東京・六本木の国立新美術館では『カルティエ、時の結晶』が2019年12月16日まで開催中。きらめくハイジュエリーやウォッチは、まさにアート。秋を知的に楽しむなら、この展覧会は見逃せない!
現代作品のデザインにフォーカス。

《ネックレス》カルティエ、2018年 個人蔵 Vincent Wulveryck © Cartier
昔なら、ナショナルミュージアムでジュエリー展が開かれると聞いて、不思議に思う人もいたかもしれない。「ジュエリーってアートなの?」──そう、アートなのだ。いまや世界中の美術館で、ゴージャスなジュエリー展が開かれる時代。
今回の企画監修を手がけた国立新美術館のキュレーターは、カルティエのハイジュエリーを初めて見た時に、宝石のあまりの美しさに息をのみ、デザインのスケールの大きさに圧倒されたという。だから展示の内容も、宝石の美しさ、デザインのみごとさに焦点を当てている。王侯貴族の誰それが着けた、というようなことは紹介されない。ブランドヒストリーをただふり返るような構成ではないのだ。
しかも、歴史的な大作を中心に紹介することが多かったこれまでの回顧展とは異なり、今回は1970年代以降の比較的新しい作品にも焦点を当てている。たとえば100年以上前のジュエリーと、2000年代に入ってからのジュエリーが並んでいたり、アールデコ期の「パンテール」と現代の「パンテール」が並んでいたり。その相似性のなかにカルティエの「永遠に変わらないスタイル」を見いだしていくのが楽しい。
Topic1:過去と現代を繋げる、マスターピース。

【第1章:色と素材のトランスフォーメーション】より:1907年頃に作られた《ブルドッグ》は、スモーキークオーツを彫った置物。2010年製作の《ネックレス》は、珪化木(土に埋もれた樹木が化石化したもの)でパンテールの頭を彫っている。宝石彫刻はカルティエが得意とする技のひとつ。ブリリアントカットのような光を引き出すカットとはまた違い、アーティスティックな造形の魅力が楽しめる。
左から、《ブルドッグ》カルティエ、1907年頃 カルティエ コレクション Katel Riou © Cartier 《ネックレス》カルティエ、2010年 個人蔵 Nils Herrmann © Cartier

【第1章:色と素材のトランスフォーメーション】より:大富豪による1936年のオーダーメイド、《「ヒンドゥ」ネックレス》と対比されるのは、2016年に作られたマルチカラーの《ネックレス》。エメラルドやブルーサファイアに花や葉の浮き彫りをほどこし、緑や青、赤のプレシャスストーンのビーズをミックスして賑やかに飾り立てるスタイルは、トゥッティフルッティ(フルーツづくし)と呼ばれる。
左から、《「ヒンドゥ」ネックレス》カルティエ パリ、特注品、1936年(1963年に改造) カルティエ コレクション Nils Herrmann, Cartier Collection © Cartier 《ネックレス》カルティエ、2016年 個人蔵 Vincent Wulveryck © Cartier

【第2章:フォルムとデザイン】より:143.23カラットのエメラルドと、93.81カラットのルベライトをフィーチャーした、2つの《ネックレス》。これほどの大きさの宝石を扱えるのは、さすがカルティエならではのこと。エメラルドのネックレスは1932年製、ルベライトは2017年製で、どちらもモダニズム建築やニューヨークの摩天楼を思わせるディテールに共通性がひそむ。
左から、《ネックレス》カルティエ ロンドン、特注品、1932年 カルティエ コレクション Nils Herrmann, Cartier Collection © Cartier
《ネックレス》カルティエ、2017年 カルティエ コレクション Vincent Wulveryck © Cartier

【第2章:フォルムとデザイン】より:アールデコ期に作られた頭を飾るジュエリー《ヘア オーナメント》と、現代の《ブレスレット》は、動きを感じさせるように波打つラインに注目。《ヘア オーナメント》は100年以上前のデザインとは思えないほどにシンプルでモダン。あしらわれたオールドブリリアントカットのダイヤモンドが個性豊かに輝く。
左から、《ヘア オーナメント》カルティエ パリ、1902年 カルティエ コレクション Nils Herrmann, Cartier Collection © Cartier 《ブレスレット》カルティエ、2018年 カルティエ コレクション Vincent Wulveryck © Cartier

