東京発・2泊3日、海も温泉も熊野古道も! 南紀よくばりドライブ旅。【前編】
Travel 2024.11.23
和歌山への旅を考えているなら、リアルな旅の様子を記録した「和歌山リアルとりっぷ」をチェック。今回は、雑誌『フィガロジャポン』の元エディターが、東京から飛行機で和歌山県の南紀エリアへ。世界遺産登録20周年を迎えた熊野古道はもちろん、海も温泉も美食もパンダもクジラまでも! 2泊3日で南紀エリアのいいとこどりドライブ旅を敢行。事前に知っておきたい注意点やアクセス、見どころなどもまとめているので、素敵な旅を実現する参考にぜひ。
*記載のデータは2024年10月現在のものです。
まずは、和歌山を代表するリゾート・白浜へ!
熊野古道はもちろん、海も温泉も美食もパンダもクジラも楽しみたい! そんなよくばりな南紀の旅は、熊野白浜リゾート空港(南紀白浜空港)行きの飛行機に乗ることから始まります。
今回は朝一番の7時40分の便で羽田空港を出発し、8時55分に白浜へ。約1時間とあっという間に和歌山に到着です。
県内の移動手段は、効率よく回れるレンタカーで。空港を出るとすぐにカウンターがあるのでロスタイムなし! 南紀エリアをとことん味わいますよ!
1日目にめぐるのは、関西屈指の人気観光地・白浜。パンダで有名な「アドベンチャーワールド」や、歴史ある名湯、海を望む絶景、贅沢グルメも揃うリゾートです。
午前中は絶景を見に、海沿いをドライブ。車を走らせ10分もしないうちに、もうダイナミックな景色にありつけました!
ザッパーン! ダイナミックに波が打ちつけるのは、大人気の公衆浴場「崎の湯」です。
実は、和歌山県は関西で最も多い源泉数を誇り、さまざまな泉質の温泉が楽しめる温泉天国で、白浜だけでも15ヶ所もの源泉があるんです。
白浜温泉はその歴史も古く、有馬温泉、道後温泉とともに「日本三古湯」に数えられる温泉地。白浜温泉が世に知られるきっかけになったのがここ「崎の湯」だといわれていて、『日本書紀』や『万葉集』にも載っているとのこと!
なんと持統天皇をはじめとした皇族や、紀州藩主であり江戸幕府第8代将軍の徳川吉宗も入ったことがあるそう。同じ湯に浸かることができるとは......ありがたや。
ややとろみのある柔らかい湯は、目の前の絶景も相まって、ずっと浸かっていたくなる心地よさ。なんだか自分も歴史上の人物になったような、いい気分です。
崎の湯を出て海沿いの道を北に走るとすぐ、弓なりになった白砂のビーチが現れます。白浜の名の由来にもなった「白良浜(しららはま)」です。
ビーチに降り立つと、青と緑のグラデーションを織りなす海とサラサラの白い砂のコントラストが美しいこと! 秋の静かな浜辺は人も少なくて、ロマンチックな時間が流れます。
白良浜は、絶好のフォトスポットなので、カップルや女性をはじめ多くの観光客が嬉しそうに記念撮影をしていました。ぜひ、ビーチに降り立ってベストショットを狙ってください。
夏にはたくさんの方が海水浴に訪れ、一面にパラソルが咲き乱れるとのこと。白良浜の海開きは5月3日と本州で一番早く、ちょっと冷たいけど気持ちいい初泳ぎも楽しめます。
白良浜からさらに海沿いの道を北へ走ると、白浜のシンボルにもなっている「円月島」が見えてきます。約6,600万年前~163万年前の礫岩(れきがん)でできた島で、真ん中には波の浸食で削られてできた穴がぽっかり空いています。
写真だとかわいい感じに見えたのですが、実物はドーンとかなりダイナミック! 横幅は130mもあるのだそう。シンメトリーな自然の造形美はインパクト大です。
昼間に見る円月島も見応えありですが、夕陽百選にも選ばれている夕日の名所でもあるんです。春分の日や秋分の日前後は、太陽がこの穴にぴったり収まるように沈むのだそう。その確率、1年で20日ほどだとか。見てみたい!
