3監督と原作者が語る、映画『ゾッキ』ができるまで。

映画の過渡期に、齊藤工が『ゾッキ』に託したものは?

インタビュー

話題の映画『ゾッキ』を手がけた竹中直人、山田孝之、齊藤工の3監督、そして彼らを魅了した原作の生みの親である大橋裕之が、『ゾッキ』製作の裏側を語る。従来の枠にとらわれないキャスティングについて、そして世界がコロナ禍を経験したいま、この作品を送り出すことについて、齊藤工が思うこととは。

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いちばんときめいた作品に向き合おうと思った。

ある日、竹中直人さんから集合がかかって、行ってみたら山田孝之さん、Charaさん、安藤政信さん、脚本家の倉持裕さんがいて、そこで初めて『ゾッキ』を映画化したいと聞きました。驚きましたけど、この人たちと一緒に進む船なら降りる理由がないなと感じました。

竹中さんは「父」、山田さんは「Winter Love」を撮ると早々に決まったんですが、僕はもともと決めていたエピソードから最後の最後に「伴くん」に変えました。というのも「伴くん」は原作本『ゾッキA』の最初のエピソードで、“ゾッキ”ワールドにに出合う人への先制パンチのような作品なわけで、大橋イズムが詰まっている。だから当初、好きすぎて選べなかったんです。でも、やはり自分がいちばんときめいた作品に逃げずに向き合おうと思いました。

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齊藤が監督した「伴くん」より、伴くん役の九条ジョー(右)と親友・牧田役の森優作(左)。

キャスティングに関しては、プロデューサー陣から「この人はどうでしょう」と提案もされましたが、その方々がみんな国民的大スターの人たちで。竹中さん、山田さんのキャスティング構想はすでに聞いていたので、そのうえにその大スターが、となると、もう“アベンジャーズ”すぎるんじゃないかと。

伴くんを演じたコウテイの九条ジョーさんとは、自分が監督した映画『MANRIKI』の宣伝でテレビ出演した際に偶然出会いました。その時は髪型もまったく違ったけれど、余韻みたいなものがずっと後を引いて、すごく気になる人だったんです。その同じ週に、別の映画で森優作さんと共演して、作業員のような衣装の森さんを見て「牧田だ!」と思いました。

キャスティングは、背丈や佇まいも含めた、共演者との化学反応。コウテイって?という製作陣の反応もあったんですが、九条さんと森さんが伴と牧田だという見えない確証みたいなものが僕の中にあってトライしたくて。すでに松田龍平さんはじめ、名だたる方々の出演がほぼ決まっていたので、そのぶん、僕は自由をいただけた気がします。

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重要な役どころで出演する木竜麻生にも、齊藤は九条や森と出会った頃に共演の機会があり、オファーしたという。

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図らずもこの時代に合った作品。

いままではキャストとしても、製作側としても、とにかく公開初日は特に、満員の客席を夢見ていました。その点は、時代的に大きく変わりました。映画や演劇、ライブもそうですが、コロナで人が集まれない中、多様性を重視しなければ、どのメディアも生き残れない。いまは、そういうフェーズにきていることは確かだと思います。まさに映画の過渡期というか、分岐点を迎えている。

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本作の撮影舞台裏を収めたドキュメンタリー作品『裏ゾッキ』も公開を控えているという。乞うご期待。

このところ、アカデミー賞関連の作品を観ているんですが、昨年までなら、この時期にはまだ観られない作品ばかりだったんです。でも今年は配信が大半だから、もうほとんどの作品を観られる。たとえばスパイク・リーの『ザ・ファイブ・ブラッズ』というベトナム戦争後の物語を観ると、黒人問題もそうですが、いまなぜ、この物語を撮らなきゃいけないかという意思が明白で、しかもユーモアもあって、映画の強度がもうすさまじくて。『ノマドランド』も『ミナリ』も、昨年の『パラサイト』もしかり。

じゃあ日本映画は何をすればいいんだろうって考えると、背伸びした派手なアクションや、エンタメ武装とは違うと思う。世界基準を考えた時、僕は意外と大橋さんの持っているオフビートな、人ひとりの半径数メートルのドラマこそが、小津や成瀬とは言わないまでも、僕たちの“侘び寂び”に通じるものがあり、ひとつのストロングポイントなんじゃないかなと。

コロナ禍を描く社会派!と構えるんじゃなくて、『ゾッキ』が持っているフレキシブルな、寄せ集めみたいなものの強さ、ちょっとニッチなおもしろさだったり、切なさや温度みたいなものが、この時代に図らずも合っているんじゃないかと。もちろん作品の受け取り方は、観る人さまざまあっていいと思います。僕としては『ゾッキ』との出会いによって、今後のクリエイションや自分の立ち位置のようなものに影響を受けたので、このタイミングでこの映画に出合う方々にとっても、映画『ゾッキ』が何かの変化のきっかけになってほしいと願っているんです。

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長編初監督作『blank13』が国内外の映画祭で8冠獲得。18年、パリ・ルーヴル美術館のアート展にて白黒写真作品が銅賞受賞。19年も出品。18年よりHBO Asiaの国際プロジェクトにて2年連続日本代表監督を務め、多数の賞を受賞。アジアアカデミークリエイティブアワードではそのうちの1作『Life in a box』が最優秀監督賞を受賞。3月26日より出演作『騙し絵の牙』、4月2日より監督作『ゾッキ』が全国公開。主演作『シン・ウルトラマン』、出演作『CUBE』『狐狼の血LEVEL2』などの公開が控える。企画・制作を手がけたクレイアニメ『オイラはビル群』がWOWOWオンデマンドにて配信中。移動映画館「cinéma bird」の主宰や「MiniTheaterPark」の活動など。
 

『ゾッキ』
●監督/竹中直人、山田孝之、齊藤工
●脚本/倉持裕
●出演/吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー(コウテイ)、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、松井玲奈、渡辺佑太朗
/石坂浩二(特別出演) 松田龍平 國村隼
●原作/大橋裕之『ゾッキA』『ゾッキB』カンゼン刊
●2020年、日本映画
●113分
●配給/イオンエンターテイメント
●3/26(金)より愛知県先行公開、4/2(金)より全国にて公開
©️ 2020「ゾッキ」製作委員会
https://zokki.jp

photos : SHINTARO OKI (FORT), stylisme : YOPPY (juice), coiffure et maquillage : KAZUOMI (MAKEUPROOM), interview et texte : REIKO KUBO

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