湯谷温泉辺りは、どこか’懐かしい’思いのする環境にあります。穏やかな山並み、隠れ名産地である茶畑、自然豊かな渓谷。さらに小さな鉄道の無人駅など、奥ゆかしい日本の美に包まれた旅館「はづ合掌」の周辺には、幸運にも昔懐かしい日本の原風景が残っているのです。
創業18年目になる「はづ合掌」ですが、旅館の建物が富山県から移築された江戸時代の民家だと聞いて驚きです。とても150年以上も歴史を辿ったとは思えない、むしろ新築の趣さえ感じさせるのは、御客も経営者も、双方共にこの宿を大切にしたいという心のこもりようが違うのでしょう。木造建物は手入れも大切ですが、こうして愛されることで、時を経ても美しく生きてくれるものなのですね。

合掌造りの家屋を移築したすばらしい伝統建築物。
1000坪という広い山間の敷地に建つ旅館ですが、客室はわずかに5室のみ。そしてそれぞれに部屋の内装は少しづつ違い、とても贅沢な造りになっています。とりわけ人気なのは、月見台に新設された露天風呂付の和室「花イカダ」でしょう。森に囲まれ、旅館のすぐ下を流れる渓流の音を聞きながら入る風呂は格別で、森林浴も一緒にできてしまいます。わずかな部屋数から目の届く木目細やかなもてなしが受けられ、まるでお風呂に浸かっているように心まで温かくなってきます。
客室のひとつ、和のツインベッドルーム。
半露天風呂付の特別室「花イカダ」。

玄関を入ったところ、ゆったりとしたロビースペース。
ロビーに掛けられている地元の染色家が染めたという藍染め布も印象的です。高い天井やがっちりと組まれた太い柱、その木造の深い焦げ茶色に日本家屋の素晴らしさを再認識させられます。ロビーの一角に置かれた暖炉の前に腰を下ろし、ウェルカム・コーヒーでもてなされるひとときにホッと肩の力が抜けていきます。

薬湯の湯として人気の半露天「檜風呂」。

森の中の露天風呂は、川のせせらぎ音に癒されながらゆったりと浸かる。

目の前で作る桶豆腐は香りも味も新鮮そのもの。
お風呂は2種類。ひとつは森の急斜面を降りたところの岩盤上に作られた枇杷の葉入り’薬湯露天風呂’。もう一方は半露天の’合掌檜風呂’で、どちらもプライベート感たっぷりの趣です。そして大切な食事ですが、四季折々の祭りごとを意識し、地産地消の’旬’の料理が提供されています。訪れる度に、料理にも凝った器にも、「はづ合掌」ならではの感性豊かなもてなしに感動させられています。(K.S)
はづ合掌
愛知県新城市豊岡字南平18-11-1631
☏ 0536-32-1211(はづ予約センター)
部屋数/5室
料金/(1泊2食1室2名利用の1名料金)29,400円~
平日限定日帰りプラン(2名より)昼食付1名料金12,600円~
http://www.hazu.co.jp/hazugassho/

Kyoko Sekine
ホテルジャーナリスト
スイス山岳地での観光局勤務、その後の仏語通訳を経て94年から現職。世界のホテルや旅館の「環境問題、癒し、もてなし」を主題に現場取材を貫く。スクープも多々、雑誌、新聞、ウェブを中心に連載多数。ホテルのコンサルタント、アドバイザーも。著書多数。
http://www.kyokosekine.com
この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/series/bon-voyage/post-147.html