ヴーヴ・クリコのブドウ畑にThe New Makers Collectiveのために集合した13名のシェフたち。
パリのガストロノミー界を初夏に騒がせたのは、プラザ・アテネとアラン・デュカスのコラボレーションが終了し、その後任がテレビの料番番組の優勝者で39歳のシェフ、ジャン・アンベールだったことだ。ファレル・ウイリアムスをはじめ異業種の人たちとの広い交友、世界的に高い知名度で有名な彼だが、16区のレストランは自分のおばあちゃんのレシピがコンセプト。彼が修行を積んだガストロノミー・レストランとはえらく異なる。その彼がプラザ・アテネのレストラン?? と、驚きを巻き起こしたのだ。高級料理界における新世代の台頭のひとつの顕著な例といえる。
自由で大胆なクリエイティビティで勝負するジャン。エコ・レスポンシブルをテーマにした料理本を書くなど、まさにいまの時代のシェフである。その彼にプラザ・アテネ以前に注目したのはシャンパーニュメゾンのヴーヴ・クリコだ。料理界の次世代クリエイターとコラボレーションを行って、レシピなどの発信とコミュニティの形成を目的とするプログラムである「The New Makers(ザ・ニューメーカーズ)」を昨年発足したヴーヴ・クリコが、一番バッターに選んだのが彼だった。ちなみに日本で選ばれたのは森枝幹シェフというと、このプログラムのイメージがつかみやすいだろうか。

でも、なぜヴーヴ・クリコが?と思うのではないだろうか。ハイクオリティを誇るシャンパーニュの背景にいる創業者の息子フランソワ・クリコの未亡人(ヴーヴ)にスポットを当てるとわかりやすい。結婚7年後で夫に先立たれた彼女は、女性がビジネスの世界で活躍することなど珍しかった19世紀初頭にメゾンを引き継ぎ、その大胆さと叡智を駆使して事業を発展させた。1972年に生まれたヴーヴ・クリコの「ボールド ウーマン アワード」が彼女の20世紀の後継者に向けたものなら、ザ・ニューメーカーズは料理界における彼女の精神の体現者たちを支援するものだ。
シェフたちの共同クリエイション
左: イスラエルのエイヤル・シャニとフランスのモリー・サッコ。 中: 野菜、花……見た目の美しさも大切に、4本の手が作りあげる一品。 右: 昔ながらの方法で調理するのはカナダのマイク・ソニエ(写真)、ジャン・アンベール、ステファン・アビイのトリオだ。
左: イタリアのイレーヌ・ベルニとフランスのエロイーズ・ブリオン(ミス・マギーズ・キッチン)。 右: スペインのアナ・アルセとシャルル・コンパニョン。
さて今年、The New Makers Collectiveと銘打って初のレジダンスが、ランスにあるヴーヴ・クリコのブドウ畑で開催された。異なる文化的背景を持ち、幅広い世界を有する国籍さまざまなシェフたち13名が、シャンパーニュを巡るクリエイションのために集合。3日間のアトリエではデュオあるいはトリオでシャンパーニュに合わせたコンテンポラリー・ガストロノミーに、彼らはマルチな文化とサヴォワールフェールを調和よくミックスして挑戦したのだ。全員共通のメイン素材は、大胆と自由。テーマは「Fresh Take of Champagne(シャンパーニュの新しいアイデア)」、そしてノマド料理である。その13名とはフランスからはジャン・アンベール、モリー・サッコ、Carbon(ステファン・アビー&サブリナ・ゴルディン)、エロリーズ・ブリオン、Mamiche(ヴィクトリア・エファンタン&セシル・カイヤ)、シャルル・コンパニョン。そして英国、スペイン、イタリア、イスラエルからのシェフたち。みな、既成概念にとらわれない料理の探求者たちだ。
最初のアトリエのためにヴーヴ・クリコが用意した筋立ては、料理する、発明する、即興する、アイデアを得る、というものだった。このクリエイティブな味の冒険を13名はおおいにエンジョイした模様だ。マドリッドでチャーミングなカフェレストラン「Hermanas Arce」を姉妹で経営するアナは、パリ10区のおいしいレストラン「52(サンカント・ドゥ)」のオーナーのシャルル・カンパニョンとデュオで、互いに共通する料理の自由なビジョンを分かち合ってフランコ・エスパニョル料理を再訪し、こう語っている。「楽しんで何か好きなものを作る、それは結果となる料理に現れるものです。わたしたち心から楽しめました」。このアトリエで生まれた13名が情熱とエネルギーをこめたイマジネーションあふれる料理レシピは、ヴーヴ・クリコのホームページで紹介されてゆく。シェフたちの大胆な発想を味わいながら、豊かなシャンパーニュ時間を!
左: モリー・サッコとエイアル・シャイは、中央アフリカ、中東、日本からインスパイアされたブドウの葉のケバブを。彼らはパリで人気のパン屋Mamicheのヴィクトリア・エファンタン(中央)に石焼きの新ピタパンのアイディアの伝授も。 右: ヴーヴ・クリコのロゼに合わせた料理もクリエイトされた。
ランスにあるヴーヴ・クリコの迎賓館でのThe New Makers Collectiveプレス発表ランチでは、Miss Maggie’s Kitchen のエロイーズ・ブリオンが庭のハーブ類も使ってテーブルデコレーションを担当。
www.veuveclicquot.com/ja-jp/the-new-makers
editing: Mariko Omura
この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/paris/210819-veuveclicquot.html