東京で自立して生きるのに必要なことって? 水原希子がいま、振り返って思うコト。

インタビュー

山内マリコ原作の映画「あのこは貴族」で、水原希子が演じたのは、地方から上京して自立しようともがく美紀。起業して、自分らしい生き方を見つけようと葛藤する姿に「自分自身と重なるところがすごくあった」と語る彼女が振り返る、東京で生きていくということ、新しい世界の広げ方とは。

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もっと自由に、やりたいことを追求していくためには、自分の責任を自分でちゃんと引き受けたほうがいいと思ったんです

――『あのこは貴族』では、「東京」という街が自分自身を見つめなおす重要なファクターになっています。水原さんにとって「東京」は、どんな街ですか。

私は神戸で育って、神戸なんてそんなに田舎じゃないよと言われますけど、周りに英語を話す子がいなかったので若干コンプレックスだったんです。東京に来たら、自分と同じようなハーフの子たちが普通に英語でコミュニケーションとってるし、普通に仕事してて、いい意味でそんなに特別じゃない、普通の人間になれる場所って感じがしました。田舎にいたら肩身が狭くなるような思いをしてる人やマニアックなことを追求している人、セクシャルマイノリティに限らず、自分はマイノリティだと感じてる人が居場所を見つけられるのが東京じゃないかなって思います。

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――水原さん演じる美紀は、夢を抱いて上京したものの、まだ自分の居場所は見つからず、だからといって地元に帰っても、もう居場所がないような居心地の悪さを感じています。

美紀に対しては共感することがありすぎて、役作りをするというより、いかにリラックスして現場に臨むかを考えました。私も上京した頃は東京に対する憧れがあって、無理して頑張ったり、挫折して壁にぶちあたったりしてきたし、ちょうどこの映画の話がきた時って、自分も起業して、自分の事務所を立ち上げたタイミングだったので、そういう意味でも、とても重なる部分がありましたね。

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金持ちの令息、幸一郎を演じるのは高良健吾。彼もそこはかとない気付きを宿した人物を繊細に演じている。

――幸一郎を巡って、婚約者の華子と対面する。東京生まれでお嬢様育ちの華子は、美紀とは境遇も生き方も違う。女性同士が対立するでもマウントを取り合うでもなく、どんな関係性を築けるのか。この映画がやろうとしてることは、すごくデリケートで新しいなと感じました。

そうですね。やっぱり、普通なら対決してもおかしくないふたりなので、難しいシーンでした。華子ともう一度再会するシーンにしても、言い方ひとつですごく嫌みっぽく聞こえてもおかしくないセリフだったりもするので、どうしたらみんながハッピーで少し背中を押される感じになれるのか、麦ちゃんや監督とみんなで悩みながら、結構何回もやりましたね。美紀も東京で苦労したり、傷ついてきたことがたくさんあって、いろんなことにもみくちゃにされながらも頑張ってきた子だと思ったので、傷ついてる華子に対して「生きていれば、そういうこともあるよ」って言ってあげられる器の広さを持ってる。たぶん、あの瞬間しかないんですよ。この先会うこともないふたりだけど、あの瞬間だけは人間と人間として話をしてる。繊細なニュアンスが大事なシーンだと思うので、いや、本当にもう、頑張りました(笑)。

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美紀の部屋で、華子はいままで知らなかった東京を見つける。

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――自分と生き方が異なる相手と出会った時、水原さん自身は、どうしていますか。

人を変えることはできないなというのは、常々思っていて、「わかってほしいな」と思っても、他人はどこまでいっても他人だったりする。たとえ家族であってもわからないことはあるから、どこかでケセラセラ、なるようになるさって生きてるところがあるかも。人は変えられないんだから、自分ができる範囲で、あとはもうしょうがない、流す。でも、いまはありがたいことにSNSもあるし、自分を表現できる場があるので、そういうところにアンテナを張って発信していくことができるじゃないですか。SNSって、言葉がわからなくても、写真を使った視覚言語で会話ができるから。私の場合、海外の仕事ってダイレクトメッセージがインスタに届いたり、そこから友人も増えていって、その繋がりで仕事をすることになったりするかたちがほとんどなんです。会社に所属することも、別に悪いこととは思わないし、守られていることが羨ましいと思うこともあるけど、もっと自由に、自分のやりたいことを追求していくためには、自分の責任を自分でちゃんと引き受けたほうがいい。それに賛同してくれた5人の女性たちと、いまは「Office Kiko」をやっています。

――美紀も、平田(山下リオ)と一緒に起業する道を選びます。自分の殻を破って、一歩踏み出すために必要なことって何だと思いますか。

経験あるのみ。十代の頃は、私も周りの人たちに自分の持っているものを引き出してもらったけど、そういう中でファッションからパワーをもらったり、音楽に勇気づけられたりしたことで、自分がやりたいのは、よりアーティスティックなことだって思うようになったので。あとはいろんなことにハテナを投げかけること。そして自分の気持ちに正直でいること。何か起きた時に自分が「えっ」と思ったら、感情的になりすぎず、それをしっかり大事に感じ取って、それが何なのか考えるってことがすごく大事だと思います。ときにはちょっと呑まれてもいい。一回きりの人生なんで、がっつり何でも全部経験して、いろんなものを見て、いろんな人に会って、好きなものを追求し続けることで、気付いていくことがたくさんあると思います。

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大学時代からの女友だちと美紀は起業する。

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――いま、欲しいものは何ですか。

ずっとひとり暮らししてたんですけど、いま母と暮らしていて、家を買ってあげたいです。コロナがあって、家族の時間の大切さをあらためて感じたというのもあるし、もっと芸術的なものを自由に追求していきたいとなるとお金大丈夫かなって感じもあるので、母に家を買ってあげて、私自身はより好きなことしかやらない方向にいけたらいいなと。夢のまた夢かもしれないですけど、目指すはそこですね。

――最後に門脇麦さんに、ひと言。

キノコ狩り、いいですね。ついでに、おいしい魚をごちそうしてください(笑)。

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1990 年生まれ、テキサス州ダラス出身。『ノルウェイの森』(2010年)にて女優デビュー。映画、TV、CM、モデルと幅広く活躍。代表作に『ヘルタースケルター』(12年) 、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN 』(15年)、『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(17年)など。語学力とインスタグラムで570 万人超えのフォロワーを持つ影響力が認められ、ディオール ビューティやコーチなどハイブランドのアンバサダーも務める。

『あのこは貴族』
東京生まれ、東京育ち、お金持ちの令嬢である華子(門脇麦)。富山生まれ、東京の名門大学に入学するも中退、東京で働き続ける美紀(水原希子)。幸一郎(高良健吾)を介してふたりは出会い、いままでとは違う人生に気付き始める……。
●監督・脚本/岨手由貴子 
●出演/門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオ 
●原作/山内マリコ『あのこは貴族』(集英社文庫) 
●2020年、日本映画 
●124分 
●配給/東京テアトル、バンダイナムコアーツ 
●2/26(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか、全国にて公開 https://anokohakizoku-movie.com 
©山内マリコ/集英社・『あのこは貴族』製作委員会

photos : DAISUKE YAMADA, stylisme : MASAKO OGURA, coiffure et maquillage : RIE SHIRAISHI, interview et texte : HARUMI TAKI

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