【8月1日WOWOW独占放送】英国ロイヤルバレエ団マシュー・ボールが語る、愛と救済の物語。
世界最高峰のバレエ団として名高い英国ロイヤルバレエ団。今年7月上旬に行われた3年ぶりの来日公演は、連日満員の客席を感動の嵐で包み込み、幕を閉じた。世界屈指のスターダンサーたちが魅せた“ロイヤル・スタイル”の記憶も新しい中、バレエファンにとってうれしいニュースが飛び込んできた。8月1日(土)、WOWOWにて日本公演でも上演された『ジゼル』と『リーズの結婚』の最新映像作品が独占放送・配信されるという。

今回の放送で、ひときわ注目を集めているのが『ジゼル』だ。来日公演では、主演を予定していたプリンシパルの高田茜が怪我のために出演を見合わせたため、ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスで収録された彼女の熱演を自宅で堪能できる今回の放送は、バレエファン待望の機会と言えるだろう。
この映像の『ジゼル』で貴族アルブレヒト役を務め、高田とともに圧巻の舞台を創り上げたのがプリンシパルのマシュー・ボールだ。来日した彼に、作品の深遠な魅力やパートナーシップの秘訣について語ってもらった。

『ジゼル』――愛と救済が織りなす、崇高な古典作品。
1841年の初演以来、ロマンティックバレエの最高峰として世界中で上演され続ける『ジゼル』。巨匠ピーター・ライトによる演出では、明確なストーリー展開とドラマティックな描写で高い評価を得ているが、作品の本質について、マシュー・ボールは次のように語る。
「『ジゼル』はポアントワークや第2幕における女性コールドバレエの美しさなどのクラシックバレエの基本要素を備えているだけでなく、悲劇的な場面もあり、物語自体が極めてドラマティックです。そのため、いまなお観客の心に深く訴えかける、特別な作品だと思います。そこには、農村の娘ジゼルと貴族アルブレヒトとの間の身分格差といった、社会全般に通じる問題提起も含まれています」
多くの人が悲劇として捉えがちな本作だが、彼の解釈はより深く、精神的な境地に及ぶ。
「この作品のクライマックスが本質的に描いているのは、救済と許しだと思います。それは、主人公であるジゼルの心からの行動や愛によってもたらされるものです。彼女のそうした純粋な愛が許しを可能にし、アルブレヒトを救済へと導くのです。まるで、人々の罪を救うためにイエスが命を捧げたかのような、宗教的な崇高ささえ感じます。バレエというと心地よい逃避の場だと思われがちですが、『ジゼル』はそれとは一線を画す特別な作品です。もっと深く、深遠なテーマを内包しているのです」

19世紀に生まれた古典演目を現代に生きるダンサーとして演じるうえで、彼はアルブレヒトという人物の複雑さを意識して取り組んでいるという。
「アルブレヒトという役を演じる上でも、ある程度は観客を味方につける必要があるとは思います。でも、僕は彼を“いい人”として演じすぎないように心がけています。彼には無神経なところがあり、ジゼルほどには他者を大切にしていなかったり、深い感情を持ち合わせていなかったりする面を見せることが重要だと思います。彼の方が裕福で恵まれた環境の出身であったとしても、人間として優れているわけではない――むしろ逆かもしれない――というニュアンスを込めること。それが、僕なりの役の解釈です」
高田茜とのパートナーシップと幻想的な第2幕。

第2幕で、精霊ウィリとなったジゼルがアルブレヒトに支えられて暗闇の中にふわりと浮かび上がる場面は、息をのむほど幻想的だ。力やジャンプの高さを誇示するのではなく、浮遊感という詩的なイメージを創り出すために不可欠だったのが、高田茜との緻密な信頼関係である。
「僕が自分の力を駆使して茜さんを丁寧にサポートすることで、彼女が演じるウィリとなったジゼルがあたかも実体を持たない存在――幽霊のように、あるいは羽毛のように、地面にほとんど触れていないかのような――そんな幻想を生み出すのです」

