元ナチス兵キーパーを演じたデヴィッド・クロスが語る。

インタビュー

世界を虜にした美少年だった彼は、しなやかな感性で分断のない未来を描く。

デヴィッド・クロス|俳優

『愛を読むひと』(2008年)で、世界的脚光を浴びたデヴィッド・クロス。その後も着実にキャリアを積んできた彼の新たな代表作といえるのが、今作『キーパー ある兵士の奇跡』だ。第二次世界大戦末期にイギリスの捕虜となったドイツ兵で、戦後もイギリスに留まって名門サッカーチーム「マンチェスター・シティFC」のキーパーとして成功を収めた、バート・トラウトマンの半生を基にした感動的なドラマである。

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1945年、イギリスの収容所でサッカーをしていたドイツ人のナチス兵士トラウトマンは、地元チームにスカウトされる。キーパーとして頭角を表し、監督の娘と結婚、「マンチェスター・シティFC」の入団テストに合格。しかし彼もチームもユダヤ人コミュニティからバッシングを受ける。『キーパー ある兵士の奇跡』は新宿ピカデリーほか全国にて公開中。

このラブストーリーが、教えてくれたこと。

「最初にオファーがきたのは12年か13年だったかな。僕はサッカーファンだし、サッカーをやっていたこともあるけど、トラウトマンの人生については知らなかった。でも話を聞いたら、信じられないようなストーリーで。フィクションで書こうと思っても書けないくらい。結局、撮影に入るまで5年ほどあったので、本や資料を読んだり身体をつくったり、十分な準備時間が取れたんだ」

ヒトラー率いるナチス軍へ入隊したトラウトマン。戦後のイギリス暮らしでもその過去が重くのしかかるが、彼をひとりの人間として愛して支えたのが、妻マーガレットだった。

「偏見を持たず、ひとりの個人として人間を見つめる。憎悪でなく、心をまっさらにして向き合う。これこそ人間として大切なこと。それをラブストーリーとして表現したのが、この映画の核だと思う」

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13年に、89歳にして逝去したトラウトマンに会うことは叶わなかったが、この映画はいまを生きる若い人たちにこそ観てほしいと語る。

「ドイツでも極右が台頭してきて、再び人々が分断する懸念もある。この物語をいま語ることは、そういう意味でも重要だ。人に優劣をつけたり、帰属意識が強くなりすぎたり。人間は誰だって、ひょんなことから偏見を持ってしまいかねない。だからこそ自分は大丈夫だろうか、と常に気をつけなければならないし、人類の一部という認識をもっていたい」

好青年に成長したデヴィッドにとっても、自由が利かない今年は自らを見直すいい時期となった。生まれ育ったハンブルクから、今後の映画界の行方を考えている。

「今年初頭に撮影していた映画は一時中断したけど、夏に再開してなんとか撮り終えた。距離をとってリハーサルして、本番のみマスクを外して演技してね。これまでにはないやり方も、慣れるしかないよね」

次作はNetflixのホラー映画だそう。コロナ禍もしなやかに受け止める若き感性に希望が感じられる。

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David Kross/デヴィッド・クロス
1990年、ドイツ生まれ。『愛を読むひと』(2008年)でケイト・ウィンスレット演じる年上の女性と恋に落ちる少年を演じる。スティーヴン・スピルバーグがオールスターキャストで映画化した『戦火の馬』(11年)にも出演。

*「フィガロジャポン」2020年12月号より抜粋

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interview et texte : ATSUKO TATSUTA

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