「私たちの世代は既成概念にとらわれない」高級レストランからストリートフードまで自由に行き来する、ミシュラン一つ星シェフ、モリー・サッコとは?
独創的で知的な料理を追求するモリー・サッコは、ストリートフードにもこだわりを持つシェフだ。自身のレストラン「モスゴ」では、ストリートフードを独自のスタイルで再解釈している。

▶︎仏TV番組「トップシェフ」の人気者、憧れのモリー・サッコに会いに行く。
パリのガストロノミーレストラン「モスケ」(1)で私たちを迎えてくれたモリー・サッコは、青い布で縁取りを施した白いジャケットを身にまとっていた。フランス3の番組「Cuisine ouverte:un chef sur la route」に出演するときに着ているものだ。サッコは、数週間にわたる改装工事を終えたばかりのレストランを、ちょうど再オープンしたところだ。2020年、M6の番組「Top Chef」第11シーズンへの出演をきっかけに、サッコは次々とプロジェクトを成功させてきた。新型コロナによる2回目のロックダウン直前に「モスケ」をオープンし、すぐにミシュランの星を獲得した。その後、営業を余儀なく休止していた期間には、フライドチキンを使ったバーガーの販売をスタートさせ、これが「モスゴ」(2)へと発展した(パリに2店舗あり、ひとつはラファイエット・グルメ、もうひとつは14区)。さらに2021年からは、毎週放送されるテレビ番組の司会も務めている……。30代のこのシェフには、ひと息つく暇もなかった。
(1) Mosuke(モスケ)
11, rue Raymond-Losserand, 75014 Paris
@mosuke.restaurant
(2) MoSugo(モスゴ)
35, boulevard Haussmann, 75009 Paris
22, rue Raymond-Losserand, 75014 Paris
@mosugo
改装工事によるこの休業期間 (註・インタビューは2023年)を利用して、彼はひとつの夢をかなえた。それは、まだ訪れたことがなく、それでいて自身の料理に影響を与えている国、日本を旅することだった。しかも今回の旅の目的は……食べること!「美術館巡りは、また次に日本を訪れたときにしますよ」と彼は冗談めかして笑う。「今回は、とにかく食べられるものは何でも味わいたかった。非常に洗練された懐石料理から、ストリートフードまでね。それに、大阪にも行きました。大阪は、こうしたストリートフードを専門に扱う店が多いことで、とても有名な街です」なぜなら、モリー・サッコは、立ったまま、手で気軽に食べられるこうした料理に情熱を注いでいるからだ。高度に知的で緻密な彼の料理へのこだわりとも相反するものではない。その魅力を、彼は5つのテーマと6つの意外なレシピを通して、私たちにひもといてくれた。
柔軟な心
「柔軟な心、それこそが、私の料理の真髄です。『モスケ』では、フランス料理の技法という確固たる土台と私自身のアイデンティティという一貫した軸を保ちながら、旅の物語を分かち合いたいと考えています。私にインスピレーションを与えてくれる日本とアフリカ、このふたつの食文化に見られるスパイス使いやスモーキーな風味を通じて、私は自分自身を表現しているのです。この旅では、ある時はどちらか一方の土地の要素が強くなるかもしれませんし、全く別の場所にたどり着くことだってあるでしょう! だからこそ、訪れる方々には柔軟な心を持っていただきたいのです。目の前にある料理の30%しか理解できないかもしれません」
「それでも、残りの部分、つまり、これまでの感覚や常識が通用しなくなることを受け入れていただく必要があります。何よりも大切なのは、純粋にその料理が好きか、好きではないかということです。『モスゴ』で提供するストリートフードに対しても、私はまったく同じ姿勢で臨んでいます。私自身も同じ好奇心を持って取り組んでおり、ふたつの世界は互いに影響し合っているのです」
「たとえば『モスケ』では、ロブスターに日本のストリートフードの定番であるお好み焼きを合わせてお出ししています。お客様は驚かれますが、喜んでくださいます。この組み合わせなら、ロブスターの持つ芳醇で複雑な風味を損なうことなく、堅苦しさを取り払い、より親しみやすいものにすることができます。もちろん、この料理にはビスクのような要素も加えていますから、味わいの複雑さもしっかりと保たれています」
