「占い」って結局なんだろう? パフェが食べたくなるドラマ「クロエマ」に映った、現在の私たち。【PrimeVideo】
クロニカルカードが導く、明日の私
文・小林久乃
FIGARO本誌8月号では年に一回の「占い」企画を特集している。20年近く女性誌の制作に携わっているけれど、占いの特集とは王道企画でまったく古びることなく人気がある。私もその波に漏れず、今回の特集も自分に当てはまる結果を隅々までチェックして「よし、蠍座は2026年後半、絶好調!」と、将来に向けた自分の感情をチューニングした。そして偶然にも同じタイミングで、占いが物語のカギになるドラマ「クロエマ」(PrimeVideo)配信が始まっていた。これがおもしろかった。

「クロエマ」は杉咲花と多部未華子のダブル主演作。監督は今泉力哉氏、脚本は今泉かおり氏のご夫婦が担当、原作は海野つなみ氏と映像作品を固める布陣を眺めるだけで、すでに視聴欲をそそられる。第一話は資産家のクロエ(多部)の豪邸から始まった。恋人に捨てられて住む場所を無くしたエマ(杉咲)が、寝床を探してクロエの自宅の庭に迷い込み、身寄りもないエマをクロエは自立できるまで……という条件付きで、居候を許可する。どこか秘密めいていて他人の素性を探るのが得意なお嬢様のクロエに、明るくて楽天的なエマ。生活環境も性格もまるで違う、対照的なふたりの共同生活は楽しそうだ。

週に一度はエマの経営する、イケメンの喫茶店の店長・シモン(岩瀬洋志)が自宅を訪れて、パフェを振る舞う。なんとも贅沢なシチュエーションだけれど、何度も登場するパフェを見ていると、ついロイヤルホストへ行きたい衝動に駆られてしまう。可愛らしくデコレーションされたあの甘味の山を、エマたちのように長いスプーンで突いて崩したい。

ちなみにクロエは「クロニカルカード」を使ったオリジナルの占いを週に一回だけ対面で、自宅で行っている。特に宣伝はしておらず、訪れるのは自宅の前にある看板を見た客のみ。カードをばら撒く鑑定方式で、依頼に沿った占いをカードから読み取る。どこかタロットカードに似ている。初めて会った日にエマも占ってもらい「当たる!」と感動。クロエ邸を担当する建築士・大庵理華(河井青葉)も絶賛していた。そうそう、俳優の河井も「冬のなんかさ、春のなんかね」(日本テレビ系・2026年)に続き杉咲との共演、今井組への参加だ。「ばけばけ」(NHK総合・2025〜2026年)での母親役も含めて最近の活躍がめざましく、まぶしい。
当たるも八卦当たらぬも八卦なのか
さて「クロエマ」。先述のクロエを頼ってくる占いの客たちが、現在の私たちの日頃を映している。たとえば現在ハローワークに通う求職中の女性は、タワマン族の妻で元インフルエンサーという以前のプロフィールで、自分を偽って占いを申し込んでくる。そのほか男女のすったもんだの事件があったり、バズりたい無職男がやってきたりと、虚栄心と自己顕示欲がドラマに滲み出ているよう。この面々に対して占いフィルターを通しながら、感情の核心を突いていくクロエ。ただ最終的には「未来はその人の行動で変わるから」と鑑定依頼者に人生の選択権を自覚させる。そんな内容が一話ごとにパッケージされている。ちなみに映像としてのポイントは、あの杉咲花がシーンによって他出演者とおしなべて、背景化している様子だ。いま、演技訴求力の化身のような存在なのにそんなことが可能になるのは、今泉監督との関係の良好性ゆえ、だろうか。

そんな「クロエマ」をあっという間に鑑賞して、改めて自分にとって占いは何だろうかと考えると「不安専用の消しゴム」だと思った。人は誰でも不安の塊であって、でも裏腹に不安があるからこそ生きるエネルギーになっていて今日がある。ふたつの感情を行き来するうちに選択力が弱まって、つい占いを頼ってしまう。うーん……実は私も20代に対面で鑑定してもらう占いにハマり「当たる」と噂を聞けば、車を飛ばして他県まで出かけていた経験がある。そこで聞いていたのは恋愛と結婚運だけだ。どの占い師も「数年後に必ず」「晩婚ですが」と言いきり、明るい未来を匂わせていた。あれから20年。独身で楽しく生活をしているので、当時かけた時間と金は何だったのかと考える。ああ、そうか、ここでこうして書くためのネタ作りだったのか。
「クロエマ」
●原作/『クロエマ』海野つなみ(講談社「Kiss」連載)
●監督/今泉力哉
●脚本/今泉かおり
●出演/杉咲花、多部未華子、岩瀬洋志、井之脇海、河井青葉、野添義弘、諏訪太朗、光石研 ほか
●製作著作/WOWOW
●制作プロダクション:WOWOW・コギトワークス
https://www.amazon.co.jp/dp/B0GWYMMN1L
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