片岡礼子と齊藤工、届けること・伝えることへの想いを込めたクレイアニメ。

Culture 2021.01.14

フィガロジャポン本誌とmadameFIGARO.jpに、俳優・映画監督の齊藤工が撮影したモノクロポートレートで綴る「齊藤工 活動寫眞館」という連載がある。齊藤がインスパイアされ、強く心惹かれる人物の佇まいや表情をカメラにおさめる。フィガロジャポン本誌では写真の力を強調して、ほぼ文字では何も説明しない。その現場でどんな化学反応があったか、齊藤が被写体となった人物に対してどんな想いを抱いてきたかは、madameFIGARO.jpで本誌掲載のアザーカットとともに語るという構成だ。

2017年にスタートした連載「活動寫眞館」の、第13回に登場したのは女優・片岡礼子。18年6月初旬、紫陽花がきれいに咲く季節に、東京・上目黒 氷川神社にて撮影は行われた。齊藤はもともと「活動寫眞館」の撮影は、被写体の懐に飛び込める場所、その人物のホームグラウンドなどで、その人物の意外性のある表情や佇まいを切り取りたいと希望している。片岡礼子が指定してきた氷川神社にはビオトープがあり、人々が集って、都会の中にあっても自然と交わり、作物を育てることができる場が開かれていた。そのような長閑な場で撮影は行われ、素顔の片岡礼子は明るく親しみやすく、慈愛と母性を感じさせる。が、齊藤が撮った片岡礼子は夏の日差しの中にあっても妖艶な色香あふれる、美しいひととして表現された。

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photo : TAKUMI SAITOH

この第13回の撮影が特別なものになったのは、氷川神社の方々のご厚意で涼しい室内で休ませていただいた間に齊藤と片岡の間で語られた、映画を創ることへの愛情、人々に届けることへの熱意を、対談形式で記事にできたことだった。

この時、片岡礼子は、彼女自身がずっと心の中に温めていた『オイラはビル群』というクレイアニメの企画について話してくれた。その時のことを、いま片岡はこう振り返る。
「暑い日に紫陽花に囲まれて撮影後、齊藤さんが撮られたばかりの作品のお話を聴いて、上映されたら観たいと感じましたし、私が関わった南青山映画祭のお話も熱心に齊藤さんが聴いてくださいました。『私には野望があるんです!』と勢いよくビル群の話を聴いてもらいたくなって、一気に話し始めた記憶です。撮影日の朝はそんなこと想像もしていなかったので、撮影後の涼み時間の瞬間に、引き寄せられたご縁かなと思っています」(片岡礼子)

いっぽう齊藤工は、その時にこんなふうに感じたという。
「パラグアイから帰国した直後で、首都アスンシオンが緑が多いのと同時に、ビルが多く建てられ、都市開発されている様を目の当たりにしていたこともあって、片岡さんの構想や物語に合点がいきました。そして、本作に込めた片岡さんの揺るぎない信念と真心は本物だと感じました」(齊藤工)
誰かの創りたいエネルギーに繊細に反応して、新しい映画を世の中に発表していく。俳優としての顔、映画監督としての顔以外に、齊藤工は企画・プロデュースも手がけ、数々の作品を世に送り出している。

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このふたりのパッションからスタートした『オイラはビル群』の制作過程を追ったドキュメンタリーが、WOWOWプライムにて1月16日(土)16時半より「次の窓をひらく〜齊藤工×片岡礼子×クレイアニメ〜 」として無料放送される。「活動寫眞館」撮影時の対談から2年以上を経て2020年末からやっと制作がスタート、気が遠くなるほど地道なクレイアニメの撮影の模様などもこの番組では放映される。片岡礼子原案、齊藤工企画&プロデュース、クレイアニメの世界で定評のある秦俊子を監督に迎えた本作。完成版の放送は、「WOWOWオンデマンド」で春に配信予定だが、片岡による『オイラはビル群』の物語は、いま地球が抱える問題と繋がる真摯なメッセージも含まれている点でも注目だ。
「このアイデアを思い付いた時、忘れてしまわないようにと慌てて電車を降りてノートに描き出しました。当初から考え続けているのは、ビル群というビルを食べて大きくなる存在とそれを建設する敢えて人とは呼ばないけれど小さな何かの存在。ビル群が消滅するようなラストを考えたこともあったのですが、早い段階で『残る』方向で物語が私の中で書き直されました」(片岡礼子)

