朝はラン・クラブ、昼はコーヒー、夜はワイン。コペンハーゲンの新店「マウナ(Magna)」へ。

Lifestyle

ノーマ出身のシェフによる軽食が話題のワインバーや、オーストリアワインを専門に提供する店など、ワインを多様に楽しめるアドレスが増えているコペンハーゲンだが、このほど市内中心にオープンした、「マウナ(Magna)」は、誰にでも開かれたコミュニティ・ハブを目指す、新しいタイプのショップ兼ワインバーとして注目されている。

コペンハーゲンのショップ兼ワインバー「マウナ(Magna)」で、ワインと料理を楽しむ客たち

ジュエリー作家と仲間が築く、新しい店のかたち。

マウナ(Magna)

半地下にあるマウナの店内。鏡に螺旋形のロゴが描かれている
半地下の隠れ家風の店内。鏡に描いた螺旋はマウナのロゴで、中心から人の輪が広がっていく様子を表現している。photography: Sofia Sytnykova

オーナーは、ジュエリー作家のナターシャと、イタリア産オリーブオイルなどの輸入業を営むマウナス。ふたりは古くからの友人同士で、店を持つのが夢だった。

「物品販売だけでなく、友人や近隣の人たち、観光客などが気軽に立ち寄れて、和やかに過ごせる店を出そうと、意見が一致したのです」とマウナス。

ナターシャは「私は工芸作家などのクリエイター、マウナスは、ワインや食関連のネットワークがあります。そこで、小規模ビジネスやアーティストのためのプラットフォームとなる、ショップ・イン・ショップ兼バーにしました」と店が誕生した経緯を話す。

店内の家具は蚤の市で集めたものが中心で、壁を飾るアートは友人のアーティストの作品。気に入ったものはその場で購入できるのも、このお店のおもしろいところ。

リコッタチーズ、ストラッチャテッラチーズのサワードゥブレッド添え、2種のオリーブなどのアンティパスト
ナチュラルワインだけでなくビールにも合う、人気のアンティパスト。手前左から、リコッタチーズのプラムとオリーブオイル添え、85DKK(約2,000円)。ストラッチャテッラチーズのトマト、セージ添え、105DKK(約2,500円)。両者ともにローストしたサワードゥブレッドつき。オリーブは、ノチェラーラとチェリニョーラの2種。45DKK(約1,125円)。photography: Sofia Sytnykova
オリーブオイルやジュエリー、陶器、キャンドル、ハーブティが並ぶマウナの物販棚
奥の棚には、マウナスが扱うオリーブオイルやナターシャのジュエリー、陶芸作家のカップやオブジェ、アロマキャンドル、ハーブティーなどが並ぶ。個性的なお土産にも最適。photography: Sofia Sytnykova

ラン・クラブにラザニアの夕べ、
イベントで広がるコミュニティの輪。

ここでは独自のイベントも好評だ。例えば、ケータリング会社を立ち上げた友人による、「ラザニアとティラミスの夕べ」、週末の朝に市内5kmを走る「ラン・クラブ」、キャンドル作家によるワークショップなど。今後は、マッチングアプリに飽きた人たちのために、対面で行う「スピード・デーティング」も企画中だ。

「ラザニアとティラミスの夕べ」で店内とテラス席に集まった大勢の参加者
ラザニアとティラミスのイベントでは、店内に入りきれないほどの人が集まり、テラス席も満席となったそう。photography: Magnacph
土曜の朝、店の前に集合したマウナのラン・クラブの参加者たち
土曜の10時に店前に集まって市内を5km走る、マウナのラン・クラブのひとコマ。誰もが参加でき、ツーリストも大歓迎。ローカル視点でコペンの街を走れるから、旅をより豊かにしてくれる。photography: Magnacph

マウナが目指す、人と人が出会う場所。

マウナがあるのは、観光スポットにほど近い市内中心ながら、小さな商店が並ぶ、下町の雰囲気がある通りの一角。

「こういう店が珍しいのか、常連の方も増えてきています。観光客もふらっと立ち寄って、レアな地元情報を得るなど、想像以上に交流が広がっているようです」と、ナターシャは、うれしそうに語る。

ふたりによると、マウナはパリのカフェやイタリアのアペリチェーナなどの文化からヒントを得ている。それは、デンマークで親しい人たちとよい時間を過ごす表現、「ヒュッゲ」にも通じるからだという。

5km走ったあと、店でコーヒーと朝食を楽しむラン・クラブの参加者
5km走ったら、店に帰還。参加者には、コーヒーかティーが無料、パンなどの朝食は15%オフ。不定期開催なので、インスタの告知に注目してほしいそう。photography: Magnacph

「ここに来た人がよい時間を過ごせて、新たなネットワークを広げてほしい。もちろん、私たちも楽しみたいから、これからもおもしろいアイデアをイベントにしていきますよ」と、今後の抱負を語っていた。

コペンハーゲンで小規模コミュニティが盛んなのは、若い世代や多国籍の住民が占める、ノアブロ地区やヴェスターブロ界隈。その理由のひとつに、異なるバックグランドの人々のための公園や公共スポーツ施設が多いからだ。でも、それはコペンハーゲンのトレンドというわけではなく、例えば観光客や商業施設が多い市内中心部では人々の出会いは一過性だ。

そんな中、近頃はSNSでのつながりだけでなく、対面で異なる年代や業種の人たちと交流できる場を求める人もいるようだが、肩肘張らずに参加できるイベントに出合うのは難しい。

マウナのように、観光客もローカルも気軽に立ち寄れ、コーヒーやワインを飲むついでに、人との出会いもある、コミュニティ•ハブの役割も兼ねる店が、今後は増えていくかもしれない。

Magna(マウナ)
Studiestræde 16D, 1455 København K
営)11:00〜22:00(水、木)、11:00〜24:00(金、土)
https://www.magnacph.dk/
@magnacph

冨田 千恵子

コーディネーター兼ライター

コーディネーター兼ライター。デンマーク在住30年以上。デザイン、建築、アート、街並み観察、コーヒー、犬ネタが好きなジャンル。
photography: Kazue Ishiyama

●1デンマーク・クローネ=約24円(2026年10月現在)