Paris City Guide - Eat Restaurant

ガストロノミー界の新星、ドゥブル・アンパクト。第1章のおまかせは「オデュッセイア」。

2026.08.19

パリ9区に3月にオープンしたガストロノミーレストランのDouble impact(ドゥブル・アンパクト)。シェフのエティエンヌ・デュプイとマネージャーのミカエル・ロビノーはホテル学校でともに学んだ仲で、その二人が再会して生まれたのがこのレストランである。あまりレストランらしからぬ店名は、緊張とバランス、動きと静けさ、正確さと自由……といったコントラストや相補関係が仕事のベースにあることからだ。

左:ドゥヴル・アンパクトのイニシャルDI。 右:エティエンヌ(左)とミカエル。photography: Amélie Jallot

ここにはアラカルトメニューはなくテーマのあるおまかせメニューのみで、3~4ヶ月ごとに新しいチャプターを開いてゆく。最初のおまかせメニューを彼らは「プロローグ」と題した。自分たちの紹介ということで出身地のブルターニュにインスパイアされたメニューだ。そして、7月15日にいよいよ第1章のメニューが登場。これは、日本では9月に公開されるクリストファー・ノーラン監督の映画『The Odyssey(オデュッセイア)』がフランスで封切られた日でもある。このおまかせメニューは、自分たちの旅たちを主人公オデュッセウスの壮大なる旅に重ね合わせて、L’Odyssée(ローディセ)と命名したという。もっとも、これは1年前に決めたことで映画の影響ではない。二人はギリシャ、イタリア、トルコ、コルシカなど地中海沿岸地方を散歩し、これらの地からのインスピレーションから生まれたメニューである。

30席のこじんまりとしたレストラン。
おまかせメニューにワインのペアリングも可能。La Traverséeなら+55ユーロ、L’Escaleは+45ユーロ。photography: Amélie Jallot
左:コントラストが調和をなすレストラン。第1章のおまかせメニューはL’Odyssée。 右:発酵や熟成など時間をかけて素材を準備。photogrqphy: 左 Mariko Omura、右 Amélie Jallot

目的地はあるものの海図通りに進まず、波が導く寄り道が続く旅。「未知への招待状」と彼らが語るおまかせメニューは、95ユーロのLa traversée(航海)と75ユーロのL’escale(寄港)の2種。料理内容についてはメニューに記載がないどころか、料理がテーブルに運ばれた時もヒントがあるだけ。お皿を下げる時にひとつずつ説明される。素材の組み合わせ、調理法、層をなす味わいや食感……体験した口の中の嬉しい驚きがここで解明されるのだ。8サービスによる「航海」メニューの始まりは、3点同時に食卓に並ぶ。グリークサラダを詰めたブリオッシュ、発酵トマトや桃のエクストラクションをソースにしたトマト料理、それにセロリのヴィンガーが酸味を添えるフェンネルのエクストラクションがグラスに注がれて。これは航海に出る前の地上での最後の祝宴をイメージしている。4サービスめに登場するのは夜の海のように真っ黒な一皿。イカスミのソースと思ってしまうが、これはピーナッツがベースのソースで炭火焼したタコのあしの甘い旨味と上手くマッチしている。官能的な食感を添えるのは、丸くカットされた肉厚のピーマンだ。途中モロッコ風調理法の料理が含まれていたり、カダイフあり。締めくくりとなる8サービスめは、ギリシャの伝統的なお菓子であるオレンジケーキの「ポルトカロピタ」。オデュッセイアが故国の島に戻った気分を味わって航海が終わる。

ファーストサービスの3点。photography: Amélie Ballot
カリっと焼いた羊の臓物がナスのムースの下に。photography: Amélie Ballot
不思議な組み合わせのムール/フリット/タジン。モロッコのサフラン、なつめのヴィネガーなどが使われている。フリットの細いポテトは手でカット! photography: Amélie Ballot
たことポワヴロンとピーナッツ。photography: Amélie Ballot
5サービスめのアンコウ、セロリ、レンズ豆。このあと、チーズのサン・フェリシアンとさつまいものピューレが登場する。photography: Amélie Ballot
左:締めくくりとなるギリシャのお菓子ポルトカロピタの前にサービスされるのは、イチジクとカダイフというこれまたギリシャ的なデザートだ。 右:デザートに合わせて、とソムリエが勧めるのはギリシャのSamos。白ブドウの甘みが凝縮されたフレッシュな味わいが魅力。photographty: 左 Amélie Jollot、右 Mariko Omura

ドゥブル・アンパクトでは器もユニークだ。3~4ヶ月ごとに変わるメニューなので、どんな料理にも対応できるようにと、ひっくり返して使っても美しい器がパリの陶芸家によって造られた。これもダブル・インパクト!? 味覚の感動を呼び起こすシェフの創造性。次にはどんなおまかせメニューを生み出すのか。いまから楽しみである。

INFORMATION
Double impacte|ドゥブル・アンパクト

住所:

57, rue Claude Rodier 75009 Paris

 営:

19:00〜21:30(L.O.)

 休:

日、月

大村 真理子

madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター

東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。2006年から「フィガロジャポン」パリ支局長を務めた後、フリーエディター活動を再開。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。

PARIS/ FRANCE

  • --
  • CDG / ORY / BVA
Top to Paris