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ビル群をじっと眺める片岡礼子。

齊藤は以前、『映画の妖精 フィルとムー』というクレイアニメを手がけ、さまざまな映画祭や移動映画館などで上映している。今回、『オイラはビル群』の監督を務める秦俊子は『フィルとムー』の監督も務めた人物だ。
「NPO法人World Theater Projectと秦監督で作った『映画の妖精 フィルとムー』が世界中に届き始めた流れがあったからこそ、『オイラはビル群』プロジェクトは色づきだしました。なので、まず秦さんに片岡さんの物語をお伝えしました。その時は監督をお願いするというより、戦友として関わっていただきたかった」(齊藤工)

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秦 俊子:アニメーション作家/イラストレーター。ストップモーションアニメを得意とする。『パカリアン/PACALIEN』『危険信号ゴッデス』『さまよう心臓/Rootless heart』『映画の妖精 フィルとムー』など。 WOWOWで『パカリアン』が放送中。http://angle-llc.co.jp

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秦がクレイのキャラクターたちを撮影する現場を訪れた片岡は、「印象に残ったのはビル群そのものの眼。セットや創られた自然たちと日差しにも感動しましたが、眼が、想像していたその"まんま"だったこと。その眼は立体的で、照明による輝きまで湛えていました。波、鳥の羽ばたき、生えてくる双葉……それらの表現に、言葉では伝えきれないほどの感激をいただきました。クレイアニメの世界の技術とクリエイターの具現化の技や表現力に感動するばかりです」と話す。

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齊藤もこうコメントする。
「クレイアニメやアニメーションの制作現場は、すべてがロジカルで緻密な職人方の神聖な作業場なので、"いかに邪魔をしないか"に尽きます。私にできることは、秦さんの素晴らしいチームが存分に才能を発揮できるように願うことと、コナ珈琲を届けることだけでした」(齊藤工)

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映画は創られた段階ですべてが終わるわけではない。作品を観た人が何かのメッセージを受け取り、心に何かを刻まれて、その感慨がまた別の誰かに伝わっていく、そのチェーンのような想いの伝播こそが、映画の創り手・観客ともに醍醐味なのだと思う。
「この物語の場所は地球のことなので、映画館はもちろんのこと、映画祭やWorld Theater Projectのみなさんにも協力していただいたからこそ、劇場がない場所にいる方々も観られるチャンスを作りたいと熱望しています。そして、実際どんな気持ちで観たのか、感想を聞かせてもらいたい。どんな言葉が返ってくるのか想像もつかないですが、発信者の私にとっては、返ってくる言葉は何よりのご褒美と思って楽しみにしています」(片岡礼子)

齊藤は、「映画は どこにいようとも 世界を見せてくれる【窓】」と語る。
クレイアニメ『オイラはビル群』で伝えていきたいこと、そして、映画を創り続けることへの想いとは? 1月16日の放送では、ふたりの対談、制作現場を訪れたふたりの映像や、齊藤の過去の作品などにも言及しながら、ひとつの作品が小さなきっかけから生まれ、心を込めて温められ、育まれ、発信されていくまでの過程を観ることができる。
ぜひこの機会に、創ることに魅せられた人々の姿と、そのメッセージに触れてほしい。

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「次の窓をひらく〜齊藤工×片岡礼子×クレイアニメ〜 」
放送日時:2021年1月16日(土)16時30分 [WOWOWプライム]  ※無料放送
www.wowow.co.jp/detail/172089
※クレイアニメーション『オイラはビル群』は、2021年春WOWOWオンデマンドにて配信予定

photos : YUIKO KOBAYASHI

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