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白浜は、「南紀熊野ジオパーク」の一部なんです!
崎の湯、白良浜、円月島......海沿いの景観に「あれ? なんだかスケールが違う?」と思った人も多いはず。実は、白浜は広大な「南紀熊野ジオパーク」の一部なんです。
ジオパークを直訳すると「大地の公園」という意味。地球科学から見て貴重な自然環境の中、歴史、文化、動植物の生態系、食文化などが体験できる場所のことです。
白浜を含む南紀エリアでは、約1,400万年前に起きた巨大なカルデラ噴火によって、世界的にも価値のある独特の地形や地質が生み出されました。
そこに温暖湿潤な気候、近くを流れる黒潮の影響などが重なり、多種多様な動植物が生息、滝・巨石・大木などをご神体とする自然信仰が生まれ、独自の文化や豊かな食文化をもたらしています。
現在日本には、47の「日本ジオパーク」があるのですが、そのひとつである南紀熊野ジオパークの地質遺産へ、白浜では車で数分の移動で気軽にまわることができるのです。
たとえば、「千畳敷」は、白色の砂岩が何層もの階段状の景観をつくり出している場所。「三段壁」は高さ50mに及ぶ断崖絶壁で、サスペンスドラマの定番ロケ地にもなっているスリリングな光景が広がります。
三段壁の崖下には波の浸食でできた「三段壁洞窟」があり、平安時代の源平合戦で源氏に加勢した熊野水軍が船を隠したという伝説の場所を間近で見ることができます。洞窟の岩壁に激しく砕ける波を見ると、熊野水軍のもつ操船技術のすごさが想像できますよ。
時間があれば、ぜひまわってみてください。
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ランチは、和歌山ならではの梅づくし!
白浜には、おいしいランチスポットやくつろげるカフェが点在していますが、今回は、午後から訪れる「アドベンチャーワールド」にほど近い「福梅本舗」へ。店先に出ていたメニューの看板があまりに魅力的で、吸い込まれるように店内に入りました。
和歌山県といえば紀州南高梅が名物。福梅本舗は、契約農家から仕入れるこだわりの梅を丁寧に仕込んだ梅干しの専門店なのですが、2024年にカフェスペースをオープン。
メニューを見ると、「梅ガパオライス」「梅とジンジャーのチキンカレー」......梅干しや梅製品を使った食事やスイーツなど、和歌山ならではのメニューが気合いたっぷりにラインナップされているではありませんか!
白を基調にした気持ちのいいカフェに通され、うんうん迷いましたが、人気No.1だという「梅づくしの福梅ごはんセット」をいただくことにしました。
運ばれてきたプレートは、そのビジュアルだけでもう100点満点です。店名の「福」にちなんだ「29」から、29種類の食材を使っているとのこと。さらに驚くのが、すべての料理で塩を使わず、梅干しや梅シロップなど梅製品と最低限の調味料で味付けしている!?
爽やかな酸味が利いた「梅チキンハム」など、梅の風味がはっきり感じられる品もあれば、「梅昆布だし巻きたまご」のようにほんのり梅の後味が残るものもあって、バラエティ豊かな味わい。「うめ〜グラタン」は、味付けが梅干しのみとは思えない旨味が広がります。
8種類から選べる梅干しもつくのですが、粒が大きい! 一番人気の「まろやか梅」を頬張ると、柔らかな皮の下にジューシーな梅肉がたっぷり。酸味と甘味が調和した、名前の通りのまろやかさでした。
食後はショッピングタイムへ。店内には、パッケージのかわいい8種類の梅干しが並んでいて、すべてが試食可能。塩分控えめで甘味が強いものから、昔ながらのしょっぱい梅干しまで、どれもそれぞれおいしくて迷うこと必至。
甘めかしょっぱめ、それぞれ異なる4種類の梅干しが少しずつ入っていていいとこ取りができる「お試しセット」を発見したのでこちらを購入。
ほかにも1粒ずつ個別包装した最高級梅干しや、梅シロップ、梅ジャムなど、お土産にぴったりのアイテムがたくさんありました。
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アドベンチャーワールドは動物たちとのふれあい天国!
