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Swarovski
スワロフスキー×ヒコロヒー「Moments of Joy」喜びの原点を探して。
芸人・ヒコロヒー。一見アンニュイな表情の奥に宿るのは、知性とユーモア、強さと繊細さ。そんな多面体の輝きは、光を受けるたびに表情を豊かに変えるスワロフスキーのクリスタルを思わせる。プライベートでも同ブランドのネックレスを愛用しているという縁から、今回のシューティングが実現。新作をまとった彼女が今季のテーマ「Moments of Joy」(喜びあふれる瞬間)を手がかりに、仕事、そして人生の中で見つけてきた“喜びの原点”を語った。
ふたつの輝きが重なり合った、撮影の舞台裏。
上質な輝きにふさわしい人になりたい。

「普段、衣装はほとんどパンツスーツにハイヒール。取り立てて大ぶりのアクセサリーをつけることもないし、すごくシンプルです。だから今日のようにジュエリーを少し足すだけで、華やかになるなと感じますね。私服に至ってはほとんど“Tシャツにジーパン、以上。”といったラフな服装ばかりですが、そういう恰好にもジュエリーがポンとあると、年相応(オトナ)に見せられる気がします」。
気負いのない話し方や、ひょうひょうとした姿を見ていると、ヒコロヒーが“国民的地元のツレ”として多くの人に親しまれる理由に、説明はいらない。だが、カメラの前に立つと、たちまち強力なカリスマ性が立ち上がる。ジュエリーが彼女に華やかさを与えるというより、その煌めきがヒコロヒーの個性に驚くほど自然になじんでいる。それを伝えると、こんなふうに返ってきた。
「私、年齢とか自分のキャリアに相応するジュエリー、相応するファッションをした方がいいんじゃないかって、結構無理してきた節があるんですよ。ふさわしいものを身につけなければって。最近世間では『大人が500円のアクセサリーをつけるのはアリやナシや』みたいな論争も湧いてましたけど、それでいうと、自分はかなり無理して身につけてきたのかなと」。
この答えは意外だ。周囲に取り繕うことなく、至って自然体でありながら、実は“どう見られるか”にも意識を向けている。いや逆に、無理してきた自分をこれほど率直に明かせるのだから、かなり自分に正直な人なのかもしれない。そして、ヒコロヒーはこう続けた。
「たとえばスワロフスキーの腕時計を着けた状態で、パチンコ屋さんに行こうとはならない。“自分を律する”というか、身につけるものにふさわしい振る舞いを少しずつ覚えていきたいとは思います。けど、ほんまのこと言うと、自分の好きなもので認めてもらえるようにならないといけないなと。身につけるもので何かをジャッジされる必要がないぐらいのようなやつでいたい、と思いますね」。
ジュエリーに自分の価値を委ねるのではなく、その輝きにふさわしい人になろうと努力する。そうして自分を磨き上げた先に思い描くのは、どんなものを選んだとしても、自分らしくサマになる人物像だ。ヒコロヒーにとってジュエリーとは、自身の成熟とともに、その意味を深めていく存在なのかもしれない。
きっかけは、母からもらった馬蹄モチーフのネックレス。

ヒコロヒーとスワロフスキーの間には、今回の撮影より前からひとつの大切な関係性があった。それは、この撮影でも身につけた馬蹄モチーフのネックレスだ。
「これは29歳とか30歳ぐらいですかね。母が贈ってくれました」。
それ以前は、ジュエリーを積極的に身に着けるタイプではなく、なくしてしまうことも多かったという。けれど、母から贈られたネックレスはいつも装いに自然になじみ、長く愛用する一本となった。
「もともとスワロフスキーは、“すごく華やかなジュエリー”っていうイメージだったんです。でもこれはシンプルなのでいろんな衣装に合うし、カジュアルにもすごく使いやすくて。シーンを選ばない使い方ができるので気に入っています。“今日は強く行きたい”という時は、大ぶりのものやわりと主張の強いものをつけたくなることもあります。ジュエリーって、“よし、これをつけていくぞ”と気持ちをしゃんとさせてくれる力があるんやなと思います」。
結構天才。それに輪をかけて努力家。


