ブシュロンの新作「セルパンボエム」。蛇が魅惑のモチーフに。
Fashion 2013.03.27
大村真理子の今週のPARIS
蛇など爬虫類はどうにも苦手!というのが、大半の女性たちの声だろう。でも、日本でも3月1日から発売が始まったブシュロンの 「セルパンボエム」のコレクションを見ると、気持ちも変わるはず。もともと蛇(フランス語で"セルパン")は古代にあっては王権や神性のシンボルで、ジュエリーの世界でははるか昔から守護的役割を持つモチーフとして使われている。

右:「セルパンボエム」コレクションから、ミディアムサイズのトワエモア・リング。 ¥672,000
自然界からインスピレーションを得たクリエーションを得意とするブシュロンでは、創業20年後の1878年に初めて蛇が登場。首に蛇がからみついているような大胆なネックレスのデッサンがアーカイブに残されている。メゾンの創業者フレデリック・ブシュロンは1888年、愛妻ガブリエルにダイヤモンドをあしらったゴールドの蛇の ネックレスをプレゼント。その年は彼らの結婚15周年のクリスタル婚を祝う年で、海外に出張することになったフレデリックは、彼の留守中も彼女を護り、幸せをもたらす忠実な供として、このネックレスを愛を妻に贈ったのだ。こうして、ブシュロンの顧客の女性たちも、蛇を愛と保護のシンボル、幸せを約束するモチーフとして認め、自分たちも求めるようになる。

右:アーカイブに残る蛇モチーフの最古のデッサン(1878年)。
蛇がうねるように首にからむアールヌーヴォー調のネックレス、白いダイヤモンドの蛇が黒いオニキスのベースに映えるアールデコ・スタイルのブレスレット......様々な姿でブシュロンの長い歴史に君臨する蛇。1968年、画期的なセルパンコレクションが発表された。それは蛇の頭部をまるで水滴のようにスタイリッシュにデザインしたものである。この大胆で自由なボヘミアンな発想をベースに、新作「セルパンボエム」のコレクションが生まれたのだ。リング、イヤリング、ブレスレット、ネックレスから成る新作コレクションは、丸みを帯びたドロップ型モチーフがメインとなっている。抽象化された蛇の頭部は1968年のデザインがさらに洗練され、シンプルでとても美しい。時代を超えた普遍的モチーフとして、今後も続くメゾンの歴史で輝き続けるに違いない。

中:アールデコ・スタイルのブレスレット(1937年)。
右:「セルパンボエム」のベースとなった1968年発表の「セルパン」コレクションのデッサン(1967)。
丸みを帯びたドロップ型モチーフには、大きさの異なるダイヤモンドがランダムにセッティングされている。このスノーセッティングは動きを感じさせ、ジュエリーに力強さをもたらすのだ。ドロップの周囲にはゴールドのビーズ細工が施されている。これによってセットされたダイヤモンドは、より強い光を放つことになり、また同時にジュエリーにフェミニティとエレガンスがプラスされる。卓越した職人技を誇るブシュロンらしい、見事な仕事である。

クラシックでコンテンポラリーな「セルパンボエム」コレクション。リングとブレスレットは一頭タイプも魅力だが、二頭がからむ"トワエモア"タイプも捨てがたい。ネックレスとペンダントにはヴィンテージジュエリーのようなツイストチェーンが使われている。80センチのロングネックレスの留め具は、取り外し可能なピン型。これをドロップ型のペンダントトップと組み合わせて、ブローチとしても楽しめる。欲しい品がいっぱいのコレクション。蛇はお守り!とか、今年は蛇年!などを買い物の口実にしてしまいそう。

中:リンクブレスレット ¥2,079,000
右:ゴージャスなバングル ¥4,095,000

中:ロングネックレスの留め具とトップでブローチに。¥2,058,000
右:18mmのフェイスにマザーオブパールを使ったジュエリーウォッチ。¥5,040,000(予定価格)
※価格はすべて2013年3月27日現在。
26, place Vendôme
75001 Paris