在)
*「フィガロジャポン」2026年11月号より抜粋