歴史と未来が交差した夜、2027クルーズ・コレクション、ニューヨークで開催。
ウィメンズ アーティスティック・ディレクター、ニコラ・ジェスキエールが手掛けるルイ・ヴィトン 2027クルーズ・コレクションのランウェイショーが、2026年5月20日、ニューヨークで開催された。

会場は、美術館が建ち並ぶミュージアム・マイルに位置するフリック・コレクション。ギルデッド・エイジ(19世紀末〜20世紀初頭のアメリカ黄金期)の鉄鋼王、ヘンリー・クレイ・フリックの邸宅を美術館として公開した同館には、フェルメールやレンブラントをはじめとする世界最高峰のヨーロッパ美術が並ぶ。長年にわたる大規模改修を経て昨年リオープンしたことでも注目を集めており、さらに実際のギャラリー空間を使用したファッションイベントは今回が初めて。会場が発表された瞬間から、大きな話題を呼んでいた。

長年ジェスキエールが熱望してきたという同館でのショー開催。その背景には、ルイ・ヴィトンによる新たな文化支援の取り組みがある。無料開館金曜日のサポートや展覧会協賛を含む同館とのパートナーシップが実を結び、文化的示唆に富んだ、美しいコラボレーションが実現した。
広大な邸宅に響き渡る力強いビートに乗せて、モデルたちは回廊に囲まれた中庭の噴水やギャラリー空間に登場。構築的なレザー、肩のラインをシャープに強調したテーラードジャケットなど、ディテールやフォルムを大胆に誇張したアイテムの数々は、過去へのノスタルジーと革新的な未来が共存する、ジェスキエールらしい“魅惑的な矛盾”に満ちていた。

全55ルックで構成されたコレクションには、60年代を思わせるポップな色使い、80年代のボディコンシャスなフォルム、90年代のグラフィカルな感性がジェスキエールらしい視点で再構築されている。さらに、1980年代ニューヨークのポップカルチャーを象徴するアーティスト、キース・ヘリングの作品が随所に散りばめられ、街そのものの強いアイデンティティを映し出すコレクションとなった。
冒頭を飾ったのは、ジーンズに赤いニットトップを合わせた、デザイナー自身が“アメリカンカジュアル”と位置づける象徴的なスタイル。その後も、60年代を想起させるスイートなカラーパレットやミニスカート、ワンピースが続く。
肩のラインを大胆に強調した80年代風のテーラードやレザージャケットが印象的に登場。

1980年代ニューヨークの街を象徴するグラフィティで知られるキース・ヘリングの作品をメイングラフィックとして採用。アートとファッションを横断するピースの数々は、次なるITアイテムの有力候補となりそうだ。
レザーのパイピングで構築されたアイテムは、クラシックなSF映画のような近未来感。ジオメトリックなブロッキングや黒の縁取りには、キース・ヘリング作品を想起させるグラフィカルな力強さが宿る。
当日フロントロウでショーを鑑賞したブランドアンバサダー、フィギュアスケーターのアリサ・リウを彷彿とさせるヘアスタイルも登場。中東や北アフリカの伝統帽を思わせる円筒形のフェズハットなど、ユニークなアクセサリーがスタイリングのスパイスとなった。
アーカイブから発見された1930年代のレザートランクには、キース・ヘリングのアートが施されていた。今回のコレクションの着想源となったそのトランクは、ファーストルックにも登場。チャイニーズテイクアウトのパッケージを思わせるものなど、ニューヨークらしいモチーフを取り入れたアイコニックなバッグが視線を集めた。
ヨーロッパの巨匠たちの絵画が静かに見守るパリから持ち込まれたのは、それとは対照的なニューヨークという都市が持つエネルギーと多様性だった。歴史と未来、クラフツマンシップとポップカルチャー、アップタウンとダウンタウン——相反する価値観を軽やかに共存させるジェスキエールの美学は、今回も鮮やかに更新された。
フロントロウにはゼンデイヤ、フィリックス、エマ・ストーン、アン・ハサウェイ、ケイト・ブランシェット、ジェニファー・コネリー、アリサ・リウら、日本からは髙石あかり、Awichと多彩なゲストが集結。ニューヨークを舞台に、アート、ファッション、カルチャーが交差した一夜は、単なるクルーズコレクションの発表を超え、いまラグジュアリーが目指す新たな文化的価値そのものを映し出していた。フリック・コレクションという歴史的空間に刻まれたこのショーは、ニコラ・ジェスキエールとルイ・ヴィトンが描く次なる時代の輪郭を、鮮やかに印象づけるものとなった。
ルイ・ヴィトン クライアントサービス
0120-00-1854(フリーダイヤル)
https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/homepage
- text : Junko Takaku
- photography: Louis Vuitton