attitude クリエイターの言葉

音楽から生まれた青春映画『WAVES/ウェイブス』。

インタビュー

曲と歌詞と人物描写と。虹色の感受性を持つ映画の創り手に聞く。

トレイ・エドワード・シュルツ|映画監督

アカデミー賞作品賞を受賞した『ムーンライト』(2016 年)や『ミッドサマー』(19年)など送り出してきた、気鋭の映画会社A24。その秘蔵っ子として注目されているのが、トレイ・エドワード・シュルツだ。SXSWやカンヌ国際映画祭で高く評価されたデビュー作『クリシャ』(14年)やホラー映画『イット・カムズ・アット・ナイト』(17年)に続く3作目『WAVES/ウェイブス』は、彼自身の10代の体験を反映させた、私的で思い入れの強い作品だという。

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いまだからこそ撮れた、10代の想いを映した作品。

「高校生が主人公の個人的な映画を撮ろうと思ったのは10年前。主人公と同じ高校生の頃だ。若者の視点で語られる物語に、観客にどっぷりと浸ってほしかった。でも実際には、全体像を把握する俯瞰的な視点が必要だ。そういう意味では、31歳という年齢だから撮れた青春映画だね」

順風満帆だった主人公の人生に訪れた突然の悲劇と、その妹が背負った十字架。暗く堕ちていく絶望感を描く前半と、再生と希望を描く後半。兄妹の物語はインフィニティの文字を描くように繋がり、波に浮かぶ木の葉のように頼りない人生の浮き沈みという普遍的なテーマを炙り出す。

「陰と陽のように正反対の要素からなるアイデアは気に入っている。別れたふたつの心がひとつになるように、兄と妹がふたりでひとつの個を成すという構成が閃いて興奮したよ。悲劇をどうやって乗り越えていくのか。その後には視野が広がり、癒やしと成長がある。若い女性と青年をジェンダー面で掘り下げることもエキサイティングだった。まさに、この映画の核心と言えるからね」

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脚本も手がける彼だが、本作は音楽ありきでストーリーを構築したという。フランク・オーシャン、アニマル・コレクティヴ、テーム・インパラといったいまを体現するミュージシャンから、エイミー・ワインハウス、ダイナ・ワシントンやグレン・ミラーなど時代を超えた歌い手まで、楽曲が〝もうひとつの台詞〟として登場人物たちの感情を代弁する。アラバマ・シェイクスの「サウンド・アンド・カラー」に象徴されるように、カラフルなレインボーカラーと音楽が作品を唯一無二なものにしている。

「多くは若い世代に人気の曲だけど、タイムレスな曲も取り入れた。これは家族の映画でもあるからね。グレン・ミラーの『ムーンライト・セレナーデ』は僕と僕の彼女の特別な曲なのだけど、後から祖父が好きだったことも知った。人や家族の繋がりもこの映画で追求したかったんだ」

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Trey Edward Shults/トレイ・エドワード・シュルツ
1988年、アメリカ・テキサス生まれ。テレンス・マリック監督作品にてインターン経験。監督デビュー作『クリシャ』(2014年)がSXSWの映画部門で審査員特別賞を受賞。『イット・カムズ・アット・ナイト』(17年)も成功を収めた。

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フロリダで暮らすタイラーは将来を嘱望されるレスリングのスター選手。厳格な父のもとで訓練していたが、肩を負傷して歯車が狂い始める。いっぽうで妹エミリーも孤独を深めていく。ケルヴィン・ハリソン・ジュニア、テイラー・ラッセル、ルーカス・ヘッジズなど、気鋭の俳優の競演も見どころ。
『WAVES /ウェイブス』は、7月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。

*「フィガロジャポン」2020年6月号より抜粋

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interview et texte : ATSUKO TATSUTA

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