「かわいそう」だけでは終わらない。『火垂るの墓』を観た子どもたちのレビューに学ぶこと。

Culture

Netflixでの配信がスタートしたスタジオジブリ作品『火垂るの墓』(1988年、高畑勲監督)。その作品レビューの書き方を学ぶ、小学生高学年向けのワークショップが開催されると知り、小学5年生の子どもに付き添い、参加をしてきました。

© 野坂昭如/新潮社, 1988

私にとって『火垂るの墓』は、子どもの頃に一度観たきりの作品。戦争によって親を失った兄・清太と妹・節子の悲しい物語という記憶はあるものの、思い浮かぶのは空襲や防災頭巾、ドロップ飴、蛍といった断片的なイメージばかりです。

「涙が止まらなくなるから、もう観られない」

そんな声を同世代の友人たちから聞くことも多く、私自身も長らく再鑑賞する機会がなかったため、改めてきちんと見てみたい! 子どもとともに戦争について語る良い機会だと思ったのです。

まずは作品と向き合うことからスタート

ワークショップは、約1時間半の鑑賞からスタート。その後、作品を観て感じたことを自由に書き出す「マインドマップ」の作成へと進みます。文章でも単語でも絵でも構いません。

・鑑賞後に感じたこと
・「なぜ?」と思ったこと
・心に残った場面やセリフ
・気になった登場人物

などを、『火垂るの墓』というタイトルを中心に据えながら、自由に広げていきます。マインドマップは、自分の頭の中にある情報や考えを可視化し、整理するための手法。まずは素直に浮かんだ言葉やイメージを書き出し、自分の感情や疑問を見える化していくのです。

真剣に作品を観る子どもたち。その手元にはお菓子やドリンクも用意され会場はまるで映画館さながらの雰囲気。

「なぜそう思ったの?」を深掘りする時間

マップが完成したら、今度は作品の「どこ」にフォーカスし、「何」を伝えたいのかを考える作業へ。4人1組のグループに分かれ、それぞれに子ども向けワークショップを手がけるfindits(ファインディッツ)のファシリーテーターがついて会話を広げていきます。子どもたちは自分が書き出したキーワードをもとに意見を交換しながら、「なぜそう思ったのか」を掘り下げていきました。

じっくり考え、書き、話し合う。

最初は漠然としていた感想が、ディスカッションを重ねるうちに少しずつ輪郭を帯びていきます。そして今度は逆に、たくさん広げた言葉の中から、自分が本当に伝えたいことだけを残していく作業へ。必要のないキーワードに×印をつけながら、レビューの焦点を絞り込んでいきます。

マインドマップが育てる「考える力」と「伝える力」

感想文というと、作品を読んだり観たりした後、そのまま原稿用紙に向かって書き始める子どもが多いのではないでしょうか? 私自身の子どもの頃はそうでした。ですが、このマインドマップという手法を使うことで、感情だけでなく思考そのものを整理できので「なるほど、わかりやすい!」と納得。

自分で考え、広げ、まとめ、そして相手に伝わる形へ組み立てていく。そのプロセスを体験することで、「考える力」や「表現する力」が自然と鍛えられていくのです。この思考の習慣が身についたら、この先の勉強や仕事をする時にもきっと役立つだろうな、と感じました。

映画メディアFan’s Voiceと子どもたちの表現力を育むワークショップを手掛けるfindits(ファインディッツ)が主催。

また印象的だったのは、ファシリテーターの存在です。

子どもたちの言葉を受け止め、一人ひとりに寄り添いながら、「それはどうして?」「どんな気持ちだったの?」と問いかけていきます。子ども自身も気づいていなかった思いや視点を丁寧に引き出し、言葉へと導いてくれていました。

子どもたちの言葉に、大人も学ばされる

最後は、一枚のカードにレビューをまとめる作業。長時間のプログラムにもかかわらず、子どもたちは集中力を切らすことなく真剣な表情で取り組んでいました。その姿に大きな成長を感じます。

「かわいそうだった」

ひと言で終わってしまいそうな感想も、問いを重ねることで誰かに伝わるレビューへと変わっていく。そして書き上げた自分の感想を全員の前で発表し、それぞれ自分とは異なる視点や考え方に触れることで新しい発見も生まれていきます。 

「幸せが当たり前ではない」
「大切な家族や家が奪われる」
「なぜ“戦争”があるのか」
「理不尽」

そんな思いを披露される中で、私自身も子どもたちのレビューからたくさんの気づきをもらうことができました。純粋な感性や率直な言葉に触れ、大人になったいまだからこそ学べることがあったように思います。

ワークショップを終えてみんなで記念写真。

夏休みの感想文にも役立つヒント

今回のイベントは、『火垂るの墓』という作品と改めて向き合うきっかけになっただけでなく、子どもとともに「考えること」と「伝えること」の大切さを実感する貴重な時間になりました。夏休みになると、多くの子どもたちが読書感想文に取り組みます。本や映画の内容をただ要約するのではなく、自分が何を感じ、なぜそう思ったのかを言語化し、表現することは簡単ではありません。今回学んだマインドマップの手法は、書くことはもちろん、自分の考えを整理し人に伝える力を育むための大きなヒントになるはず。始まったばかりの夏休み、親子で一緒に映画や本を読んで感想文を書いてみてはいかがでしょう?

『火垂るの墓』
監督・脚本:高畑勲
制作:スタジオジブリ
1988/日本/日本語/88分
https://www.netflix.com/jp/title/557010

フィガロジャポンエディター。2年ほど前から始めた金継ぎに夢中。ヒビ、割れ、欠けがはいったうつわがないかとつい探してしまう日々。