3監督と原作者が語る、映画『ゾッキ』ができるまで。
原作者・大橋裕之も驚く、実写版『ゾッキ』のインパクト。
インタビュー
話題の映画『ゾッキ』を手がけた竹中直人、山田孝之、齊藤工の3監督と、彼らが魅了された原作の生みの親・大橋裕之が語る『ゾッキ』製作の裏側。大橋裕之が映画版を観た感慨は?
何度も観て、やっと冷静に観られるようになった。
今回の企画については、俳優で監督もやっている前野朋哉くんから「竹中直人さんが『ゾッキ』を気に入って、映画化したいと言ってました」とメッセージをもらったんです。その後、竹中さんにラジオのゲストとして呼んでいただき、初めてお会いしました。その時に竹中さんから、『ゾッキB』の「父」の、ガラスがサクサクと地面に刺さる場面を読んだ時に、これを映像化したいと思った、と聞きました。
最初は、内容がベラバラの短編集が1本の話として、どう繋がるのか不安がありました。脚本を読んでも、実際に動く映像を想像できなくて。最初に粗繋ぎの映像を観た時も、あ、ここが繋がったんだ、とか細部ばかりに目がいって、全体を観られなくて。何回も何回も観て、やっと冷静に観られるようになり、とてもいい感じに自然に繋げてもらえたんだな、倉持さんの脚本もすごいなと思いました。
登場人物については全員意外というか、豪華すぎて。みなさん素晴らしかったので、ひとりだけ挙げるのは申し訳ないと思いつつ、九条ジョーさんには驚かされました。原作を超えるというと、おこがましいですけど、すごいインパクトで。原作そのまんまというより、映画の伴くんのほうがすごかったです。
僕自身は、腰が重くて映画をたまにしか観ないんです。でもたまたま、いまおかしんじ監督、山下敦弘監督、松江哲明監督といった知り合いの監督の作品に出ることになり、たまにプロフィールに俳優と書かれたりすることがあって困惑します(笑)。偶然、企画をした漫画家のいましろたかしさんが製作資金を集めている時に、僕も2万円ぐらい出したりしていたら、キャストが決まらなくて、セリフは少ないから出てくれと。切羽詰まっているようだったのでやってみたら、実際セリフは多かったし、俳優の仕事への興味を感じるどころか、怖かったです。完成した映画を観たら、棒読みにならないように気をつけていたのに、思いっきり棒読みになっていて、あ〜あと(笑)。俳優のほかに、遊び程度にイベント用の短編を2、3本撮ったこともあります。この先も長編を撮ることはないと思いますが、『ゾッキ』の中で何か撮れと言われたら「小松製パン」とかを撮ってみたいですかね。
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ひとつのシーンから、物語が膨らんでいく。
映画からの影響というと、小さい頃から何度も見ていた『スタンド・バイ・ミー』(1986年)や『グーニーズ』(85年)のシーンごとの空気とかには影響を受けているかも。漫画だと、楳図かずお先生がとても好きです。話の途中に妙なものが出てきて、けっこう話が続くんですけど、結局あの妙なものはいったい何だったんだろうっていうおもしろさ、怖さが好きですね。
漫画を描く時は、自分の体験や人から聞いた話や、映画や漫画の1シーンから着想を得たり、いろいろですが、大体これと思った1シーンを膨らませたり、繋げたりというパターンが多いですね。『ゾッキ』冒頭の「伴くん」でいうなら、僕の高校の同級生が、実際に友達のお姉ちゃんのパンツを千円で買ったという話があって。いつか漫画のネタになるかなと温めていて、そこから膨らませて描いていったものだったと思います。
『ゾッキC 大橋裕之作品集』
映画『ゾッキ』の原作『ゾッキA』『ゾッキB』に続き、2021年3月に発売された作品集。メジャー商業誌デビュー作「世界最古の電子楽器 静子」(07年)や初めてのZINE『SN』に掲載された最新作「シーン1」(20年)など、中編・短編作品を選定して収録するほか、本書のために描きおろされた作品も掲載。
カンゼン刊 ¥1,540
©Hiroyuki Ohashi / KANZEN 2017
●監督/竹中直人、山田孝之、齊藤工
●脚本/倉持裕
●出演/吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、柳ゆり菜、南沙良、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー(コウテイ)、木竜麻生、倖田來未、竹原ピストル、潤浩、松井玲奈、渡辺佑太朗
/石坂浩二(特別出演) 松田龍平 國村隼
●原作/大橋裕之『ゾッキA』『ゾッキB』カンゼン刊
●2020年、日本映画
●113分
●配給/イオンエンターテイメント
●3/26(金)より愛知県先行公開、4/2(金)より全国にて公開
©️ 2020「ゾッキ」製作委員会
https://zokki.jp
photos : SHINTARO OKI (FORT), interview et texte : REIKO KUBO