漢方の力を現代にアップデートし、心身をチューニング。【TIB SHOP】

Society & Business

清水虹希(nonu)

2026年7月22に開催されたフィガロジャポンBWAピッチコンテスト。会場は、世界中のイノベーションの結節点として、革新的なアイデアやテクノロジーで社会を前進させる挑戦者が集う「Tokyo Innovation Base(TIB)」。1階に常設されるTIB SHOPに出店経験のある起業家3人が、コンテストの基調講演のなかで、それぞれ3分間のピッチセッションを行った。

nonuの3種類のフレグランスソープ。左から、張り詰めた気分を解き放つ「発散理気 Hassan Riki」、オンとオフを調律し本来の自分を取り戻す「中庸 Chūyō」、夜に深く落ち着くための香り「沈潜 Chinsen」。

大学4年生の清水虹希(しみずにき)は、漢方をベースにしたフレグランスブランドnonuをリリース。7月のBWAピッチコンテスト開催日を含めた、2カ月間にわたるTIB SHOPでの展示体験が起業を後押しした。「nonuが目指すのは、ノイズの多い都市生活の中で、日々生じる感覚のズレをその都度、漢方を通じてチューニング(調律)して、いつでも活動できる状態に戻すことです」

慶應義塾大学SFCに通いながらnonuを創業した清水虹希。

創業のきっかけは、心のケアの重要性に気づいたことだ。「私の周囲には、起業家やクリエイターなど熱量あふれる若者が多くいますが、一方で過度なストレスや孤独、情報過多により心と身体のバランスを崩し、志半ばで立ち止まってしまう姿も目の当たりにしてきました。そして私自身の心身不調をきっかけに、メンタルヘルスの課題を身近に感じるようになりました」

4代続く鍼灸の家に生まれ、小さい頃から漢方医学が身近にある生活を送ってきた清水。漢方の根底にある予防医学の考え方に着想を得た。

「東洋医学には、『心身一如』といって心(精神)と身体(肉体)は切り離せないものであるという考え方があります。心の不調が身体に現れることを実感し、現代に合ったセルフケアの形を再構築したいと思いました。いま求められているのは、都市を離れてスローライフへ転換することではなく、ノイズの多い都市のダイナミズムの中で、自分らしく生き続けるための手段ではないでしょうか。だからこそ、伝統的な漢方を『マイナスからの治療』としてではなく、日々の感覚のズレをチューニングし、意志を持って自分を表現し続けるためのアプローチとして再構築したい。それが、私が『nonu』を始めた理由です」

都市生活をする人たちが感じる感覚のズレを、漢方を通じてチューニングすることを表現した、nonuのイメージビジュアル。

日常生活の中でルーティンとして使ってもらえるように考案したプロダクトが、漢方の材料を使ったフレグランスソープだ。スマホを手放せる唯一の時間である入浴中に、固形石鹸を泡立て漢方の香りを吸い込むことで、心身のリズムを整え、リセットする。第1弾として、3種類のフレグランスソープをオンラインにて先行販売。7月に行ったクラウドファンディングでは、開始からわずか4日間で支援総額100万円を突破し最初の目標金額を達成するなど、大きな注目を集めている。

「今後は漢方医学、ウェルネス、香りをキーワードに、フレグランスにとどまらずさまざまなプロダクトを展開していきたい。まだ始まったばかりですが、海外展開も目指して頑張っていきたいです」

基調講演のピッチで、漢方の予防医学の概念を現代のライフスタイルに取り入れることの必要性を語った。
パッケージデザインやビジュアルにも、漢方を現代のライフスタイルに合わせて提案したいという清水の思いが込められている。

nonu
https://www.instagram.com/nonu_tokyo

Other exhibitors
個性豊かな、TIB SHOPの出店者たち。

BWAピッチコンテスト2026では、TIB SHOP出店経験者のなかから、3名の基調講演登壇者を含む10名の起業家たちによるプロダクト展示を行った。来場者が自由に製品を手に取り、出店者と会話を交わし、互いに刺激を与え合う場となった。そのなかから、2名をピックアップ。

安全でおいしい、米粉パンを広めたい。

宇佐育代(宇佐米粉製パン)

宇佐育代(左)が夫(右)とともに始めた宇佐米粉製パンは、国産米粉100%・28アレルゲンフリー・無添加で、誰もが同じパンを食べられる食の未来を目指す。オンラインショップでの販売を中心に、都内のレストランでも採用されている。
https://riztronc.base.shop/

大人が身に着けたくなる、防犯アクセサリー。

奥出えりか(Yolni)

「夜道の不安をなくす」をミッションに防犯アクセサリー「Yolni 」を開発した奥出えりか。 日常に寄り添うIoT防犯アクセサリーは機能・デザインの両面で幅広い世代へ向けた製品だ。2023年「TokyoものづくりMovement未来のものづくりベンチャー発掘コンテスト」で最優秀賞を受賞。
https://yolni.jp/

TIB SHOP
東京都千代田区丸の内3-8-3 1F(Tokyo Innovation Base内)
Tel. 080-4100-2304
営)11:00~19:00(月~金) 11:00~17:00(土、日、祝)
休)年末年始
https://tib.metro.tokyo.lg.jp/shop

photography: Aya Kawachi text: Junko Kubodera