想像の翼を広げて、ベッキー初めてのアート展へ!

インタビュー 2018.08.26

初の時代劇主演やファッションモデルなど、さまざまな挑戦を重ねているベッキー。ウェブサイト「ザ・ファッションポスト」にてエンポリオ アルマーニとのコラボレーションで見せたクールな表情や、「フィガロジャポン」連載「齊藤 工 活動寫眞館」(4月号)での大人の女性の落ち着いたまなざしは、いままで語られてきた彼女のイメージとは大きく異なる。昨年からアクリル画を描き始め、この秋、新宿にあるNEWoManのアートウォールでベッキー初の個展『空へと』が開催される。今回、個展に向けて制作真っ最中の彼女にインタビュー。新たな挑戦への思いや絵を描く喜びを語ってくれた。

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絵を描くことで得た自由。

——いまベッキーさんは表現する楽しさに目覚めていらっしゃいますよね。これまでを遡って、絵との関わりはどのようなものだったのでしょうか?

絵を描くことはずっとしてきました。たとえば卒業アルバム。クラス全員が「ベッキーでしょ」と、どんな場面でも絵を描く担当。プリクラのデコレーションもベッキーお任せ。それから番組のグッズを作ったり、子ども服のデザインは10年ぐらいやっていました。写真館用の和装やドレスを何百も手がけたりして。

——けっこうな数ですね。

デザイン系の仕事はバリバリやっています。ただこれまでデザイン画は描いてきたものの、最終的に違う人が形にしていたから、ちゃんと自分が描いたものが作品になるのは昨年からです。30代になって、スケジュールはいい感じにゆったりしているので、心を込めて描く時間が持てているのがいいなって。いま出合えたことに意味を感じるというか。

——いま雑誌「InRed」で連載をされていますが、挿絵はどのぐらいで描き終わるものですか?

だいたい2日。時計を見ずに集中して描けるのが90分くらいで、長い時は90分を2〜3セット。家の中にあるアトリエで描いています。

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「InRed」(宝島社刊)2018年1月号より。

——いつ描いているんですか?

昼過ぎとかですね。朝ごはんを作って掃除して、買い出しに行って夕食を作るまでの時間に。あとは仕事のお迎えが来るまでにささっと描くとか。最近はやることも仕事も増えたから30分だけの日とかもありますけど。1日何時間描けたかじゃなくて、いかにこまめに描けるか、続けていけるかが大切で、1日10分でも描けたら描きます。特にいま大きな作品を描いているから、いろんな思いをちりばめたくて。描けば描くほど楽しい。ひとつ決めていることがあって、ポジティブな気持ちの時に筆を握ることにしています。もちろん辛い時や苦しい時もありますが、そんな時はこれを乗り越えて幸せになりたい気持ちに変換してから描きますね。

——なぜそう思うのですか?

仕方なしに描いたり、焦ったり、嫌々描いたら、観る人には伝わっちゃう気がして。そのきっかけとなる出来事があって、実は今年、名前を隠してある商業施設で絵を3枚飾ったんですよ。

——シークレットで!?

最初は1枚だけ飾る予定が、3枚飾れることになり、間に合わせるように2枚ポンポンと描いて。夜中に搬入して、身近な人や知り合いの画家さん、店長さんにどの1枚が好きか聞いた時に、最初から飾る予定の1枚を全員が指差して「これ何か伝わるから」って言われて。それはすごく気持ちを込めて描いたものだったんですね。その瞬間に絵って伝わるんだと思って。だったらネガティブな気持ちで描いたり怒りをぶつけたりとか私はしたくないなって。

——前向きさを伝えたいというベッキーさんの美意識はどこから来ますか?

それが美意識なのかはわからないですけど、絵は影響を与えるものだから悪影響を人には与えたくないので。ベッキーの絵を観ているとハッピーになるよね、とか、また次が観たいと思うような絵を描きたいなと思って。だからこそ、心のコンディションがいい時に描いています。

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「InRed」2018年2月号より。

——バラエティは見ている人にとってはひと息つく楽しみの時間ですが、演者は真剣勝負の場、人にジャッジされるお仕事です。予期せぬことも起きるし、そういう時にどのようにいい状態にもっていくのでしょうか?

