二世俳優マイルズ・ロビンスが語る『ダニエル』の男性像。
インタビュー
初主演作『ダニエル』で注目されるハリウッドの若手注目株マイルズ・ロビンス。名優ティム・ロビンスとスーザン・サランドンの次男である彼だが、本作ではアーノルド・シュワルツェネッガーの長男パトリック・シュワルツェネッガーとの共演も話題だ。バンド活動などで何度も来日しているという彼は時折、片言の日本語まじりでオンラインインタビューに答えてくれた。
『ダニエル』で演じた主人公ルークの茶褐色の髪から一変、軽快な印象になっていたマイルズ・ロビンス。
演技こそが一生かけてやりたいものだとわかった。
──いまはLAにいらっしゃるとか?
そう、僕はニューヨークに住んでいるんだけど、ゲームにモーション・キャプチャーで出演するので、その撮影のために。まだ詳しくは話せないけどね。
──ゲームクリエイターの小島秀夫の作品にマッツ・ミケルセンが出演するなど、最近はスター俳優もゲームに登場しますよね!
僕もコジマの作品の大ファンなんだ。機会があれば僕も出演したいよ。彼の電話番号を知っていたら教えて(笑)。
マイルズ演じるルーク(左)の空想上の親友、ダニエルを演じるのはパトリック・シュワルツェネッガー(右)。
──ごめんさい、知らないんです。ところで日本で公開になる『ダニエル』はあなたの主演デビュー作ですよね。バックグラウンドを考えれば遅いデビューですね。
僕は、子どもの頃から映画が大好きだったけれど、自分に演技の才能があると思ったことはなかったんだ。高校に通っていた時は、ドキュメンタリーやオーディオ・ビデオインスタレーションを作ったり、製作の勉強をしたりはしたけれど、いちばんのめり込んでいたのは音楽だった。
でも、いろいろ興味のあるものには挑戦したいと思って演技もやってみたら、これこそ自分が一生仕事としてやっていきたいものだってわかったんだ。いまも音楽をやっているし、近々ビデオインスタレーションのエキシビションも開催する予定だけどね。新型コロナウイルス感染の状況が少しよくなってきて、ギャラリーが開けられるようになったらだけど。そもそもアートは仕事って感じじゃないけどね。
映画業界はとても好きだよ。撮影のセットでいろいろな人と働くのは楽しいし、いいチームだと感じられた時は最高だ。それから日本で放映されているボス コーヒーの新キャラクターにいつか選ばれたいと思っているんだ。トミー・リー・ジョーンズのようにね!
子どもの頃、ある事件をきっかけにダニエルを封印したルークだったが、鬱屈とした大学生生活を送っていたある日、ダニエルと再会する。
──『ダニエル』は、主人公ルークが“空想上の親友”のダニエルに極限まで追い込まれていく心理ホラーですよね。この作品を選んだ理由は?
まずオファーが来たということが第一(笑)。それに、ホラーというジャンルを使って重要なストーリーを語るいい機会だと思った。これは僕にとって初めてのシリアスな役だし、いろいろな意味で挑戦になると思った。ダークなテーマを扱っていることも新鮮だった。(アダム・エジプト・)モーティマー監督と話が合ったことも理由のひとつだね。彼はとてもスマートで、何がやりたいかよく把握している人。音楽もやっていて、いいパートナーシップが築けると思った。つまり自分自身のフィーリングを信じたんだ。
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ダニエルは若い男性が感じる、大人の男になることへの恐怖を体現している。
──ホラーというジャンルも好きなんですか?
ホラーは大好きだよ。いちばん好きなのは、日本映画の『HOUSE ハウス』(1977年/大林宣彦監督)。ちょっとファニーなところもいい。ホラー映画って、重要なテーマをメタファーとして語れるとてもいいジャンルだと思うんだ。『PERFECT BLUE』(98年/今敏監督)もパラノイア的なところが似ているかもしれないね。
ルークに寄り添い、背中を押してくれる親友ダニエルは、次第にルークの心身を侵食しはじめる……。
──ホラーはいろいろなメタファーが詰め込めるところがいいとのことでしたが、監督とは主題についてどのような話をしましたか?
破壊的な行動など、ダニエルが体現しているのは、多くの若い男性が感じる大人の男になることへの恐怖だと思う。それは通過儀礼のようなもの。ひとりの大人としてアイデンティティを模索するうえで、自分の中にあるフェミニニティやエネルギーを理解するのはとても大事なこと。僕が思うに、女性は大人への成長をうまくやってのける。けれど男性の場合は、男性社会から受ける男らしくあらねばならないというプレッシャーもあり、より葛藤を感じてしまうんだと思う。マチスモに対する反発というか。それも僕がこの作品に興味を持った部分なんだ。
──あなたにもそういう時期はありましたか?
みんな感じるんじゃないかな。親が期待するような人間にならなければならないとか、社会に認められるような大人にならなければいけないとか。うまくいっていないと感じれば暗くなるし、少し破壊的というか、自暴自棄になったりした。ルークに共感したのはそういう部分だよ。
──あなたの両親は有名な俳優なのでプレッシャーもあったかもしれませんが、受け継いだものも大きいですよね。
この人生そのものだね。とても楽しいよ。これ以上は望めないくらいにね。
パトリック・シュワルツェネッガーはエキセントリックで自信に満ちあふれた謎多き存在、ダニエルを好演。
──ダニエル役を演じたパトリック・シュワルツェネッガーもいわゆる有名俳優を親にもつ二世俳優です。彼とは気が合ったのでは?
彼はプロフェッショナルでハードワーカーだ。しかも心が広いし、優しい。彼との撮影はとっても楽しかったよ。彼はLAで僕は基本的にニューヨークに住んでいるので、いまはほとんど会うことはないんだけどね。でも、彼は素晴らしい人なので、また一緒に仕事をしたいと思っているよ。
──ありがとうございました。次は、実際にお目にかかれればうれしいです。
(日本語で)アリガトウゴザイマシタ! 日本に1年以上行っていないので、次はぜひ行きたいよ。それからヒデオ・コジマの電話番号がわかったら教えてね!
次に来日する時には、どんな作品でどんな表情を見せてくれるのか楽しみ!
1992年生まれ。父であるティム・ロビンス初監督、母スーザン・サランドン主演の『デッドマン・ウォーキング』(95年)で映画デビュー。初主演映画となる本作では、第52回シッチェス・カタロニア国際映画祭で男優賞を受賞。そのほかの出演作は『ブロッカーズ』『ハロウィン』(ともに2018年)、『クリスマスに降る雪は』(19年)、声の出演をしたアニメ作品『フィアレス ~スーパー・ベイビーズに立ち向かえ!~』(20年)など。テレビドラマシリーズ「X-ファイル」(93年~18年)にも出演している。
●監督・脚本/アダム・エジプト・モーティマー
●出演/マイルズ・ロビンス、パトリック・シュワルツェネッガー、サッシャ・レイン、ハンナ・マークスほか
●2019年、アメリカ映画
●配給/フラッグ
●2月5日より、新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイント、グランドシネマサンシャインほか全国にて公開
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interview et texte : ATSUKO TATSUTA