喜び
「私にとって、ストリートフードとは何よりも『喜び』であり、誰かと『分かち合う』ものです。高級料理が『知的な体験』、つまり頭で味わう料理であるのに対し、ストリートフードはそうしたものではありません。お腹が空いたときに、自然な気持ちで食べるもの。手軽で、誰もが親しめる存在です。それは私の人生の一部であり、私の大切な人たちの生活の一部でもあります」
「たとえば私の両親は、『モスケ』よりも『モスゴ』で食事をするほうを好むほどです! フランスでは、ストリートフードとファストフードを結びつけて考えがちですが、ほかの多くの国ではそうではありません。パンにファラフェルを挟んで食べれば、それだけで栄養バランスの取れた、ヘルシーで、おいしいベジタリアンの食事になります!ストリートフードにつきものと思われがちな、脂っこくて質が低いというイメージとはまったく違うのです。しかも、ストリートフードは屋内でも屋外でも、座っていても立ったままでも楽しめるものなのです……」
上質な食材
「素晴らしいストリートフードと、質の悪いストリートフードを分けるのは、食材です。丁寧に選び、旬のものを、できるだけ地元で採れたものを使えば、良い仕上がりになります。でも、それはどんな料理にも言えることです! 良い食材がすべてを変えるのです。たとえば、タロ。トウモロコシ粉を使ったバスク地方のクレープのような料理ですが、そこにアスパラガスのクリームとボッタルガを挟めば、サンドイッチに相当するものになりますが、そこに何かひと味、独創的で、とてもおいしいものが加わります。それでも、ナイフやフォークを使わず、何より罪悪感を抱くことなく味わえる一品です! 私にとって、ストリートフードはピクニックに相当します。もしかすると、もっと受け入れられやすくするには、その呼び名を変えるだけでいいのかもしれません……」
自由な感性
「私の世代は、既成概念にとらわれません。いまのシェフたちは、顧客と同じように、高級レストランからストリートフード、あるいはビストロへと、垣根なく行き来します。『モスゴ』で何を提供しているのかと聞かれたら、私はこう答えます。『自分がその時食べたいもの!』と。ハンバーガーにかぶりつくことは、洗練された食事を楽しむのと同じくらい、素晴らしい体験になり得ます。私にとって、美食体験はあくまで「例外」であるべきもの。つまり、日常から離れた特別なひとときであるべきなのです」
前進
「ストリートフードも大好きですが、ミシュランの星を獲得したこの店こそ、私が自分自身を真に表現できる場所です。『モスケ』をオープンした当初は、限られた予算で急ピッチの準備でした。壁を塗り直しただけで、すぐに営業を始めたのです。ですから、もっと自分らしさを反映した空間にしたいと考えていました」
「フリードマン&ヴェルサーチェが手がけた新しい内装は、居心地の良さを高めています。キッチンも拡張し、お客様だけでなく、スタッフにとっても快適な環境になりました。これは新たなステージの始まりです。私にはまだ伝えたいことがたくさんありますし、それを最高の環境で実現したいのです。今回の変化は『前進』、つまり、さらに良いものをつくりたいという思いにつながっています」
>>【10/21開催】ミシュラン1ツ星シェフのモリー・サッコ×銀座「鮨 門わき」! ヴーヴ・クリコが彩るスペシャルディナー参加者募集
ヴーヴ・クリコが最良の年、と見極めた時にしか造らないプレステージキュヴェ「ラ・グランダム ロゼ2018」のローンチを記念し、メゾンとも関係の深いモリー・サッコシェフが来日! 10月21日(水)19時より、日比谷パレスにてフィガロワインクラブ会員限定の特別ディナーが開催される。先着で20名様の参加を募集! 詳細はこちらの記事にて。

From madameFIGARO.fr
※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
- text: Vanessa Zocchetti (madame.lefigaro.fr)
- translation: Hanae Yamaguchi