"愛の物語"から生まれた、北欧のチョコレートが初上陸!

Gourmet 2017.02.04

北欧オーランド島の自然と、南米ベネズエラカカオの出合いが生んだ「メルセデスショコラトリー」。

今年も甘いときめきをぎゅっと詰め込んだ、美しくおいしいチョコレートが街中に並ぶ、バレンタインの季節が到来。“愛”をテーマにしたこのイベントにぴったりのとびきり素敵なチョコレートが、フィンランドから到着した。

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それは、北欧で「船に乗ってでも買いに行く価値のあるチョコレート」として話題を集める「メルセデスショコラトリー」。フィンランドとスウェーデンの間に位置するオーランド島に、ショコラティエのメルセデス・ウィンキストのチョコレート工房がある。なぜ彼女のチョコレートは人を惹きつけるのか? なぜオーランド島でチョコレートを作るのか?  そこには、まるで現代のおとぎ話のような“愛の物語”が秘められていた。現在、日本で開催中の「ショコラフィンランド2017」に出店するために来日しているメルセデスに話を聞いた。

170204_mercedes_chocolate_02.jpgオーランド島の港町エッケローに佇む「メルセデスショコラトリー」。ロシア軍によって建てられ、フィンランド最古の郵便局として使われた建物の一部が、陶芸家である夫ペーテルのアートギャラリー兼メルセデスのチョコレート工房だ。

170204_mercedes_chocolate_03.jpgメルセデス・ウィンキスト

「私が故郷である南米ベネズエラの首都カラカスで、フィンランド大使の秘書として働いていたとき、いまの夫である陶芸家のペーテルは、フィンランドの作家仲間たちと展覧会を開くためにカラカスを訪れました。1993年のことです。その際に、彼らの通訳や航空券の手配をお手伝いしたのが、出会ったきっかけです。そして同じ年に、今度は私がフィンランドのフードフェスティバルを企画するために、ヘルシンキやラップランド、オーランド島を訪れました。そこでペーテルに再会し、私たちは恋に落ちました。それから、ペーテルと同じくらい、私はオーロラや美しいアーキペラゴ(群島)、初めて見る凍った海……そのすべてと恋に落ちたのです」

メルセデスは、やさしく穏やかな口調でそう語る。再会したふたりは、数年の間、北欧と南米との遠距離で交流を続けたという。

170204_mercedes_chocolate_04.jpgオーランド島

170204_mercedes_chocolate_05.jpgペーテル・ウィンキスト

「当時は電話と、ファックスで連絡を取っていたんです!(笑) 大使館で、ファックスの音がすると飛んで駆けつけたものです。そうするとペーテルが描いた絵が届いたりして。でも私が大使館を辞めたことで連絡が途絶えてしまいました。その後、インターネットが使えるようになっていた2001年に、ある日私は思い立ってペーテルが住むオーランド島の港町『エッケロー』、そして『ペーテル・ウィンキスト』をインターネットで検索してみました。すると検索結果に『エッケロー・ホテル』が出てきたので、ホテル宛にメールを送ったのです。『私はペーテル・ウィンキストと連絡が取りたいです』と。オーランド島では、みんながペーテルのことを知っていましたからね。するとホテルの従業員の女性が、実際にペーテルを訪ねてくれたのです」

「ある日ホテルの女性が私を訪ねてきて、『ペーテル、南米に住む女性があなたのことを探していますよ!』って言ったんだ(笑)」と、一緒に来日していた夫のペーテルが笑う。

>>繊細な味わいの、メルセデスチョコレート誕生秘話。

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繊細な味わいの、メルセデスチョコレート誕生秘話。

同じ年にペーテルは再びベネズエラへ、当時メルセデスが住んでいたカリブ海のマルガリータ島に彼女を訪ねた。そして翌年2002年には情勢が不安定だったベネズエラを離れ、メルセデスはペーテルの住むオーランド島に移住した。初めて訪れたとき“恋に落ちた”土地も、実際に住むとなると別だった。彼女が生まれ育った都会カラカスに比べとても静かで、冬は寒く長い。最初の5年間は、自分を旅行者のように感じていたという。

170204_mercedes_chocolate_06.jpg愛らしい「メルセデスショコラトリー」の入り口。

「でもメルセデスは“美”というものに対する好奇心と審美眼を持っていたから、彼女はオーランド島の公民館で手工芸を学び始めた。質にこだわりながら、丁寧に美しいものを作り上げていくスローなリズムを、彼女はオーランド島で得ることができた。これは彼女が後に手がけることになるチョコレート作りにとって重要だった。チョコレートについても、スローなやり方でしか学べないものだからね」と、メルセデスを穏やかな眼差しで見守りながら、ペーテルは話す。