いよいよ午後のビッグイベント、アドベンチャーワールドへ!
アドベンチャーワールドといえば、日本一多いジャイアントパンダファミリーが暮らしていて、現在は4頭のパンダと出会える、和歌山観光の超定番スポット。ただの動物園でしょ、とスキップしようと思っているなら大間違いです。
動物園、水族館、遊園地が一体となったテーマパークになっていて、その広さなんと東京ドーム17個分!
緑あふれる広大な敷地では、約120種類1,600頭もの動物に出会えるだけでなく、ふれあい三昧の時間が過ごせる、まさに動物天国なのです!
エントランスドームに入るや否や、噴水の水面に目線を下げると、ペンギンがスイスイ泳いでいるではないですか! ここって、お土産屋さんがある場所だよね......と驚きを隠せません。さらに建物の一角には、なんとレッサーパンダのいるスペースも。その距離近し!
ドームを抜けると、まず目に入るのは、壁に向かってたたずむアジアゾウの「おしり」。壁の反対側にまわると......穴から鼻を出して、ゲストからおやつをもらっていました!
こんなふうに、園内では動物が次々に登場してきて、ついつい足がとまって前に進めず、嬉しい悲鳴。
アドベンチャーワールドは、希少動物であるジャイアントパンダを絶滅の危機から守るため、中国と共同で繁殖研究を行っています。1994年に中国から2頭のパンダが来園したのを最初に、これまで17頭の繁殖に成功しました。現在は、お母さんパンダと娘3頭の計4頭が暮らしています。
ジャイアントパンダのいる「PANDA LOVE」に着くと、娘の結浜(ゆいひん)と楓浜(ふうひん)がいました。残念ながらお昼寝中でしたが、ゴロンと寝そべっている姿もかわいい〜!
ちなみに、パンダの行動は食べるか寝るかどちらかだそう。その理由は、一般的な草食動物より腸が短く消化率が低いため、大量に食べる必要があるから。省エネのために寝て過ごす時間が多いのだそう。
お母さんの良浜(らうひん)ともう1頭の娘・彩浜(さいひん)はブリーディングセンターにいるというのでそちらへ移動。パンダは午前中のほうが活発で、午後は寝ていることが多いそうですが、良浜が起きていました!
ひたすら竹をはむはむしています。足をデーンと広げておじさん化しているところがまたかわいい。
園内はいたるところ、そんなかわいいパンダだらけ。メリーゴーランドもパンダ、レンタルベビーカーもベンチもパンダ、レストランやカフェではよりどりみどりのパンダメニューが待っています。
ちなみに、パンダは1日15〜20kgもの竹を食べるのですが、食べ残しも多いそう。そこでパンダに関わる竹を有効資源としてアップサイクルするプロジェクトが立ち上がり、竹5,000本を使用したパンダバンブーアートが作られました。大きな入口から中に入ることもできます。
続いて向かったのは、草食動物が暮らす「サファリワールド」。このエリアでは、歩きはもちろん、自転車、カート、約25分で一周する専用車など、好きなスタイルでまわれるのですが、あまりの広さから、今回は有料のカートをレンタルすることにしました。
ここだけでなく園内のあちこちに、予約制または先着順でフィーディング(餌やり)体験ができるのですが、サファリワールドの「サファリWOW!ツアー」は特に人気で効率的にまわれると聞いたので、事前予約をしておきました。
アフリカゾウ、アミメキリン、シロサイ、ムフロン、ニホンジカ、ヒマラヤタール、アクシスジカへの餌が入ったバケツを受け取るところからツアーはスタート。
餌の時間が決まっている動物はその時刻に、いつでも餌をあげられる動物のところへは合間に立ち寄っていきます。
「動物によって食べ方が違うのも見てほしいですね」とスタッフの方。確かに!
