気になるワードは「有閑マダム」。【2024年秋冬トレンド解説|栗山愛以編】
Fashion 2024.07.18
海外コレクションを取材した5人のおしゃれプロに緊急アンケート。今シーズンのムードから感動のショーまで、それぞれの視点でとらえたライブなトレンド解説をお届け。
ブランドならではの独自の視点のある日常着。
栗山愛以
ライター&エディター
Q1. 24-25 秋冬コレクション全体のムードや傾向。
Answer:今季は各ブランドそれぞれの関心で表現しているような気がし、中心となるムードがあまり感じられませんでした。コロナ禍以降続いている、日常着を洗練させたり再解釈する手法は引き続き見られますが、ブランドならではのスタイルを提案するなど、ただシルエットや素材に少し変化を加えたりするだけではない、独自の視点があったとは思います。たとえばマリーン セルはシグネチャーの三日月柄を全面に打ち出して、少しユーモアも効かせつつ多様な人々の生活風景を描いていました。
Marine Serre
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またジュンヤ ワタナベの「パブリックアートを想定して日常着と造形物のコントラストの美しさを表現する」というテーマはほかにはない発想だったと思います。
Junya Watanabe
パリ・ファッションウィーク期間中にメゾン マルジェラの2024アーティザナルコレクションのインスタレーションを見て衝撃を受けました。個人的には、これくらいトレンドがどうでもよくなってしまうような、こだわり抜かれた圧倒的な表現との出合いを期待していますが、プレタポルテではまだこうした作り込む気分ではないかもしれません。ただ、レディライクなスタイルが少し見られたので、徐々に日常から離れたドレスアップの精神が蘇りつつあるような気もします。
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Q2. 注目しているトレンド(スタイル、アイテム、素材など)は?
Answer:グローブや女優帽が必須のレディライクなスタイル。"ladies who lunch"(有閑マダム)というワードが気になってはいます。
Miu Miu
スキニージーンズ、クラシックなトップハンドルにさらにストラップを付けて傾けるプラダの新しいバッグの持ち方。レトロなムードの花のモチーフ。
Balenciaga
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Q3. 特に印象に残ったブランドとその理由。
Answer:ドーバー ストリート マーケット パリがサポートしているアイルランド出身のロイシン ピアスは、一見ドリーミーな印象ですが、確かな技術に裏付けられており、芯の強さを感じました。
RÓisÍn Pierce
イッセイミヤケは先シーズンからブライアン・モロイがスタイリングを手がけているせいか、時代の空気感のようなものが加わっている気がします。
Issey Miyake
Q4. コレクション取材を終えて感じることは?
Answer:客席の四方を囲むスクリーンに自然から電子空間へと至る映像を映し出したバレンシアガやフードコートをシグネチャーの三日月柄で覆い尽くしたマリーン セルは没入感のある空間作りで圧倒されました。生で見てはいないのですが、バーバリーのランウェイに、私生活がヴェールに包まれているフィービー・ファイロの娘が登場したことには驚きました。
*「フィガロジャポン」2024年7月号より抜粋
photography: Spotlight