パリ・オペラ座で輝く、15名のエトワールたち。

Paris

パリ・オペラ座バレエ団の階級社会の階段をダンサーたちは毎年開催される昇級コンクールで上がってゆく。カドリーユに始まり、コリフェ、スジェ、プルミエと続く。最高位のエトワール(生涯称号)については芸術監督が提案し、総裁が任命する仕組み。ピラミッドの頂点に立てるダンサーの数はごく一握り。2022年12月の芸術監督就任以来、ジョゼ・マルティネスは女性3名、男性3名を任命した。パリ・オペラ座で活躍する15名のエトワールたちに芸術監督からのメッセージをもらった。

>>芸術監督ジョゼ・マルティネスからのメッセージ。

ジョゼ・マルティネス
José Martinez

©Julien Benhamou/ OnP

2022年12月、パリ・オペラ座バレエ団芸術監督に就任。24年に設立されたジュニアバレエ団の芸術監督も兼任。彼がエトワール時代に創作したクラシックバレエの技術を用いた『天井桟敷の人々』が、来シーズン再演される。

①エトワール任命日
②任命時の演目
③任命時の芸術監督
④芸術監督ジョゼ・マルティネスよりひと言


ドロテ・ジルベール
Dorothée Gilbert

©James Bort/ OnP

最長老エトワールの彼女は、41歳で『眠れる森の美女』のオーロラ姫、42歳で『椿姫』のマルグリットを初役で踊った。その裏に華奢な身体で踊り続ける体調管理能力と高いプロ意識が。
①2007年11月19日
②ルドルフ・ヌレエフ版『くるみ割り人形』
③ブリジット・ルフェーヴル
④「素晴らしいダンサーで真のアーティスト。進化を続け、キャリアの最後に彼女は真実性を失うことなくシンプリシティへと向かい、類いまれなる演技者となりました」

アマンディーヌ・アルビッソン
Amandine Albisson

©James Bort/ OnP

パーフェクトなボディシルエットに目を奪われる。役に自然に入り込む彼女は、悲劇のヒロインも似合えば、『ランデヴー』の世界一の美女役では官能的でこの上なく冷酷だ。
①2014年3月5日
②ジョン・クランコ振付『オネーギン』
③ブリジット・ルフェーヴル
④「とても特別な個性の持ち主で、大変美しいダンサー。美しさがその個性と混じり合い、毎回彼女ならではの役の解釈をステージで見せています」

レオノール・ボラック
Léonore Baulac

©James Bort/ OnP

高い音楽性! 無駄のないピュアなステップにストーリーを饒舌に語らせる。シルフィードはいたずらっ子そのもので、『マイヤリング』のマリーではその目に狂気すら輝かせて。
①2016年12月31日
②ルドルフ・ヌレエフ版『白鳥の湖』
③オーレリー・デュポン
④「端正で真実、それがレオ。人物を演じる際もとても自然。非常に心がこもった踊りなのでリアリティがあり、彼女独自の世界観を見せてくれます」

ヴァランティーヌ・コラサント
Valentine Colasante

©James Bort/ OnP

怪我で降板したアマンディーヌ・アルビッソンに代わりキトリを踊った際、その完璧なテクニックゆえ、芸術監督に予定外の任命をさせたという逸話の持ち主。舞台上で確かな技術と高い音楽性を備えたパワフルな舞いで観客を魅了し続ける。
①2018年1月5日
②ルドルフ・ヌレエフ版『ドン・キホーテ』
③オーレリー・デュポン
④「毅然とした強い性格で、ポジティブなエネルギーの持ち主。ダンスを介して彼女は観客に喜びを与え、美しいやりとりが生まれます」

パク・セウン
Sae Eun Park

©James Bort/ OnP

儚さや静けさを感じさせる佇まい。しかし赤いコスチュームを纏い、扇子を持ってキトリとなると、明るく陽気に弾けまくる。華奢な身体に秘めた大きなポテンシャルが舞台を牽引。
①2021年6月10日
②ルドルフ・ヌレエフ版『ロミオとジュリエット』
③オーレリー・デュポン
④「彼女を思う時に浮かぶ言葉はポエジー。ジゼル、ジュリエットを踊る姿は、まさに卓越したクラシックのダンサーです」

オニール八菜
Hannah OʼNeill

©James Bort/ OnP

バランシン作品では舞台空間に華やかさを添え、実にゴージャス。『ジゼル』のミルタのどこまでも高い跳躍は圧巻! コンテンポラリーもタフにこなすマルチなダンサー。
①2023年3月2日
②ジョージ・バランシン振付『バレエ・アンペリアル』
③ジョゼ・マルティネス
④「僕の最初のエトワールです。舞台上の彼女に見いだすのはダンサーではなく女性。特有の官能性、そして心に触れる感受性が彼女にあります」

ブルーエン・バティストーニ
Bleuenn Battistoni

©James Bort/ OnP

演劇的作品でも抽象的な作品でも高い芸術性を見せる。どんな役も自分のものにするカメレオン的なストーリーテラーとして、逞しくキャリアを築いている。
①2024年3月26日
②フレデリック・アシュトン振付『リーズの結婚』
③ジョゼ・マルティネス
④「意志の強さやパワーを感じさせる一方で、ジュリエットやコミカルなリーズを演じる彼女には驚かされます。人物像を作り上げ、その役の中に自分を入り込ませ完全に別人となります」