【第2章:フォルムとデザイン】より:1929年の《ヴァニティケース》は、女性が公然と化粧をすることが容認されるようになった時代の作品。エナメルであしらった幾何学的なパターンがとても現代的。2017年の《ブレスレット》はアメシスト、ブルーカルセドニー、オニキス、ダイヤモンドでだまし絵のような幾何学モチーフを描き出している。
左から、《ヴァニティケース》カルティエ パリ、1929年 カルティエ コレクション Nils Herrmann © Cartier 《ブレスレット》カルティエ、2017年 個人蔵 Vincent Wulveryck © Cartier

【第3章:ユニヴァーサルな好奇心】より:梅の花をあしらったアールデコ期の《ブレスレット》と、紅白の紙を折ったような《イヤリング》は、ともに日本からインスピレーションを得たデザイン。3代目、ルイ・カルティエは浮世絵の画集を持っていて、梅の枝ぶりなどは浮世絵を参考にしたことが、今回の展示から見えてくる。
左から、《ブレスレット》カルティエ ニューヨーク、1925年 カルティエ コレクション Marian Gérard, Cartier Collection © Cartier 《イヤリング》カルティエ、2005年 個人蔵 Katel Riou © Cartier

【第3章:ユニヴァーサルな好奇心】【パンテール | タイムレスな象徴】より:猛獣や昆虫、花々など、さまざまな生き物をときにリアルに、ときにデフォルメしてジュエリーに落とし込むカルティエ。「パンテール」の始まりは1914年のブレスレット ウォッチで、この時はフラットな豹柄だったのが、だんだん立体的でリアルな豹になっていくのがおもしろい。
左から、《パンテールパターンウォッチ》カルティエ パリ、1914年 カルティエ コレクション Nils Herrmann, Cartier Collection © Cartier 《「タイガー」ネックレス》カルティエ、1986年 カルティエ コレクション Nils Herrmann, Cartier Collection © Cartier 《ウォッチ》カルティエ、2018年 個人蔵 Vincent Wulveryck © Cartier
Topic2:アートのような空間に、宝石が浮かび上がる。




上奥:羅(ら)と呼ばれる日本古来の布を長く垂らした神秘的な空間。
展示風景 序章「時の間」
上中:組み上げられた大谷石の上でハイジュエリーが光を浴びる。
展示風景 第2章
左上:土の中に埋もれた太古の木材、神代杉などを使ったトルソー。
展示風景 第2章ネックレス 以上、会場構成:新素材研究所 © N.M.R.L. / Hiroshi Sugimoto + Tomoyuki Sakakida
右上:入口で待ち構える杉本博司の作品『逆行時計』。杉本博司《逆行時計》2018年 ミクストメディア(作家本人により逆行化され修復された1908年製造の時計[製造:フォンターナ・チェーザレ、ミラノ])個人蔵 © Hiroshi Sugimoto/Courtesy of N.M.R.L.
会場構成を担当したのは、杉本博司と榊田倫之が率いる新素材研究所。入口にはアンティークの大時計が置かれているが、よく見ると針の回転が逆回り。物質の起源へと遡る壮大な時間を表しているのだ。
会場の空間に浮かび上がるのは、積み上げられた大谷石のブロック。きらめく宝石とざらざらした大谷石の不思議な対比。ネックレスが掛けられているのは、太古の木を使ったトルソーで、作品の形に合わせて1点1点彫ったという。会場そのものが、まるでアート作品のようだ。
この『カルティエ、時の結晶』を訪れると、カルティエのハイジュエリーやウォッチが芸術としてみなされる理由が、きっとわかるはず。
期間:開催中~2019年12 月16 日(月)
休)火(10月22日は開館)、10月23日
開)10:00–18:00(金・土曜日は20:00まで、入場は閉館の30分前まで)
会場:国立新美術館 企画展示室2E
東京都港区六本木7-22-2
料)一般¥1,600ほか
https://Cartier2019.exhn.jp
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Texte : KEIKO HOMMA
この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/jewelry/191016-cartier-cct.html