当初は実生活のパートナーであるマヤラ・マグリと踊る予定だったが、怪我をしたスティーヴン・マックレーの代役として、急遽髙田とペアを組むことになった。マシューは互いへの深い敬意が質の高いパフォーマンスを支えたと振り返る。
「茜さんとは、それまであまり共演したことはなかったのですが、お互いに深い敬意を抱いています。だからこそ、スタジオではすぐに互いの感覚を共有し合うことができ、質の高いパフォーマンスを生み出すことができたと考えています」
怪我により日本公演への参加が叶わなかった高田茜だが、マシューは彼女のダンサーとしての資質を惜しみなく称賛する。
「茜さんにはダンサーとして数多くの素晴らしい資質があると思います。まず思い浮かぶのは、芸術に対する彼女のひたむきな姿勢です。彼女は疲れを知らず、かつ無私無欲な精神で取り組みます。スタジオでは、自身の技術を極めて高いレベルにまで高めようと努める一方で、チームとしてパートナーと協力し合うことを大切にしています。同時に、彼女はとても繊細な心の持ち主でもあります。その生まれ持った繊細さは、純真で素朴な若い村娘であるジゼルの役柄にぴったりで、彼女はこの役を見事に体現していると感じます。一方で、彼女の芯の強さも、ジゼルという役を通して表れています。僕が演じるアルブレヒトという役も複雑で深みがあるものですが、人間としての魂の豊かさという点では、彼女こそが真に豊かな魂を持っていると思います。茜さんはその豊かさを美しく表現できるダンサーなのです」

繊細な表現力と確かなテクニックを併せ持つ高田茜と、貴族らしい端正な佇まいを持ち味に安定感あるサポートで彼女を引き立てるマシュー・ボール。ふたりの魂が共鳴した『ジゼル』は、奇跡の舞台と呼ぶにふさわしい。
ハッピーなラブコメディ『リーズの結婚』も同日放送。

8月1日の放送では、『ジゼル』に続き、英国バレエの伝統の十八番である『リーズの結婚』も届けられる。名匠フレデリック・アシュトンの独創的な振付による本作は、のどかな英国の田園風景を舞台に、村娘リーズと青年コーラスの恋愛騒動をユーモラスに描いた人気作だ。
主演を務めるのは、アシュトン作品を得意とし、愛らしさと高い表現力で魅了するフランチェスカ・ヘイワードと、驚異的な身体能力と明るいエネルギーで観客を惹きつけるマルセリーノ・サンベ。実生活でもロイヤルバレエスクール時代からの親友であるふたりが魅せる息の合ったパートナーシップは、観る者すべてを多幸感で満たしてくれる。
アシュトン独自の緻密なスタイルと、ストーリーテリングの巧みさ。そして、鮮やかなステップを踏む着ぐるみの鶏たちや、リボンダンス、木靴の踊りといった見せ場が満載の本作は、観た後に心が軽やかになるようなハッピーな空間が、画面いっぱいに広がる。

劇場での感動と興奮を、もう一度自宅で!
日本公演の熱狂からまだ1ヶ月経っていないが、生の舞台を観た人も、会場に足を運べなかった人も、今回のWOWOWでの放送は英国ロイヤルバレエ団の真髄に触れる絶好の機会となるだろう。
最後に、マシュー・ボールから寄せられた日本のファンへ向けたメッセージを紹介する。
「『ジゼル』は美しく感動的なバレエ作品で、僕は高田茜さんとともに踊ります。一方、『リーズの結婚』は、英国ロイヤルバレエ団の素晴らしい魅力を存分に味わえる、楽しく陽気な作品です。WOWOWで放送される、これらの質の高いバレエの数々をぜひお楽しみください」
【番組情報】
8月1日(土)19:00~
英国ロイヤルバレエ団『ジゼル』
収録日:2026年2月25日、3月3日
振付:マリウス・プティパ(ジャン・コラーリ、ジュール・ペローによる)
8月1日(土)21:00~
英国ロイヤルバレエ団『リーズの結婚』
収録日:2025年10月29日、11月5日
振付:フレデリック・アシュトン
※WOWOWオンデマンドで見逃し配信あり
衣装問合せ先
ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500
- photography: Yumiko Inoue (ALEXANDRE STUDIO AND LAB)
- styling: DAN
- hair & make: Hironori Ishida
- text: Eri Arimoto