ゾウは鼻を伸ばしてバナナを吸い込み、キリンは長い舌で草の束を巻き込み、サイは口を開けて草の塊をパクリ。こんなふうに食べるのか〜、と3種3様の食べ方にテンションがあがります。
直接手から餌をあげられる動物たちとのふれあいも至福の時です。ペロペロ手を舐めてくれたり、はむはむする唇の温かさが、あぁ心地よい。
「サファリWOW!ツアー」には含まれていませんが、アジアゾウ、カバ、イルカへのフィーディングも人気でおすすめです。ぜひチェックしてみてください。
日本一との呼び声も高い「マリンワールド」でのイルカショーは必見です。その名もマリンライブ「Smiles」。イルカとトレーナーとの絆がテーマで、息がぴったりのパフォーマンスは圧巻!
トレーナーがイルカに乗ってすいすいサーフィンしたり、水中からイルカの鼻先に突き上げられて現れたり、3人と3頭でアーティスティックスイミングのような美しいフォーメーションを披露したり。
ショーの後半には10頭以上のイルカたちが登場して、大迫力のジャンプや愛嬌たっぷりの仕草で会場を沸かせてくれました。
ということで、あっという間に時間は過ぎて、もう閉園時間の17時。最後にエントランスドームでお土産チェックを忘れずに。地ビール「ナギサビール」とのコラボボトルがラベルもかわいくておすすめです。
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ホテルでは、白良浜ビューの温泉タイムを満喫
本日のステイ先は「ホテル三楽荘」。選んだ理由は、全室白良浜のオーシャンビューだから!
今回は、8階の温泉露天風呂付き和室を予約したのですが、これが大正解。シンプルモダンな明るい部屋は居心地がよく、露天風呂は源泉かけ流しの上、カランからも温泉が! 白良浜を眺めながらゆったり温泉に浸かれるとは、なんとも贅沢な時間です。
ちなみに、三楽荘では、源泉かけ流しの露天風呂付き客室のほかに、マイクロバブルの湯船が女性に大人気のミラバス付き客室、海ビューのお風呂はないけれどよりリーズナブルに泊まれる客室など、さまざまな部屋タイプがあるので、予算と気分にあわせた選択が可能です。
もちろん温泉は大浴場でも楽しめます。白浜温泉の宿の中でも珍しいという、泉質の異なる2種類の源泉が引かれています。
ひとつは、露天風呂付き客室にも引かれている「藤の湯」で、こちらはクレンジング効果が期待できる"美肌の湯"とのこと。もうひとつは「衝幹(つくもと)の湯」。食塩を多く含む"温まりの湯"といわれ、湯冷めしにくいのだそう。
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せっかく白浜に来たのなら、幻の「天然本クエ」を食べなぁよ
白浜といえば、「クエ」料理が有名。クエは、大きいものでは体長1m以上にも達する大型魚で、漁獲量がとても少ないため"幻の魚"と呼ばれています。
夕食は、地元でも名店として知られる「風車」を予約。貴重な「天然本クエ」のフルコースが味わえるお店です。
ちょうどこの日、水揚げされたばかりのものがあるとのこと、お願いして特別に見せてもらいました。お、大きい!
この道数十年のご主人いわく、「見た目はグロテスクですが、本当においしいですよ。肩が張ってお腹がふっくらしているのが、旨味が強いんです」。
風車では、厳選して仕入れるのはもちろん、締めてから3日くらい熟成させて旨味を凝縮させているのだそう。天然本クエは甘くしっとりした繊細な味わいとのことで、楽しみです。
今晩は、一番人気の「天然本クエ鍋フルコース」をセレクト。
スタートは刺身から。外見からは想像できない淡いピンクを帯びた美しい白身で、コリコリした食感と、ほんのり甘い上品な味わいに口元が緩みます。
続いて、脂の乗った身がしっとりジューシーな塩焼き、外カリ中フワでビールが進む唐揚げ、身と皮の間のゼラチン質がプルプルでコラーゲンたっぷりのあら煮と続きます。
そして今晩の主役、野菜とともに煮るクエ鍋は、ぷりぷりした食感もさることながら、淡白なのに旨味が後を引く未体験の味わい。締めはすべての旨味を吸った雑炊です!
ほんの数分の移動で、絶景からパンダまで、めくるめく体験が連続して味わえる白浜。大満喫したけれど、明日は熊野古道でどんな体験が待っているのか? 楽しみです!