ロクサーヌ・ストヤノフ
Roxane Stojanov

©James Bort/ OnP

どこまでも長い脚が、優美に力強くステージ空間を切り開き、ステージの上で光を集め、光を放つ。圧倒的存在感とスター性で観客を作品に引き込む最年少の女性エトワール。
①2024年12月28日
②ピエール・ラコット振付『パキータ』
③ジョゼ・マルティネス
④「惜しみなく与える寛大さ。パートナーとともに役を築き上げますが、そこにある分かち合いには感動があります。彼女の舞台はいつも素晴らしい」

マチアス・エイマン
Mathias Heymann

©James Bort/ OnP

素晴らしい筋肉を生かした動物的しなやかさ、繊細で細やかなポアントワーク、その軽々と高いジャンプ。彼の美しくエレガントなダンスに、誰もが息をのむ。
①2009年4月16日
②ジョン・クランコ振付『オネーギン』(レンスキー役)
③ブリジット・ルフェーヴル
④「偉大なアーティストです。すごいテクニシャンであり、同時にとてもセンシブル。この感受性こそが彼の切り札でしょう。復帰に向けてゆっくり前進中」

ジェルマン・ルーヴェ
Germain Louvet

©Matthew Brookes

美しい顔立ちとスタイルの彼が、繊細でノーブルにダンスを踊る姿はプリンスそのもの。その一方、敬愛するピナ・バウシュの作品でも圧倒的な存在感を発揮する。『マイヤリング』『椿姫』など演技面でも開眼。
①2016年12月28日
②ルドルフ・ヌレエフ版『白鳥の湖』
③オーレリー・デュポン
④「キャリアで到着したいところについて、クリアなビジョンを持って進んでいます。自分の選択には強い確信を持っていて、毎回全身全霊で取り組んでいます」

ユーゴ・マルシャン
Hugo Marchand

©James Bort/ OnP

ソロではステージ空間にスケールの大きなダンスを展開し、舞台を支配する。パ・ド・ドゥでは思いやりも感じさせつつ、高々とパートナーを持ち上げる見事なリフトを披露。
①2017年3月3日
②ピエール・ラコット版『ラ・シルフィード』
③オーレリー・デュポン
④「スポーツマン的な体躯の大きな青年の彼ですが、驚くべき感受性の持ち主です。そのコントラストには、実に興味深いものがあります」

ポール・マルク
Paul Marque

©James Bort/ OnP

正確なポジション、優美なポール・ド・ブラ、ブレのない回転、音のない静かな着地……。技術で、美しいプロポーションの身体を舞台上に輝かせる。
①2020年12月13日
②ルドルフ・ヌエレフ版『ラ・バヤデール』(ブロンズ・アイドル)
③オーレリー・デュポン
④「完璧なテクニック! 難しいステップも彼が踊ると簡単そうに見えてしまう。それは信じられないほど。ステージ上の彼はダンスそのものです」

マルク・モロー
Marc Moreau

©James Bort/ OnP

任命前には特にコンテンポラリー作品で発揮していた熱のこもった動きを、最近はクラシック作品で発揮中。身体表現も視線も情熱そのものながら、抑制を利かせた踊りはとても自然だ。
①2023年3月2日
②ジョージ・バランシン振付『バレエ・アンペリアル』
③ジョゼ・マルティネス
④「任命を期待していなかった彼は、新たに若さを得て、とてもハングリー。すべての役を踊りたい、可能な限りステージを満喫したいと意欲的です。それが彼の踊りを豊かにしています」

ギヨーム・ディオップ
Guillaume Diop

©James Bort/ OnP

筋肉質の長い脚を武器にジャンプも回転も思うまま。セネガル人の血を引いた力強さとしなやかさが共存するダンスには、フランス人の母から受け継いだエレガンスが薫る。
①2023年3月11日
②ジャン・コラリ&ジュール・ペロ振付『ジゼル』
③ジョゼ・マルティネス
④「自分がしたいことと出合うと、彼は瞳を輝かせます。若さ、欲、やる気、そして強い活気があり、さらにまだ広がる大きな可能性を秘めています」

トマ・ドキール
Thomas Docquir

©Julien Benhamou/ OnP

コリフェで『白鳥の湖』のロットバルト役に配役された実力の持ち主。
①2026年6月21日
②ルドルフ・ヌレエフ版『ラ・バヤデール』
③ジョゼ・マルティネス
④「エレガントなダンサー。微笑みと光を舞台にもたらします。真摯に仕事に取り組み、パートナーからの信頼も厚い。急な代役で何度も主役を務め、任命でより自信がつき、今後ますます可能性を広げ、興味深い芸術的提案をしてゆくでしょう」

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芸術監督ジョゼ・マルティネスからのメッセージ。

  • editorial direction & text: Mariko Omura
  • editing: Eri Arimoto

*「フィガロジャポン」2026年9月号より抜粋