あのブランドも女王も魅了、エマ・ラデゥカヌ選手って?
Culture 2021.09.22
文/坂本みゆき(在イギリスライター)
2021年8月30日から9月12日まで開催された全米オープンテニスの女子シングルスで優勝したエマ・ラデゥカヌは、この夏に高校を卒業したばかりの18歳。ルーマニア人の父と中国人の母の間にカナダで生まれ、2歳の時に両親とともにイギリスに移住。5歳でテニスを始めたのちにはジュニアの有力選手として活躍、16歳でプロへ転向した。近年は学業に専念していたこともあり、この夏のウィンブルドンで初めて四大大会に参加、その時の世界ランキングは338位、USオープン直前では150位だった。
そんなエマがUSオープンの予選からぐんぐんと勝ち進んでいくのに合わせて、イギリス中が彼女に注目するように。決勝までの10試合すべてをストレートで勝利して、イギリス人として44年ぶりに四大大会の覇者となった時には国中が大きく湧いた。予選の第一回戦では「これに勝って、その賞金で失くしちゃったエアポッドを買い換えよう」と考えていたという彼女だが、最終的には250万ドル(約2億7500万円)の優勝賞金を手にすることになった。
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彼女が優勝を決めたのはイギリス時間の11日の深夜。夜明けを待つことなく同日中にエリザベス女王がお祝いのコメントをウェブサイトに掲載。そのスピーディな対応から女王は決勝戦の生中継をテレビで観戦していたと噂されている。
また女王が自らのイニシャル入りのメッセージを試合直後のアスリートに送るのはとても稀だとか。この文面は署名入り手紙としてもエマに送られていて、エマは「額にいれて大切に保存したい」と語っている。チャールズ皇太子夫妻、ウィリアム王子夫妻、そしてベアトリス王女もツイッターでお祝いを述べている。
The Queen hails @EmmaRaducanu’s “remarkable achievement at such a young age”, praising her “outstanding performance” to win the #USOpen2021 #EmmaRaducanu pic.twitter.com/Lxar2roLRw
— Roya Nikkhah (@RoyaNikkhah) September 11, 2021
決勝戦の2日後にはシャネルのドレスとティファニーのイヤリングでメットガラにも初参加。BBCのインタビューでメットガラではレーシングドライバーのルイス・ハミルトンとお喋りをしたことを明かし、フォーミュラワンの大ファンである彼女にとって「とても嬉しくクールなひと時」だったと語っている。
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エマはイギリスで初めてのビリオネイヤー・アスリートとなるだろうと言われている。テニスの才能はもちろんのこと、18歳というフレッシュさに加えて、イギリスだけでなく中国、ルーマニア、カナダにルーツを持ち、英語以外に中国語も話せるバイリンガルなので、世界的に人々の共感を得る存在となりうる。そして真摯でありながらも常にリラックスした姿勢は好感度も高く、多くの企業が放っておくはずはないからだ。現在はナイキとウィルソンがスポンサーとなっているのに加えて、イギリス時間の9月21日にはティファニーのハウスアンバサダーに就任したことも発表。今後はさらに数多くが彼女に声をかけるだろうと予想されている。
一方で、苦手なことは「片付け」というエマ。遠征後、帰宅しても3週間はスーツケースはそのままなこともしばしばだとか。そんな自分を「普段はどこにでもいるティーンエイジャー」と言う彼女だが、今後はテニス界ではもちろん、ファッション界でもますますマストな存在となっていくのは間違いないだろう。
東京生まれ。95年に渡英後、ブライトン大学院にてファッション史を学びながらファッション業界紙やファッション誌への寄稿を始める。現在は男性誌、女性誌、専門誌など多方面に渡ってイギリスに関する記事を執筆。好きな分野は英国文化と生活、アート、音楽、食べ物&飲み物。サセックス州在住。ティーンエイジャーの母。madame FIGARO.jpで「England's Dreaming」を連載中。
text: Miyuki Sakamoto