外出制限のフランス、アマンディーヌ・アルビッソンの過ごし方。

パリとバレエとオペラ座と。

3月17日以降続いているフランス政府による外出制限令で、パリ・オペラ座バレエ団のダンサーたちは、公演はもちろん、リハーサルもなく、ガルニエ宮でのクラスレッスンすらも取れない毎日を送っている。彼らはいま、どんなふうに過ごしているのだろうか?

2月27日から3月9日まで東京文化会館で行われた来日公演『ジゼル』『オネーギン』の舞台で大きな感動を観客に与えたエトワールのアマンディーヌ・アルビッソンに、現在の暮らしについて、日本での思い出とともに少し語ってもらおう。

来日ツアーについて。

―― 公演について、どのようなよい思い出がありますか?

日本の観客に再会できたことですね、まずは。2018年に『オネーギン』の公演がパリであった時は、怪我で舞台に立てませんでした。だから、2014年にタチヤーナを踊って(エトワールに)任命されて以来、初めての『オネーギン』だったし、それを日本で踊れたことはとてもうれしかった。それに東京の初日3月5日はまさに6年前の私の任命日だったので、感動はより深いものでした。

―― 公演以外での日本での思い出は?

たくさんあります。というのも母が一緒だったので。かつてダンサーだった彼女なので、こうしてオペラ座のツアーに初めて同行したのは興味深いものだったようです。私が東京で好きな場所を案内し、またふたりで新しい場所を発見でき、多くを母と分かち合えてとっても満足!

―― 東京での新発見は?

たくさんのレストラン。そのなかでも地下鉄の浅草と田原町の中間の細道にある、昔ながらの木造のお好み焼きの店。最高だった。ここは次回にも絶対に行きます! そして、ついにあんこの和菓子……どらやき……を食べたことです。

―― 残念に思ったことは?

新型コロナウイルスが理由とはいえ、いつもは公演後に劇場の外で待っていてくれる日本の観客に会えなかったことが残念です。パリではいつものことだけど、日本で誰も待っていないって、ちょっと奇妙な感じでした。

―― 機会があったら日本の観客を前に踊りたいと思う作品は?

パリで昨年初役で踊った『椿姫』。 これは2014年の来日ツアーの演目で、その時私は『ドン・キホーテ』の女王を踊りました。そして機会があったら願うのは『ボレロ』です。

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東京にて。photos : Courtesy of Amandine Albisson

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外出制限について。

―― 外出制限期間をどこで過ごしていますか?

フランス南西部の大自然に囲まれて。フィアンセの父親の家で、彼も一緒です。

―― ダンスのレベルを保つために行っていることは? オンラインのレッスンに参加していますか?

日常のルーティンを自分に課しています。幸運なことに未来の義父が床、鏡、バーでガレージ内に簡易レッスン場を造ってくれたんですよ、素晴らしいでしょ。そこでバーレッスン、それからプランクをし、週に2〜3回は彼と一緒に有酸素運動のコースをしています。毎朝、起きるのは10時30分から11時。寝るのが大好きなので、この時期を利用して睡眠をたっぷりと!

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ガレージ内でバー・レッスン。 photo : Courtesy of Amandine Albisson

――いまの時期のいちばんの関心事、気がかりは?

たくさんあります。いつまで続くかもわからない状況から、いかに脱せられるのか……職業的にも私的にも大きな影響が必ずあることでしょう。来日公演を実現できたのは本当に幸運でした。肩の荷を下ろしたといえます。5月にオペラ座で予定されている『マイヤリング』……これはキャンセルされたら残念。でも来シーズンかあるいはそう遠くないシーズンでプログラムされるんじゃないかしら。個人的なことで心配なのは、この夏に挙げる結婚式が行われるか……。知り合い、家族、友達が元気でいるかどうか、これもとても気になります。

―― この状況における喜びは?

これもたくさん。結婚式についてあれこれ考え、準備をすることですね。たとえば会場の飾り付けは多くを手作りするつもりなので、それが進められます。結婚指輪もまだオーダーしていないし、テーブルの席次もまだ決めてないし……することがたくさんあります。それからシンプルなことだけど庭に出て、自然を耳にし、目にすることです。

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結婚式のデコレーションを手作り。photo : Courtesy of Amandine Albisson

―― この時期、何が恋しいですか?

友達や家族に会えないこと。近況を知りたいので毎日のように電話はしているけれど……。ダンスについては、ダンスそのものというより、オペラ座内にいないこと、リハーサルスタジオでほかのダンサーたちと一緒の時間を過ごせないといった、ダンスの周辺の雰囲気。

―― 外出制限期をよりよく過ごすために、自身に課していることは?

日常のプランニングに沿った規則正しい生活。読書にも時間をかけています。

―― 自由に外出できるようになったら、最初にしたいことは?

友達や両親に会うこと。

―― 踊れない日々が続いています。自分にとってダンスが何であるかを考え直す機会となりましたか?

もちろん。ダンスは私の生活の一部。ダンスウエアを着て、トゥシューズを履いてということがなく、何か足りない、って感じています。汗をかく、筋肉に強いるといった身体的な消費も足りていませんね。芸術面も、そう。いまのところはまだ大丈夫だけど、これ以上続くと……。

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咲き始めた桜と。 photo : Courtesy of Amandine Albisson

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大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。

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