十人十色の恋愛・性愛、 私たちの愛の物語。 略奪婚から離婚、そして事実婚。 ふたりの関係は常にドラマが！

同性愛、離婚約、不倫愛……多様性が謡われる時代だからこそ、愛への考え方やパートナーとの在り方も人それぞれ。8組のさまざまな愛の物語を聞きました。結婚？離婚？事実婚？　今回は紆余曲折を経てパートナーとして復縁したおふたりのストーリー。

略奪婚から離婚、そして事実婚。
ふたりの関係は常にドラマが!

T〈医師・40歳〉& S〈43歳〉

責任あるポジションで日々の業務をこなす女性医師、Tさん。20代後半で一度結婚したが、相手の不倫が原因で後に離婚。
しかしその後同じ相手と復縁し、いまは同居を再開して3年ほど、いわゆる事実婚の関係を続けている。
「彼とは、出会ってもう15年くらい。ふたりの関係は紆余曲折を経てきたし、子どももいないので、あえて婚姻関係にこだわらず、ただ一緒に楽しく過ごしています」
仕事がきっかけで出会った3つ年上の男性S。仕事をそつなくこなす傍ら、性格は人懐こく、男女問わず人好きするタイプだ。一緒に楽しくお酒を飲む関係から始まり、Tさんは急速にSに惹かれていった。
「出会った当初、Sは結婚していました。でも私は、誰かのセカンド的な存在でいることに抵抗がなかった。ひとりだけに縛られずにすむし、後腐れもないから、むしろ気楽で。とはいえ、S のことがすごく好きだったので複数の関係は自然と清算されていきましたね」

そんな生活が続いたある日、Sが独断で離婚を決意。しばらく同棲した後、ふたりは籍を入れた。3年ほどの結婚生活は、「どこへ行くにも一緒で、ちょっと大丈夫かな？と思うほどに、毎日べったり。ずっとふたりの世界にいるような感じでした」と、振り返る。そんな生活をこれから先も続けていくのか不安に感じ始めたTさんは、以前よりも少し仕事を多めに入れ、Sとの距離を適度に保つ方法を探ることにした。

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「でも、そんな気を回したのが悪手でした。私が忙しくしている間に、S が職場の後輩の女性と関係を持ってし まっていたんです。浮気が判明したのも本当に偶然。酔って寝てしまったSを起こそうとしたら、ふと相手女性との濃密なやりとりが携帯画面から見えたんです」

不義が明るみに出てからも、なんとTさんは「恋人がいても構わない」と、Sの気持ちをすべて受け入れ、行動を制限しない二重生活を提案。
「最初は浮気に驚いたけど、幸せにしてもらったぶん、これからは私が幸せを返してあげる番だと考えるように。 新恋人への怒りや嫉妬は特になく、Sの気持ちが離れていったのはすべて私自身の落ち度だと捉えていました」  だが、徐々にその形に耐えられなくなっていった。

「気遣いと緊張の続く生活に私も彼もだんだん疲れてしまい、離婚を決意しました」
ところが、その後もなじみの飲食店で鉢合わせたり、 疑心暗鬼に陥った新恋人からクレームを受けたり……。結局、Sと新恋人は長く続かず、彼が自然とTさんのもとに戻ってくることに。ふたりは、また一緒に過ごすことが多くなったという。

「復縁しようとか、あらためて付き合おうといった話はしていません。でも私が引っ越しを考えていたタイミングで、時間的にも経済的にもベターだと判断し、また一緒に暮らし始めました。周囲に、結局ふたりは付き合っているの？と聞かれることも多いですが、お互いにそういうことでいいんじゃない？という温度感（笑）」 
最初の結婚生活に比べて、いまの生活は「余裕が出た感じ。ぎゅうぎゅうの状態で一緒にいたのも悪くなかったけれど、いろいろな困難を経ていまの状態に落ち着き、むしろ良かったのかなと思える」と話す。
以前の結婚の時と行動範囲は変わらないが、ふたりで過ごしなが らも周りとしっかり繋がっている感覚があるという。 

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事実婚という形に対し、周囲や家族の反応は？
「すべてを見守ってくれた友人たちは、本人がいいならそれでいいと言ってくれます。家族についても Sは両親と密な関係をとっていないし、私の親ももう諦めているかな（笑）。互いに経済面で自立しているのも大きいかもしれません。最初の結婚を振り返っても、さほどメリットを感じられなかったので、これからも互いがいちばん心地いい形で一緒にいたいと考えています」

＊「フィガロジャポン」2022年3月号より抜粋