我が愛しの、ジェーン・バーキン チームワークを愉しんだ女優、ジェーン・バーキン映画リスト。【1970年代】
Culture 2024.06.14
圧巻の作品リストだ。若い時は長い肢体で魅せるファッション映画、コメディエンヌとしても活躍し、芸術家のパートナー役や同性愛も演じた。錚々たる映画作家に起用され、残した軌跡がここに。
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1970年代〜
イタリアB級映画で共演。
『ジェーン・バーキン in ヴェルヴェットの森』
スコットランドの田舎にある城を舞台に起こる謎の殺人事件を描いたホラー。城には「殺人猫」が出没するという言い伝えがあり、地元の人々を恐怖に陥れる。ジェーン扮する城主の姪は、独自に謎の解明に乗り出す。刑事役でゲンズブールも出演。ちなみにアンソニー・M・ドーソンは監督の偽名で、イタリア人である彼の本名はアントニオ・マルゲリティ。60、70年代にイタリアでB級映画を量産した監督として知られ、本作もその例に漏れない。原題はイタリア語で『La Morte Negli Occhi del Gatto』
BBとのベッドシーンに緊張!
『ドンファン』
ヴァディム監督とバルドーのコンビによる最後の作品。次々と相手を誘惑してはその人生を破壊していく奔放なヒロインが最後に改心しようとするが......。ジェーンは彼女の虜になる若い娘に扮する。ふたりの官能的なベッドシーンが話題を呼んだ。ちなみにこのシーンの撮影で、ジェーンはとても緊張していたそうだが、バルドーのおかげでリラックスすることができ、撮影は楽しいものになったとか。
キュートなお色気サスペンス。
『マドモアゼル à GO GO』
©️ Capital Picrures/amanaimages
望遠鏡を覗くのが趣味の共同生活を送る4人の女性が、世界的な強盗団のアジトがアパルトマンの向かいにあることを発見。彼らから戦利品の略奪を計画するが、若い彼女たちにとって魅力的なのは金より男だった。果たしてその行く末は、というお色気コメディ。4人組を演じるのはジェーンのほかにベルナデット・ラフォン、エリザベス・ウェイナー、エマ・コーエン。彼女たちの、ちょっとセクシーでエネルギッシュな演技にゲンズブールの軽快な音楽が相まって、楽しい娯楽作に仕上がっている。
70年代風リベラルなロマコメ。
『まじめに愛して』
©️ SIPA/amanaimages
ふたりの男とひとりの女が、ハッピー・ゴー・ラッキーな三角関係を保って冒険旅行をするロードムービー。いかにも70年代的な、自由な空気にあふれるロマンティックなフレンチコメディで、自立したリベラルな女性を演じるジェーンが印象的。イザベル・ユペール、ミシェル・ロンスダル、ジャック・ヴィルレ、ピエール・エテックスなど、錚々たるメンツも脇役で出演。ゲンズブールがここでもカメオ出演し、脇役を発見する楽しみもある。
コメディエンヌの才能を発揮。
『おかしなおかしな高校教師』
70年代のフランスで大人気だった庶民的なコメディで知られるクロード・ジディ監督の代表作のひとつ。ピエール・リシャール扮する田舎町の人の良い教師は、議員の父親のスピーチ原稿や批評家の友人の記事を手伝い、本業以外にもいつも大忙し。ひょんなことから撮影に訪れた女優と遭遇し、彼女に好かれる事態に。彼のめまぐるしい人生にさらに騒動がもたらされる。女優に扮するジェーンが快活な色気を発し、ドタバタコメディでもその魅力を遺憾なく発揮。
コメディチームと再タッグ!
『冒険喜劇 大出世』
クロード・ジディ×ピエール・リシャールのコンビと再度タッグを組んだコメディ。『おかしなおかしな高校教師』により監督から見込まれたジェーンは、ここでリシャールの相手役としてヒロインに。銀行の管理職から一時期だけディレクターの代理になった男が仕事に忙殺され、預かっていた大切な顧客のスーツケースを盗まれてしまう。彼はフィアンセのジャネットとともに、泥棒追跡作戦に乗り出す......。彼がぞっこんのセクシーなフィアンセというお約束のキャラクターながら、ここでもジェーンの快活な魅力が炸裂。
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ジェーンの私生活がインスピ源?