170204_mercedes_chocolate_07.jpgベネズエラ産とオーランド島産にこだわった、チョコレートの材料。

ふたりは2005年にエッケローにカフェをオープン。メルセデスがここでケーキや菓子パンを焼いていたある日、ペーテルは彼女にチョコレートの本をプレゼントする。

「それはスウェーデンのお菓子界の巨匠であるJan Hedh氏の本でした。ベネズエラのカカオの歴史、チョコレートのクオリティについて書かれているのを読んで、これが私のやるべきことだ!と、ひらめきました。小さい頃からベネズエラでたくさんのカカオの木を見て育ったので、カカオには親しみがありました。それで私はストックホルムに住むJan Hedh氏に師事してチョコレート作りを学び始めたのです」

「音楽や言葉の才能に恵まれた人たちがいるように、生まれつきすばらしい味覚を持った人もいる。多くの人が『おいしい』『おいしくない』という感覚だけのところ、そういう人はそれまで存在しなかった新しい味を創り出すことができる。それは神様からのギフトなんだ。メルセデスがチョコレート作りを始める前から、私は彼女の才能に気づいていた。彼女は、私が認識できない多くの繊細な味や匂いを感じることができた」

170204_mercedes_chocolate_08.jpgひと粒ひと粒にさまざまな風味が詰まった、宝石箱のようなメルセデスのチョコレート。

そのメルセデスは、いま流行しているいわゆるビーン・トゥ・バーは作らないという。彼女を惹きつけるのは、さまざまな味を組み合わせて、異なる味とテクスチャーを持つプラリネの味を構築することだ。

「私はオーランド島のローカルな味にこだわっています。ベネズエラのカカオと、オーランド島のクリームやバター、ハチミツ、そしてベリー類。あえて風変わりな組み合わせにしようとは思いませんが、時々、何かを食べたときに『これはチョコレートと合うかもしれない』と思いつくんです。その思いつきを工房で実際に試します。チョコレートと合わせる食材は、チョコレートの風味を突き抜けて感じられるような強い味でなくてはいけません。例えば、オーランド島で採れるシーバックソーン(*)はとても酸味が強く、それでいてチョコレートと調和し、両方の風味を感じられる。一方、リンゴや洋ナシは、チョコレートに負けて風味が消えてしまいます。だから洋ナシを使う場合は、リキュールやワインで煮たり、シナモンなどスパイスを加えて調理したり、ひと手間かける必要があります」

「メルセデスのキッチンは、化学の実験室のような場所だよ」とペーテルが笑う。

170204_mercedes_chocolate_09.jpg実験室のような工房で、日々チョコレートが生み出される。

「ラベンダーの花をクリームと合わせて作ったプラリネもあるんです。二層になっていて、一層はラベンダーのガナッシュ、もう一層はラベンダーのカラメル。食べたとき、それはふたつではなくひとつの味だと感じるでしょう。ふたつが絶妙に混じって、口の中でラベンダーの風味を感じられるように作っているんです」

感覚を研ぎすまし、試行錯誤を重ねながら丁寧に作られたチョコレート。それを初めて日本で紹介するにあたり、日本のお客様に伝えたいことを尋ねると、ふたりのメッセージはひとつだった。それは「ゆっくり味わって食べてほしい」ということ。

「フィンランドとベネズエラの食材には、さまざまなストーリーが詰まっています。それらを、時間をかけて味わいながら感じてほしいです」

こう話すメルセデスの後にペーターが続ける。
「メルセデスはゆっくりと分析しながら、新しい味を生み出している。だから彼女のチョコレートを食べる人も、同じようにゆっくりと、口の中で溶けるように食べてほしい。そうすればチョコレートに散りばめられたすべての味を感じられる。決して急いで食べてはいけないんだ(笑)。すばらしい手工芸の文化をもつ日本の方々は、そうした作品がひとりの人間から生み出されることを知っているはずだ。メルセデスチョコレートも、すべてのプロセスをたったひとりの女性が手がけ、生み出している。それがすばらしいことなんだ」

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ベネズエラとオーランド島。距離と時間を超えて結びついた、愛の物語が込められた「メルセデスチョコレート」。大切な人に贈り、ぜひその幸せの味を分かち合ってみて。

*シーバックソーンとは、豊富なビタミンとフラボノイド、ミネラル、ファイトケミカルなど200種類以上の栄養素に加え、果実種では唯一、植物性油(オメガ7系)も含むことで知られる、北欧のスーパーフード。

170204_mercedes_chocolate_11.jpgショコラフィンランド2017に出品される、フィンランドのチョコレート。

ショコラフィンランド2017
開催中〜2月5日(日) サロン・デュ・ショコラ(東京国際フォーラム)
開催中〜2月14日(火) 日本橋三越「スウィーツコレクション」〈2月7日ショコラティエセミナー〉
開催中〜2月14日(火) 大丸札幌店「ショコラプロムナード」
開催中〜2月14日(火) 仙台藤崎「ショコラマルシェ」
開催中〜2月14日(火) 近鉄奈良店「ショコラコレクション」〈2月8日ショコラティエ来場〉
開催中〜2月14日(火) 博多阪急「博多阪急のバレンタイン2017」

 

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