世界は愉快：クリスマス編 from NY クリスマスに観たい、ニューヨークが舞台の映画。

世界は愉快 2020.12.10

文／長谷川安曇（在ニューヨークライター）

寒い季節で外に出るのが億劫になるけど、クリスマス前のニューヨークは美しい。街中イルミネーションが飾られ、ふだんはしないけど、この季節になるとしたくなるものもたくさんある。アイススケートやホットチョコレート、オペラ鑑賞など。年末の浮き足立った感じもいいし、外が寒い分、暖かいレストランでする食事や、バーで飲むワインもおいしい。そんな素敵な気分になるのは、もちろん私だけではないはずで、（パンデミックでない時は）世界中からツーリストが訪れる季節でもある。そして、映画の舞台にもなる時期でも。ニューヨークのクリスマス、という設定だけで、もう十分「絵」になる。今回はニューヨークのクリスマスが舞台になった映画を紹介する。

ホリデー前のニューヨークを見事に映しているのが、『ゴッドファーザー』（1972年）。いうまでもなく、ギャング映画だが、人混みやショーウィンドーがきらびやか。主人公のマイケル・コルレオーネが恋人のケイと雪が散らつく中、クリスマスショッピングに行き、「で、君はクリスマスに何が欲しい？」と聞くと「あなただけ」と答えて、ふたりがキスをするシーンがある。そんな歯が浮くようなセリフも、クリスマス前のニューヨークではしっくりくるから不思議だ。この時、ふたりが出てくるベスト＆コー・デパートメント・ストアは、70年代に廃業している。
『ゴッドファーザー PART I』<デジタル・リストア版>　●監督／フランシス・フォード・コッポラ　●出演／マーロン・ブランド、アル・パチーノ、ダイアン・キートン　●1972年、アメリカ映画　●本編177分　●Blu-ray￥2,075 DVD￥1,572 ●発売：NBCユニバーサル・エンターテイメント　TM & Copyright (C) 1972 Paramount Pictures. All Rights Reserved. Restoration Copyright (C) 2007 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM, (R) & Copyright (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ニューヨークのクリスマスのスポットとしていちばん有名な、ロックフェラーセンターのツリー。記念写真を撮る観光客で賑わう。

クリスマスの風物詩となっているロックフェラーセンターの大型ツリーが登場することで有名な映画といえば『ホーム・アローン2』（1992年）。ニューヨークのクリスマス映画の王道だ。マコーレー・カルキン演じる、少年ケビンが家族旅行の最中に、ひとり飛行機を乗り間違えて、ニューヨークに到着。ケビンはたったひとりで観光を始め、ニューヨークの観光名所が多々登場する。セントラルパークにプラザホテル……最後にお母さんと再会するシーンでは、ロックフェラーセンターのマジカルな雰囲気が見事に演出されている。しかもトランプ大統領もカメオ出演している！という、今年見ると、また違った意味で楽しめる映画だ。

最後はクリスマスのニューヨークが舞台だけど、実はニューヨークで撮影していない『アイズワイドシャット』（1999年）。懐かしのトム・クルーズとニコール・キッドマン元夫妻が主演する夫婦間のドラマを描いた映画。本作が遺作となった、巨匠スタンリー・キューブリックは、極度の飛行機きらいのためニューヨークに飛べず、すべて居住地であったイギリスで撮影している。そのせいか、彼が作り出したクリスマス前のニューヨークはどこか違和感が漂い、ある意味シュールで幻想的。トム・クルーズ演じるビルが道端でぶつかった青年らが英国訛りで、完璧主義で知られるキューブリックだが、ちょっと詰めが甘い？と感じたものだ。
『アイズワイドシャット』　●監督／スタンリー・キューブリック　●出演／トム・クルーズ、ニコール・キッドマン　●1999年、アメリカ映画　●本編159分　●Blu-ray￥2,619 DVD￥1,572 発売：ワーナー・ブラザースホームエンターテイメント　販売：NBC ユニバーサル・エンターテイメント　©2008 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.