もはや、芸人の肩書きだけでは彼女を語りきれない。ラジオパーソナリティ、俳優、脚本家、小説家、ビストロオーナーと、表現の場は多岐にわたる。いくつもの領域を横断しながら、次々と表現を生み出し続ける原動力を尋ねると、思いがけないほど潔い答えが返ってきた。
「確かに私、結構天才なんです、そもそも。でも、それに輪をかけて努力家なんですよ。同じぐらいの能力、才能の人が世の中にいっぱいいても、たぶん私、ほんまに3倍、4倍働いてるんですよね」。
一見、大胆にも聞こえる自己評価。しかし、その言葉に続くのは、自らの才能を持て余さず、使い切ろうとする強い意志だ。
「で、なんでそれができるのかっていうと、“もったいない”と思ってますかね、自分のこと。ネタにしろ、コントにしろ、執筆業にしろ、普段のバラエティ収録もそうなんですけど、“自分の作るものをいっぱい残さないと。こんなに面白いことを思い描けるんやから”って。まあ、自分の手元から離れたら、もう世間様の評価は知らないですけど」。
作品を作る時間も、仕事とプライベートに明確に分かれているわけではない。四六時中、いつでも気になる言葉を拾い、メモし、移動中に整理する。創作は日々の至るところで続いている。才能を信じながらも、才能だけに頼らないこと。その両方を臆面なく語れるところに、ヒコロヒーの強さがあるのだ。
和して、自分らしさを表現すること。

彼女自身はこれまでの歩みを、ポジティブな思考によって人生を切り開いてきたとは捉えていない。
「前向きに、楽しく!って感じで活動してきた記憶は一切ないです。お笑いの世界は本当にシビア。もうとにかく、やるしかないんです」。
そんな多忙な日々の中、何をしている時にいちばん喜びを感じるかと尋ねると、こう返ってきた。
「もうね、仕事以外に喜びを感じる時がないんですよ。悲しいも悔しいも腹立つも楽しいも、全部仕事。でも本当に仕事が好きなので、ストレスが溜まったとしても発散するんじゃなくて共存。共に歩んでいくという気持ちです」。
自分が面白いと思うものを作り、その先で誰かが笑ってくれたなら、それが一番嬉しいと言う。ただ、その喜びは“自分が笑わせた”という達成感とは、少し違うようだ。
「“しゃあっ、笑かすぞ!”みたいなのとは、なんか違う気がするんですよね。20代の頃からずっとほんまお笑いが好きだったので、その世界で認められたり、面白い人たちに出会えたり、才能ある人たちと一緒に仕事できることが幸せで、喜びです」。
多彩な才能がひしめく世界で、自分らしさを失わず、同時に周囲と調和していくには、どんな強さが必要なのだろう。ヒコロヒーが挙げたのは、「勇敢さ」だった。
「自分らしさを出して、かつ周りと協調性を持つって、実は勇気がいることだと日々感じています。これ、お笑いの世界じゃなくても、自分の勇気を試されることって意外と毎日、誰にでもあると思うんですよ。この服を着たいけど、あの人にどう思われるかなとか。二の腕出したいけど、どうジャッジされるかわからへんからやめようとか。仕事でこれ言ったらこう思われるかな、長いものに巻かれた方がいいかなとか。そういうのを恐れず怯まず、むき出しにやってる人。かつ、それがエゴじゃなく、和して調和を取りながらやってる人は、たとえ目立たなくても素敵やなと思います」。
インタビューの冒頭から感じていたのは、自分に正直でありながら、周囲をつぶさに観察し、場の空気を見失わない人だということ。そのふたつを併せ持つからこそ、ヒコロヒーは自分の表現を貫きながら、人とともに面白いものを生み出していけるのだろう。
きらびやかな成功でも、シビアな世界からの逃避でもなく。目の前にあるものを見つめ、どうすれば面白くできるかを考え、形にし、それを誰かと分かち合う。そうした日々の営み自体が、ヒコロヒーにとっての「Moments of Joy」なのだ。
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Hiccorohee/ヒコロヒー
1989年10月15日生まれ、愛媛県出身。近畿大学在学中、学園祭でのスカウトをきっかけに松竹芸能に所属し、2011年にピン芸人としてデビュー。世界観や台詞で魅せるコントを中心に、テレビ、ラジオ、ドラマ、執筆など幅広い分野で活動している。初の小説『黙って喋って』(朝日新聞出版刊)は、第31回島清恋愛文学賞を受賞。
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- photography: Bungo Tsuchiya(TRONmanagement)
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- makeup: Arina Nishi
- video director: Tsuyoshi Hasegawa
- interview & text: Yuki Miyahara