音楽と小説 FIGARO本の特集号

Culture

9月終盤から11月中盤にかけては、12月5日発売号のFIGARO japonの本の特集の仕事にも追われていました。私の担当は、作家・桜庭一樹さんと山崎ナオコーラさんがそれぞれ挙げてくださったテーマと、それに合わせた6冊の本に関するインタヴュー。そして読書家として知られるモデル・俳優・デザイナーのARATAにも、同様にテーマと本を6冊挙げていただき、お話を伺いました。


皆さんお忙しいこともあり、本のリストが挙がってくるのがわりと取材の直前で、そこから担当編集者が本をあらゆる手段を使って探し出してきてくれて(素晴らしい!)、できる限り取材前に読破。久しぶりに読み返す小説もあれば、ご紹介いただかなければ一生手にすることもなかったであろう本もあり、そしてかなり集中して読んだ本もあれば、実は未だ読み終えていないものも少しだけあるのですが、至福の時間でした。もちろん、桜庭一樹さんの著書や山崎ナオコーラさんの著書で、読んでいなかったものも最新刊もこの機に是非と、読ませていただきました。結局、30冊近い書籍に目を通しました。

ARATAさんの取材は、ブックカフェと呼ばれるTHESE@西麻布で。


桜庭一樹さんにも山崎ナオコーラさんにも質問したいことはたくさんあり、とはいえ、特集に関する1冊1冊の本に関する話がとにかく面白く、どちらも時間が正直足りませんでした。また、私はふだんはミュージシャンの取材が主なので、インタヴュー自体すごく新鮮に感じました。


桜庭さんが、時にはP!NKやアヴリル・ラヴィーンを聴きながら執筆されていたり、『オーランドー』を映画化するんだったら、自分だったらP!NKを主役にするかもしれない……といったことをエッセイに書かれていたので、執筆時にはどんな音楽をBGMにされているか訊いてみました。


実際P!NKは、桜庭さんの中で”男っぽく感じられる時と女っぽく感じられる時があるから、面白い”と感じられ、小説を書く時に、よく彼女の音楽をかけながら書いているそうです。具体的には『赤×ピンク』だったり、『ファミリーポートレイト』の第1部。第2部は土屋アンナさんの音楽だったそうです。
「日本語が歌に入ってくると気になってしまって。たとえば椎名林檎の歌だと日本語が耳に入ってくるけど、土屋アンナの歌は英語と日本語が混ざっていて、私は英語がわからないので気にならないんです」


逆に『私の男』の時は執筆時ではなく、書く前にその音楽を聴いてその音楽世界に浸り、それから音楽を止めて書いていたそう。その音楽とはYELLOW MONKEYの「聖なる海とサンシャイン」「球根」「Father」の3曲。
「特に『聖なる海とサンシャイン』は歌詞に海が出てきて、海の向こうに何か聖なるものがあるんだ、みたいな……。イメージを膨らませやすかったので。そこらへんはすごく聴いていましたね。吉井さんもわざわざ女装したり、女だったり男だったりするイメージがあるので、オーランドーとかもありかな、と思ったり」

懐かしくて読み返した本も。感じ方が学生の時とは全く違いました。


山崎ナオコーラさんは、直接音楽と関わるような話はありませんでしたが、高校生の時にスピッツの草野マサムネさんが『夢の宇宙誌』を雑誌で薦めていたのをきっかけに、澁澤龍彦作品に夢中になったエピソードを教えてくれました。あと今は、ジャズ・ミュージシャン、作詞&作曲家、文筆家ほか多才に活躍する菊地成孔さんの大ファンだそうで、そのせいかどうかわかりませんが、最新作の『あたしはビー玉』には、高校生がジャズを演奏するシーンが登場します。


今は思い出せないのですが、以前、日野啓三さんが「U2のアルバムを聴きながら書き上げた」と話していた小説があったように記憶しています。ビート・ジェネレーションは言わずもがな、音楽と小説はいろいろな場面で深く関わりを持っていますが、作家の脳裏に棲む音楽を聴きながら、その小説を読んでみるのも興味深いと思います。


とてもとても楽しい仕事だったのですが、一つ、某小説に登場する”バーサ”と”ばあさん”を聞き間違えて原稿に書いてしまうという失態を犯してしまいました(笑)。その話題の元となる著者が老人だったので、先入観でお話を聞いてしまったのですが、桜庭さん、絶対に文字校正で大爆笑していたでしょうね(赤面)。あっ、本誌では当然直っていますが、絶対にどの箇所かわかると思います。ほとんどといって原稿の直しがなかったのに、……残念!(苦笑)。


もうすぐ発売になるので、内容の濃い特集を楽しみにしていてくださいね。


*to be continued

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
X:@natsumiitoh

この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/series/music-sketch/figaro-1.html