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REPETTO
バレエが原点のレペット。CEOが語るフレンチラグジュアリー。
2027年、創業80周年という大きな節目を迎えるレペット。来日したCEOのシャーロット・ゴーシェに、伝統を守りながらも時代とともにしなやかに進化を続けるレペットの哲学と未来について、話を聞いた。

1947年、パリ・オペラ座のすぐ近くでローズ・レペットが息子ローラン・プティのために作ったバレリーナシューズから始まったレペット。のちにブリジット・バルドーが1956年の映画『素直な悪女』の劇中で履いたことで、レペットの靴は一躍時代を象徴する存在になる。「バレエダンサーのためのシューズをファッションの日常着として楽しめるように、製造方法をストリートシューズ仕様に作り変えたのです」とシャーロットは当時を振り返る。バレエというひとつの原点から、ファッションという新しい物語が生まれた瞬間だ。その時に誕生した「サンドリオン」は、パリジェンヌのアイコンとなり、いまなお世界中の女性たちを魅了し続けている。
80年変わらぬ原点と、「足のための手袋」という匠の職人技。
シャーロットが、父である故ジャン=マルク・ゴーシェからレペットを引き継いだのは2023年のこと。「品質において絶対に妥協してはいけない」という父からの教えを守り、職人技への投資は惜しまず、次の世代へと継承していく。その哲学はいまも変わらないが、時代が移り変わろうと、レペットが長きにわたり愛され続ける理由を、シャーロットは確信を込めてこう語る。
「レペットがユニークな存在として長年愛されているのは、創業以来その原点に忠実であり続けたからです。1947年の創業以来、ダンスというアイデンティティ、サヴォアフェール、そしてフレンチエレガンスを何よりも大切にしてきました」

フランス・ドルドーニュ地方に構えるレペットの工房では、職人が靴を縫ったあとにひっくり返す伝統のステッチ&リターン(裏返し縫い)製法をいまも手作業で守り続けている。
「機械化しない理由は、この製法こそが非常にしなやかで履き心地の良い、柔らかな靴を生み出すからです。私はよく『レペットの靴は足のための手袋のような存在』と例えるのですが、職人による卓越した技術こそがレペット独自の強み。このようにメイドインフランスとは単なる伝統ではなく、時代を超えて変化しながら生き続けるヘリテージなのです」

レペットを象徴するもうひとつの要素が、シグネチャーカラーの“バレエピンク”だ。「女性らしさや柔らかさを表現するカラーで、トレンドではなく普遍的なもの。この色を見れば、誰もがレペットを思い出します」
新しいシーズンのカラーパレットも、トレンドを取り入れるのではなく、常に「レペットが何をしたいか」という自社のデザインコードから決めているという。このこだわりが一貫したレペットらしさを保つ秘訣になっている。
そんなレペットの靴について、女性経営者として、またひとりの愛用者として、彼女自身はどのように感じているのだろうか。
「いまの時代における女性らしさとは、外見よりも“自由である”ことに意味があると考えられています。現代の女性はすごく欲張りで、エレガントで美しいことに加えて、心地よさも求めています」とシャーロット。つまりレペットのシューズは、そのどちらも諦めない女性のための靴なのだ。「エレガントで、エフォートレスで、オーセンティック。これこそ現代の女性が求めている靴の理想形だと思っています」
ビルケンシュトックとの最新コラボレーション。

これまでもレペットは、イッセイミヤケ、ヨウジヤマモト、コム デ ギャルソンといった先見性のあるメゾンと組み、ブランドの成長に新たな勢いをもたらしてきた。

7月16日に発売された最新コラボレーションのパートナーは、ビルケンシュトックだ。フランスのエレガンスとドイツの機能美という、一見すると対極にある両者だが、実はさまざまな共通点がある。
「卓越したクラフトマンシップと心地よさ、そして世代を超えて愛されるタイムレスなデザインという共通点があり、ともにものづくりに真摯に取り組んできました。さらに興味深いことに、長年リサーチを進めるなかで、バレエダンサーたちがダンスの後に足を休めるために履き替えるのが、実はビルケンシュトックであることが多いと分かったのです」 思いがけないところですでに繋がっていたふたつのブランドが交差したことで、唯一無二のクリエイションが誕生した。
「ビルケンシュトックのサンダルをベースに、レペットを象徴するカラーパレットやリボンといったディテールを落とし込みました。どちらの世界観も妥協することなく、誰もが見たことがないような魅力的なアイテムが誕生しました」
バレエ文化そのものを伝えていくコンセプトストアがソウルに誕生。
近年“バレエコア”という言葉とともに、レペットへの注目は再燃しているが、シャーロットの視線はより本質的な価値を見つめている。「いまブランドに改めて求められているのは、一過性のトレンドではなく、人生や日常を豊かにしてくれるストーリーや体験です」
そうして彼女が次に取り組んだのは、新しい世代に向けた自由な表現と体験の提示である。3年前には韓国に初のバレエスタジオをオープンした。単なる店舗ではなく、「バレエを学び、楽しみ、コミュニティの一員になれる場所」を提供することで、次世代へバレエ文化そのものを伝えていく役割を担う一方、バレエを通してレペットのストーリーや魅力を体感できるようにするのが狙いだ。「体験を通してファンを迎える場所」は今後世界的に広げていく計画であり、「もちろん日本でもバレエスタジオを作ることがひとつの目標」だと、シャーロットは笑顔で言及する。
次の80年へ――真のフレンチラグジュアリーメゾンへ。
シャーロットに日本についての印象を聞くと、「レペットにとって特別な国」と前置きしたうえで、「クラフトマンシップや細部へのこだわり、高い品質へのリスペクトが強く、伝統を尊重しながらも新しい創造性に敏感」だと分析してくれた。その感性は、レペットのDNAと自然に共鳴しているという。そんな彼女が見据えるレペットの未来は、どこまでも軽やかで、かつ力強い決意に満ちている。
「私たちの最大の目標は、レペットをフランスのさらなるラグジュアリーメゾンとして確立させることです。顧客は4歳から90歳までと実に幅広いですが、トレンドセッターである若い世代にとっても魅力的なブランドであり続けることが肝心です。原点を大切にしながら、来年迎える80周年を『次の80年をどう築くか』という新しいチャプターの第一歩にしたい。卓越した職人技と、自然体のエレガンスを携えて、これからも時代を超越した美しい物語を紡いでいきます」
Profile

レペット最高経営責任者
Charlotte Gaucher/シャーロット・ゴーシェ
ロレアルで12年以上財務やマーケティングの上級管理職を歴任後、2022年にレペットへ入社。父ジャン=マルク・ゴーシェの遺志を継ぎ2023年に経営を継承。メゾンのDNAを守りつつ、伝統と革新、国際的発展を牽引する。
- text: Eri Arimoto
- photography: Repetto