現代アートとの対話が生む、新たなモネの鑑賞体験。ポーラ美術館で『あたらしい目―モネと21世紀のアート』が開催中!

「モネ展にあってモネ展にあらず」。館長の野口弘子がそう語る展覧会が、箱根のポーラ美術館で開幕した。『モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目―モネと21世紀のアート』は、アジア最大のモネ・コレクション19点を一挙公開しながら、国内外18組の現代作家の作品を紹介する意欲的な試み。モネの追い求めた光と色の世界が、100年後の現代アートと隣り合うとき、新しい鑑賞体験がもたらされる。
『セーヌ河の日没、冬』と青いキャンディが語るもの

「カメラ」「時間」「河」「ライフ」「庭」の5つのテーマのもと、モネ作品と現代アートが対話する本展。モネ作品を先に見て現代アートへと進むのではなく、モネと現代アートが同じ空間に並び置かれているのが特徴だ。モネの『セーヌ河の日没、冬』とともに展開するのが、キューバに生まれ、ニューヨークで活動したフェリックス・ ゴンザレス=トレスのインスタレーション。42個の電球コードが天井から吊るされ、床一面に青い粒状の何かがびっしりと敷き詰められている。
実はこれ、青い包みのキャンディ。モネがこの絵を描いたのは、妻カミーユを失った深い悲しみの中でのこと。厳冬のヴェトゥイユにて、夕陽に照らされながら解氷するセーヌ河を表している。そして今回の展示では、ゴンザレス=トレスによる電球を沈む夕陽に、奥のカーテンを北風に、青いキャンディをセーヌ河を流れる氷の塊に見立てている。さらにキャンディはひとつ持ち帰ることもでき、そこには愛する人の不在、つまり喪失といったテーマも浮かび上がる。
人工の庭、失われた太古の風景、そして自然への回帰

モネの『睡蓮の池』に向き合うのは、フランス人作家のノエミ・グダルだ。ジヴェルニーの庭は、モネ自身の手で作られた人工の庭。その理想の庭を題材に、水面の反映など自然の変化を描き出した。一方でグダルは、書割のような風景を創り出し、それを写真や映像として記録することで、人工の風景を作品として提示している。最新作の「デルタ」シリーズは、3億年前の失われた植生をジオラマのように再現し、ありえないはずの太古の風景をいまに蘇らせている。

自然の風景と工場の煙を対比的に描いたモネの『花咲く堤、アルジャントゥイユ』と呼応するように、ベトナムを拠点に活動するタオ・グエン・ファンの作品が展示される。ダム決壊事故を題材に、史実と寓話を交えながら、欲望がもたらす破滅や自然への回帰を描いた映像作品は、資源開発による生態系の破壊を詩的な表現で問いかけ、忘れがたい余韻を残す。
これが「モネ展」? 想像を超える作品たち

ガレやドームといった、モネと同時代に活躍したアール・ヌーヴォーの作家たちも展示に華を添えている。色とりどりのガラス工芸の向こうに見えるのは、モネの『睡蓮』と『バラ色のボート』。モネがジヴェルニーの庭で植物を観察したように、ガレもまた自邸の庭で野生植物を育て、自然の造形からインスピレーションを得ていた。産業化が進む時代に、失われゆく自然へ向けた両者のまなざしは、どこか深いところで重なり合っている。

同じ空間には、プエルトリコを拠点とするアーティスト・デュオのアローラ&カルサディーラによるインスタレーションや、国際的に活躍するピエール・ユイグの彫刻作品も展開している。約5万個の手彩色の花による『接ぎ木』や、人間の知性の象徴である頭部をミツバチの巣に覆った女性像『異系知性(淵)』など、従来の「モネ展」という括りでは想像もつかないような作品が並び、改めて冒頭に引用した野口館長の言葉が頭をよぎる。
森の遊歩道を歩けば、霧の彫刻が待っている

ロニ・ホーンの野外彫刻などが点在する「森の遊歩道」にも、足を向けてほしい。エントランスを出て、森の中を抜ける心地よい風を感じながら歩くこと数分。普段は水が枯れている沢を舞台に、中谷芙二子が人工霧のインスタレーションを手がけている。かつてモネがセーヌ河の支流から水を引いて池を作ったように、中谷は枯れ沢に水を呼び戻し、雲海のような霧の川を出現させた。

霧が湧き上がるのは毎時00分と30分。鳥のさえずりに耳を傾けていると、やがて霧が沢を満たし、あたりの草木を包みながら、風の向きによって表情を変えていく。深い緑と白い霧のコントラストは神秘的なほど美しく、いつしか自分の身体まで霧に包まれる。今でこそ「霧の彫刻」で世界的に知られる中谷だが、キャリア初期に箱根・仙石原にあった親族の別荘で絵画を制作していたこともあり、この地には特別な思いがあるという。
限定グッズとモネのレシピで、鑑賞の余韻を味わう

モネと現代アートの対話を存分に堪能した後は、多彩なオリジナルグッズが揃うミュージアムショップへ。本展の開催にあわせ、モネの色彩に着想を得たトートバッグや、ノエミ・グダルの作品をバックプリントに展開したTシャツなどを限定にて販売している。

そしてぜひ立ち寄りたいのが、6月より直営化されてさらに話題のレストラン アレイとカフェ チューンだ。大きな窓から箱根のダイナミックなパノラマを望めるレストラン アレイでは、モネのレシピを現代風にアレンジした展覧会スペシャルコースを提供。食材から盛り付けまで美意識が行き届いた料理の数々は、東日本の美術館レストランでも随一と呼べるクオリティだ。森の景色の中でゆっくりと食事を楽しみたいなら、予約して訪れることをおすすめしたい。
『モネ没後100年・開館25周年記念 あたらしい目―モネと21世紀のアート』
会期:開催中~2027/4/7(水)
会場:ポーラ美術館
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
0460-84-2111(代表)
開)9:00~16:30最終入場
会期中無休[12/1(火)は休館]
料)¥2,200(大人)
https://www.polamuseum.or.jp/sp/the-new-vision/
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- text: Harold