うーん。いいコンディションでもそうでなくても、カメラの前に立ったら絶対いいコンディションにはなっているので。

——切り替える。スイッチを入れるような?

そう、それが仕事だと思っているので。だから仕事がすごくハードだったり、ちょっと思っていたのと違う方向に行ったりして心の負荷を感じた時に、私、絵を思い出すんですよ。「いまはハードだけど私には絵を描く時間があるじゃん。そこで自由でいられるんだから、これぐらい頑張ろう」って。そういう場ができたんですよ!

——素敵ですね!

いままでそれをいったいどうしてたんだろうって思うぐらい。「私にはこの幸せがあるんだから、これぐらいは乗り越えよう」って思えるようになりました。

——絵からその気持ちが伝わります。カラフルな色使いからも、柔らかい気持ちや楽しい気持ちが。

あー、うれしいです! でもやっぱり実物を見てほしいですね。今回の個展に向けての絵は160×160cmの大きいものが3枚なんですけど、長期間にわたって飾るので遊びたいなと思っています。アートは自由でいいから。最終日の何日か前に、余白のところに小さな絵を30枚ぐらいバババって飾ろうかなと思って。「あれ?昨日と違う」みたいな。

——生き物みたいに作品が増殖していくんですね。

そうそう。そういうのをやっちゃおうかなって。

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NEWoManでの個展『空へと』に向けて。

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絵画制作中のベッキー。

——NEWoManで作品が展示されることになっていかがですか?

NEWoManさんでは普通にお客さんとしてショッピングしていたのでうれしくて! コンセプトがいいなと感じていたし、勢いもあっておしゃれだし、大好きです。ご縁をいただけてとてもうれしかったですね。

——昨年個展をしたいとおっしゃっていてすぐに叶った形ですよね。

はい! 昨年絵を描き始めて、いきなりイベントで「2019年個展やります」って何も決まってないまま宣言したら、結果的には前倒しになりましたけど。

——飾る絵はどのようになりそうですか?

3枚飾る絵は何となくは決まっていて、1枚目は生きる喜び。「ありがとう」とか「人生って素晴らしいね」っていう思いで90%くらい描き終えていて。2枚目はNEWoManに捧げる絵。素敵なご縁をいただけたことへの喜びと今回のタイトル『空へと』に寄せて、この絵を見た方々が「羽ばたきますように」という気持ちを込めています。3つ目はその時決めよう、自由にやっちゃおうって。

——雑誌の企画でドイツを代表するアーティスト、アンゼルム・キーファーさんを訪ねられた時、そのアート作品はアウシュビッツなどをテーマに重い題材だったと思いますが、彼から受けた影響はありますか?

あります。ただ私はその重さの影響は意外と受けなくて、いちばんびっくりしたのが、彼の作品を貯蔵している大きな倉庫で本人が最初1時間ぐらい説明をしてくれた時。1千万円とか1億円の価値があるだろうお部屋みたいなアート作品があって「中に入りなよ」と言われたけど、作品だし躊躇したら「君が入ることで作品になるから。作品にもどんどん触ってみて」って作品の一部にしてくれて。その時に「あ! 自由でいいんだ」って感じました。それからは、心に遊びが出てきましたね。アートってまずは楽しまなきゃいけないなと思って。

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「InRed」2018年3月号より。

——NEWoManでのアートウォールは、たくさんの人が楽しみに集まる場になるといいですね。

そうですね! 20日間まったく同じ表情のままよりは、徐々に増えていくのもおもしろいし、通勤で前を通られる方もいらっしゃるので、何だこれ!?って驚いてもらえるようにしたいなと思って。バラエティだと番組がある程度成立しなきゃいけないとかおもしろいこと言わなきゃいけないとか、芝居でも制約があるけれど、アートは正解がなくて、作品の好き嫌いはあっても、自分がいいと思うものを伸び伸びと作れるのが楽しいですね。

——絵を描く時のインスピレーションはどのようなものから得ていますか?

