「ゴシックファッションをトレンドで消費するな」ティム・バートンの新作の影響にコミュニティが反発。

Fashion 2024.09.11

ティム・バートン監督の待望の映画『ビートルジュース ビートルジュース』のプロモーションをきっかけに、今季のトレンドにゴシックスタイルが再登場しているが、本物のゴシックファンは不満なようだ。

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ファッションデザイナーのディラーラ・フィンディコグルーが、ティム・バートンの映画『ビートルジュース ビートルジュース』のプレミア上映に出席した。(ロンドン、2024年8月29日)photography: REX / Aflo

8月29日、ロンドンのシネワールド・レスター・スクエアで『ビートルジュース ビートルジュース』のプレミア上映にゲストが集まると、雰囲気はまるでハロウィンのパーティのようだった。フォトコールでは、ファッションデザイナーのディラーラ・フィンディコグルーが脂ぎった髪に、汚れたコルセットで引き締められたウエスト、そして半分裂けたスカートから脚を見せて登場した。一方、アーティストのバンビー・サグはマリリン・マンソン風のメイクを施し、女優のウィノナ・ライダーは白い肌を際立たせるスモーキーアイメイクと吸血鬼風のロングブラックドレスで魅了した。TikTokでは、このスタイルは「バートンコア」と呼ばれている。ティム・バートン監督のゴシックでファンタジックな世界観にインスパイアされたこの美学は、ソーシャルメディアで大人気となり、今秋冬の主要トレンドとなっている。しかし、すでに賛否が分かれている。

「中学の頃はモーティシア・アダムスって呼ばれたり、葬式に行くのかって聞かれたりしていたけれど、いまでは褒められるようになった」と語るのは、25歳のソーシャルメディアマネージャー、グウェンドリン。中学時代から、彼女のスタイルは全身黒で、ドクターマーチンや細かなストライプ模様、そしてティム・バートンの映画が彼女の趣味だという。「10年前、ティム・バートンのキャラクターのように服を着ることは、私たちを他と違う存在にしてくれた。それで私たちは他の人たちとは違っていることができた。でも、バートンコアでは、みんなと同じように見えることになってしまう」と語っている。

TikTokでも反応は同じだ。多くの元いじめられっ子たちは、自分たちのアウトサイダー的なクローゼットが一般の人々に取り入れられることに憤りを感じている。「ティム・バートンのファッションが流行する一方で、若いころにこの世界観が好きだと言っただけでいじめられたのに......」、「バートンコアのファッションが流行して、あなたたちが高校時代にいじめられていた時には気にも留めていなかったのに」、「『ビートルジュース ビートルジュース』のプロモーションがある前には、ティム・バートンが誰かさえ知らなかったくせに」と、複数のユーザーが絶望している。

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「ゴシックは流行ではない」

この問題については、コンテンツクリエーターのモルガン・ウィンチェスターがTikTokに投稿した動画で触れている。この動画は現在74,000回視聴されている。彼女にとって、そして多くのフォロワーのコメントによれば、ゴシックは単なる流行ではないという。「ティム・バートンは、私たちの文化を表現した数少ない監督のひとりだった」と彼女は語る。そして続けて、「ゴシックであることは、規範に反する精神状態であり、世界観や『マージナル』とされる生き方を意味します。以前嘲笑され、侮辱されていたサブカルチャーを一般化し、正常化することはすごいことではない」と述べている。この意見には、24歳の学生マリーも共感している。彼女はティム・バートンの影響を受けた非常に暗いスタイルを青春時代から持ち続けている。「流行に乗ることになってしまうのはフラストレーションがたまる。オルタナティブファッションの原則は、まさに流行に従わないことなのに。このスタイルがかなり軽いものになり、ほぼ一般化してしまうかもしれない」と述べた。

反抗的なウェンズデー・アダムス、奇妙なエドワード・シザーハンズ、死体の花嫁エミリー......ティム・バートンが創り出したキャラクターや再解釈したキャラクターをよく知っているなら、これらが流行の犠牲になる姿は非常に想像しづらいだろう。2019年に雑誌「アンチドート」が指摘したように、ゴシックファッションは第一に「強力な政治的感情の受け皿」であり、「新自由主義への力強い抵抗」だ。より一般的には、消費社会と同時に生まれたパンクと同じく、現代のカウンターカルチャー運動のひとつである。ここでの理念は、資本主義に対抗することであって、それに屈することではない。

とはいえ、バートンコアの人気が高まることで、「自分たちのスタイルの服を見つけるのが難しい私たちには、むしろプラスになるかもしれない」とモルガン・ウィンチェスターは認めている。実際、その通りになっている。ポップカルチャーのアクセサリーを専門に扱うブランド「Loungefly(ラウンジフライ)」は、ビートルジュース専用のコーナーを設けている。また、ニューヨーク・ファッションウィークでは、フィリップ・リムが漆黒のドレスやセットアップを多数提案していた。一方で、ファストファッションブランドH&Mは、「ウェンズデー」からインスパイアされたコレクションを発表し、大きなリボンや黒いドレス、そしてクレリックカラーをベースにしたラインを展開している最終的には、グウェンドリンが言うように、良い知らせなのかもしれない。「中学生の立場になって考えると、彼女たちは自分の個性を堂々と表現できるようになると思う。そして、トレンドが過ぎ去った後には、誰も彼女たちを批判できなくなると思う」

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text: Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi

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