一日5組限定のもてなし、
20周年を迎えた合掌造りの宿
「はづ合掌」湯谷温泉 奥三河／愛知県

湯谷温泉の「はづ合掌」は、2年と少し前にこの連載コラム22回目でご紹介させていただきました。その頃と少しも変わらぬ旅館は、日本の美しい田舎の風景が残るこの地域で愛され続け、この7月でめでたく20周年を祝いました。

（左）秋の紅葉に包まれた旅館（右）伝統の美しい建築物

手作りの祝賀会には、普段はたった5部屋の宿に滞在する限られたお客様で、とても静かな宿ですが、この日ばかりは100名以上の顧客や、近所の人、宿にお付き合いのある人々がお祝いに駆けつけ、日ごろから愛される宿の'信頼'の深さを、この目で見ることができました。

（左上）ロビーに飾られた野の花（左下）祝賀会で旬ならではの新鮮な鮎が振る舞われた（右）たった5室の宿が、この日ばかりは100名以上のゲストがお祝いに

「はづグループ」は、現在、全部で5軒の日本旅館を営んでいます。それぞれにタイプの違う5軒の内の4軒は、この「はづ合掌」からさほど離れていない湯谷温泉奥三河にあり、漢方薬膳懐石料理が人気の小さな旅館「はづ木」と、隣接して'価値観の宿'としてチェックアウト時にお客様が値段を決めるという「はづ別館」、渓流沿いの景観が美しく露天風呂も快適な「湯の風はづ」があり、そして5軒目となるのは、三河湾に面した海のリゾート「和のリゾートはづ」です。'20年'と一口にいうのは簡単ですが、世の中の流れ、多くの困難、自然災害など、厳しい環境に見舞われる日本に於いて、低迷して久しい経済状況の中で旅館業界を勝ち抜いてきた努力は、盛大に祝うだけの価値ある実績なのです。私も案内を頂き祝いに駆けつけました。

（左）森の中、山肌に造られた'薬湯の湯'（右）「はづグループ」経営の加藤家の人々

「はづグループ」を経営する加藤家は、代表取締役社長である主、現場を支えてきた美しい女将である妻、息子二人（長男、次男）と末娘（長女）の5人家族です。特に、社長にとって、「はづ合掌」はいろいろな思い入れのある旅館のようです。それは祝賀会の挨拶でも、様々な困難や喜びを乗り越えてきた20年の歴史が充分に感じられました。

「はづ合掌」の夕暮れ

旅館となっている合掌造りの瀟洒な建物は、富山県から移築された江戸時代の民家です。当時、150年以上もの歴史を経た建築物を移築したといいます。そして20年を経た今尚、その美しさが少しも変わらずにいるのは、社長や女将、スタッフの宿に対する愛情と手入れ、そして宿への思い入れの強い顧客達が宿を大切に思い、その心のこもりようが建物に繁栄しているとしか言えません。祝賀会の当日、宿には多くの著名な人々も見かけました。中でもパフォーマンスを披露してくれたのが、画家であるマヤ・マックスさん、異色の実力派歌手として知られたおおたか静流（しずる）さんで、みんなを深く感激させてくれました。

（左）マヤ・マックスさんのパフォーマンス（右）おおたか静流さんのライブ

（左）宿の周辺（右）「はづ合掌」の近くを流れる渓流

敷地が1000坪という山間地にある宿は、そのすぐ下を清流が流れ、幸運なことに付近は自然が昔のままに残されています。5室のみという贅沢な宿に滞在したお客様は、プライベート感に溢れた高級感の中で、丁寧にもてなされ、心に温もりを感じながら帰路へと向かうことになるのです。（K.S）