『麗しのカトリーヌ』
パリにやってきた英国人女性をヒロインにしたロマンティックコメディで、ジェーン自身が着想源なのが明確。ノンシャランな主人公の性格がどこか共通性を感じさせる。パリで恋人を見つけようとする主人公が、異なるタイプの男たちと出会いを重ねるアヴァンチュール劇。脚本には官能映画の巨匠、カトリーヌ・ブレイヤ監督が参加しているが、本作のトーンはあくまでライトだ。ジェーンをとりまく男性陣に、性格俳優として人気のあったパトリック・デュヴェール、"ヌーヴェルヴァーグのボーギャルソン"ことジャン=クロード・ブリアリなど、脇役も贅沢。
官能的な年上の女役へ。
『スキャンダル』
裕福な家庭の青年エリックは、美しい女性リンダに密かに心を寄せていたが、ある日彼女が父親とベッドにいるのを目撃し、ショックのあまり思い余って父親を射殺してしまう。彼女を人質にして別荘に逃げるのだが......。エリック役にはジャック・スピエセル。うぶな男性を悩ませる妖艶な役柄に扮し、ジェーンは再び官能的なベッドシーンを演じている。シリアスな作風だが作品的な評価はいまいちで、フランスでは残念ながらDVD化されていない。
医療ドラマでシリアスに熱演。
『仮面/死の処方箋』
コメディやエロティックな役柄の続いていたジェーンが初めて挑戦した社会派ドラマ。ある街の病院で、15年のインターバルを経て、ふたりの優秀な医者が同じ誹謗と恐喝に遭う事件を描く。実際にあった事件をもとに医学界の腐敗を描いた、いわば『白い巨塔』のような物語だ。ジェラール・ドパルデュー、ミシェル・ピコリら共演陣も強力。ジェーンはドパルデュー扮する若い医者の妻に扮し、鮮烈な演技を見せる。ジャック・ルーフィオ監督は本作で高い評価を受け、セザール賞の作品賞にノミネートされた。
短髪が新鮮! あけすけな性の問題作。
『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』
©️ Capital Pictures/amanaimages
同名の自曲をもとにゲンズブールが企画し、自らメガホンを握ったあまりに有名な作品。ジェーンはそれまでの長髪のイメージを捨て、ボーイッシュな短髪にしてアンドロジナスのような雰囲気で登場した。カフェで働く女性が、そこに立ち寄ったふたりの労働者と親しくなる。そのうちのひとりと特に妖しい関係になるが、彼はゲイだった。肛門性愛のテーマやあけすけな映像が激しいスキャンダルを巻き起こすが、フランソワ・トリュフォーなど本作を高く評価する文化人に支えられた。短髪にTシャツ、ジーンズ姿のジェーンがとりわけ新鮮で、彼女はファッション界でもアイコンに。
監督の寵愛を受けて友情出演。
『ムッシュとマドモアゼル』
ジディ監督と再び組んだ本作は、ジャン=ポール・ベルモンドとラクウェル・ウェルチ主演で、ジェーンは友情出演的なポジション。
大物俳優たちに囲まれて......。
『ナイル殺人事件』
ギラーミン監督がアガサ・クリスティの『ナイルに死す』を映画化したイギリス映画で、ポワロ役にはピーター・ユスティノフ。ジェーンはロイス・チャイルズ扮する裕福な女相続人に仕えるメイド役に扮している。
トランティニャンのピュアな妻役。
『メランコリー・ベビー』
フランスを代表する名優、ジャン=ルイ・トランティニャンと主演を務めたメランコリックなドラマ。不在がちの裕福な実業家の夫に不満と寂しさを抱える若い妻が、友人の紹介で彼女の知人を訪ねて田舎へ。孤独な年配の男性に出会い、親交を深めていく。出会いを通して自立に目覚める女性の姿を穏やかに描く。映画としてのパンチには欠けるが、ディテールに洒脱な味がある。ゲンズブールの音楽はここでも、映画を引き立たせる。そこはかとない色気を漂わせるトランティニャン、天使のような寝顔のジェーンが美しい。
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▶︎ジェーン・バーキン、永遠のファッションアイコンの魅力を紐解く。
*「フィガロジャポン」2024年3月号より抜粋
texte: Kuriko Sato