何でもですね。食べ物からヒントを得ることもあって。たとえばハンバーガーの具材の重なりから絵の具を重ねてみようとか、釣りに行った時に魚がスイスイ泳いでいるのを見てこの魚みたいに自由なものを描こうとか、いい人と出会った時にこのうれしい気持ちを描こうとか。そもそも描きたいものが無限大にあります。1枚の絵を描いていたら5枚分のアイデアが浮かんできちゃう。何を描いたらいいかわからないっていうのがなくて、それが初めてで。

——あふれてくる感じでしょうか?

そう。あふれてくる。たとえば、昔歌手活動をやっていた時の「歌詞、何書けばいいかわからない」というようなことが、絵に関しては全然ないですね。歌はやりたかったことですけど、それこそ当時はいろいろなことを気にして自由でいられなくて。いま自由でいいんだっていうモードなので、歌も「もっと自由にやればよかったんじゃない?」って思います。だから変な歌はすっごい作ってみたい(笑)。

——もともと芸能界に入った時、いちばんやりたいことは何でしたか?

バラエティタレントになれば全部ができると思っていました。女優なら女優しかできないし、歌手なら歌手、でもバラエティタレントなら全部できるなって。

——2009年出版の『ベッキーの心のとびら』から約10年を振り返って、いま文章を書いたり、絵を描く表現にどんな変化や違いがありますか?

過去の自分は否定したくないし、この本もその時のリアルな気持ちで、結構同じことをいまも思っていたりします。でもいまはより自由に、人の目を気にしなくなったというか。「エッセイ書いてください」って言われた時も、文章力に自信がないから、昔なら「インタビュー形式にしてください」ってお願いしたかも。でもいまは「はい、やります。文章下手ですけど、それも私なので」と言える。どうジャッジされるかよりも、自分が100%アウトプットすること、人が付けた点数よりもまずは自己採点が大事って思うようになりましたね。自分がどれだけフルスイングしたかっていうことが大切なんです。

——ありのままの自分を受け入れながら、まずは自分自身が物事にどう向き合うのかということですよね。30、40代はどんなふうでありたいですか?

いちいちクヨクヨしない女でいたいですね。けっこうクヨクヨしちゃうので(笑)。それと、プライベートなことは自分で何でもできる人間でいたい。この仕事をしていると現場でも必ずスタッフさんやマネージャーさんが助けてくれる。メイクさんやスタイリストさんがキレイにしてくれて、周囲の支えがある。でも生活は生活、仕事は仕事で自分のチャンネルを持つべきだなって。「お母さん何でもできてカッコイイ」っていう人になりたい。ま、結婚するかわからないですけど(笑)。

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「InRed」2018年4月号より。

いままで身に付けたパターンやルールを手放し、新しい世界に踏み出すベッキー。彼女の生き方と絵を描くことで得られる充足感はリンクしているようだ。心地よい自由な場所を見つけ出した人はこんなにも明るいエネルギーを発するものなのか。その生き生きとした表情、語り口にインタビューは終始幸せな空気に包まれた。9月の個展で展示する作品のひとつは、型にとらわれず立体物にしようかとも思っているのだそうだ。会期中、展示内容は変化していくという。自由な表現に目覚めた彼女のイマジネーションが、見る人を秋の空へと羽ばたかせてくれる。

Becky
1984年生まれ。テレビ、映画、CM、雑誌などで活動。「FULL CHORUS ~音楽は、フルコーラス~」(BSスカパー!)などのレギュラー番組ではMCを担当。時代劇「くノ一忍法帖 蛍火」(BSジャパン)では主演を務める。セレクトショップ「STUDIOUS」とのコラボレーションラインでは洋服のデザインを手がけ、今年8月には第2弾を発表した。動画配信チャンネル「30Channel」にてチャンネルを開設。
https://www.becky.ne.jp

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齊藤工がベッキーを撮影。「齊藤工 活動寫眞館・捌 ベッキー。」

ベッキー meets NEWoMan ART wall. supported by BASE
『空へと』

会期:2018年9月1日(土)〜20日(木)
NEWoMan ART wall.(JR新宿駅ミライナタワー改札横)
https://www.newoman.jp/art

interview et texte : HITOMI KAWASHIMA

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