ベトナム茶に魅せられ、生産者の声やストーリーを届けるために起業。【TIB SHOP】

Society & Business

内田聖菜(Encha)

今年で5回目を迎えたフィガロジャポンBWAピッチコンテスト。日常の課題を解決しながら、美しく豊かな暮らしとより良い社会を目指す女性起業家たちが、ビジネスアイデアをコンテスト形式で発表・発信する場だ。2026年の会場となったのは、世界中のイノベーションの結節点として、革新的なアイデアやテクノロジーで社会を前進させる挑戦者が集う「Tokyo Innovation Base(TIB)」。1階に常設されているTIB SHOPに出店経験のある起業家3人が、コンテストの基調講演のなかで、それぞれ3分間のピッチセッションを行った。

Tinhのベトナム茶はBWAピッチコンテストのウェルカムドリンクとして、そしてコンテスト後の交流会で振る舞われた。

一人目の登壇者はEncha代表の内田聖菜。教育系のIT企業に勤務し、ベトナムへ転勤することになった内田はある日、ベトナムの友人が振る舞ってくれたお茶に感銘を受けた。「こんなにおいしいお茶があるのかと驚き、ベトナム茶に惚れ込みました。その魅力を多くの人に伝えたいと思い、会社を退職してベトナムで起業しました」

BWAピッチコンテストの基調講演に登壇した内田。

生産者を訪ね、一緒にお茶作りを体験するうちに気づいたことがあった。「ベトナムでは非常に丁寧にお茶が作られているにもかかわらず、消費者にそのクオリティが伝わっていない。知名度の高い中国茶や台湾茶として製品が流通しているという現実を目の当たりにしました」

ベトナム茶を取り巻く業界の継続的な発展のためには、生産者の声やストーリーを届け、消費者の声を生産者にフィードバックする必要がある、と感じた内田。2023年、ベトナムでSimple Tea Lifeを創業し、翌年日本進出を果たした。25年にはTinh(ティン:“純粋”“本物”の意)としてリブランディングを行い、クラウドファンディングにも挑戦。取り扱う茶葉の買い付けは自ら行い、ストーリーを伝えるプロジェクトも立ち上げた。その第1弾がベトナム茶の日越巡回写真展『Echoes of Life | Tea from Vietnam いのちのバトン』だ。

「駐日ベトナム大使館に後援いただき、8月から3カ月間にわたって東京、ホーチミン、ハノイの3都市を巡回する写真展を企画しました」。東京の展覧会場ではベトナムとネパールの新茶の飲み比べや、ベトナム料理のシェフとのトークイベントなど、さまざまな企画を行った。

東京でのブランドローンチ前にはテストマーケティングとしてTIB SHOPに出店。この経験が、売れ筋商品や商品価格を設定する決め手になったという。「TIB SHOPではビジネスに繋がるきっかけを得ることができました。実際にお茶を飲んでいただいたことで、ミシュランの星付きレストランと提携することもできました」

1年前にTIB SHOPに出店したことが、東京でのビジネスのきっかけに。

豊かな大地と気候に育まれ、農薬・化学肥料・香料を使わずに作られたベトナム茶は、ハスやポメロ、チャンパカなど生の花で香り付けされ、リラックス効果も抜群だ。会場ではマスカットのようなフルーティな香りのドラゴンクロー茶が振る舞われ、ノンカフェインドリンクとして好評を博した。

山奥に自生し、大切に作られてきたベトナム茶。作る人と飲む人がともに文化を育てていく橋渡しとして、内田はこれからもその純粋な情熱で走り続ける。

ベトナム山中に自生する茶樹や農家の様子を説明。
ドラゴンクロー(龍爪)やチャンパカ緑茶、ベトナム烏龍ほうじ茶など、10種類がラインナップ。

Tinh
www.tinh.jp

Other exhibitors
個性豊かな、TIB SHOPの出店者たち。

BWAピッチコンテスト2026では、TIB SHOP出店経験者のなかから、3名の基調講演登壇者を含む10名の起業家たちによるプロダクト展示を行った。来場者が自由に製品を手に取り、出店者と会話を交わし、互いに刺激を与え合う場となった。そのなかから、3名をピックアップ。

食を通じて課題解決を行う。

菅原梨沙(FSP)

菅原梨沙が2020年に設立した「FOOD STORY PROJECT(FSP)」は、食を通して課題解決を行うクリエイティブプロダクション。会場では健康的な朝食習慣を促すための冷凍スープとマフィンを展示。
http://food-story-project.com/

地域経済と伝統産業を活性化。

古川恵美(1684)

岩手県最古の酒蔵、吾妻嶺酒造。古川恵美は、酒造りの過程で大量に廃棄される酒粕を原料にしたスキンケアブランド「1684」を立ち上げた。衰退する日本酒業界と、酒粕の大量廃棄の課題にチャレンジする。
https://1684.jp/

子育ての経験を生かし、起業を決意。

竹内ひとみ(コロリドージャパン)

子育てによるキャリア空白という苦い思い出があるという竹内ひとみ。4人の子育てが一段落した節目に「coloridoh(コロリド)」を起業し、遊びながらおいしく食べられる新発想のクッキーを開発。
https://coloridoh.jp/

TIB SHOP
東京都千代田区丸の内3-8-3 1F(Tokyo Innovation Base内)
Tel. 080-4100-2304
営)11:00~19:00(月~金) 11:00~17:00(土、日、祝)
休)年末年始
https://tib.metro.tokyo.lg.jp/shop

photography: Aya Kawachi text: Junko Kubodera