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LEXUS
森 星、デザインと技術が融合するレクサスのものづくり現場へ。
前回の対談でものづくりの姿勢に共感した森星が、LEXUSの本拠地である愛知県の下山(しもやま)を訪れた。新型車を世界に初めてお披露目するワールドプレミアとともに、普段は見ることができない車づくりの裏側を体感した貴重な様子をリポート。

ジャケット ¥220,000、パンツ ¥79,200/ともにソウシオオツキ(エムエイティティ) トップ、ベルト、ソックス、シューズ、ピアス/以上スタイリスト私物
一般客にも開かれた、世にも珍しいLEXUSの開発拠点。
名古屋駅から車で約1時間。本社のある豊田市と岡崎市の山あいにあるトヨタテクニカルセンター下山は、2年前にオープンした施設。東京ドーム約140個分の広さを誇る敷地では3000人近くの人々が働き、車両開発棟には企画、設計、デザイン、テストドライバーなどの担当者が一堂に集結。部署の垣根を越えてリアルタイムで意見を交わし、よりよい車づくりのために日々努力を続けている。こうした車両開発の現場は通常ヴェールに包まれているものだが、この施設は一部が一般公開されているという点でも非常に珍しく新しい。緑豊かな敷地内には、無料で見学できる車の展示コーナーやレーシングシミュレーターが設置された来客棟があり、地域の人々との接点にもなっている。

対話と手作業、アナログな工程から生まれる革新的な車。
森星が今回特別に足を踏み入れたのは、3つのフロアからなる開発棟。車の外装パーツや室内シートなど、さまざまなカラーのマテリアル見本が並ぶデザインルームでは、服づくりとの共通点に言及。「表現したいイメージに合わせて、いろいろな素材や色を組み合わせていく感じは、服を作るのにちょっと似ていますね」

森が特に興味を示したのは車体のクレイモデル。約70度に熱した粘土を使い、平面のデザイン画をもとに立体へと起こしていく。外装デザインの細かなニュアンスを捉えるために作るもので、精緻な手作業が要求される。盛っては削り、盛っては削りを繰り返し、3カ月で計3〜4回は作ってデザインを吟味していく。最後に塗装すれば、本物さながらの仕上がりに。クレイモデルを見て、思わずドアに手をかけてしまう人も多いという。
AIやCGが発達したいま、この手間のかかるクレイフェーズをデザイン工程の中で重要視し、アナログな工程に比重を置いているメーカーはもはや珍しい。モデル業と並行して、日本のものづくりを世界に発信している森は、「車というテクノロジーの産物に対して、彫刻のようにとても人間的なプロセスをとっていることに感動しました。美しい面を表現するためにこうしてひとつひとつ手作業を重ねていくさまは、民藝の精神性や工程にも通ずるものがあると思います」とコメントした。

乗る人の所作まで美しくする、究極のラグジュアリーカー。
完成した車を展示するスペースでは、前回写真でしか見ることのできなかった「LS Concept」を発見。このモデルの最大の特徴は、常識にとらわれない発想で実現した6輪であること。タイヤの数を増やすことで後輪が小さくなり、車内が格段に広くなる。3列シートの課題であった、2列目を動かさないと3列目に乗れないという問題点も解消された。さらにその恩恵は、乗降時の所作にまで及ぶ。後輪の縮小によって乗降口も必然的に広くなり、誰もがエレガントに乗り降りできるというわけだ。

内装には漆や竹、シートの化粧材には国産杉など、日本の伝統工芸や素材を贅沢にあしらった。森が、「車というより部屋みたい!」と感嘆の声をあげた車内は、まさに居住空間さながらの心地よさ。黒や硬い質感の素材は極力控え、柔らかでコージーな色素材のトーンでまとめられている。
「広々としていながら、包み込まれるような乗り心地。シートやディテールも、インテリア家具のような佇まいです。機能や空間が磨かれているだけでなく、乗る人の所作まで美しく。とても日本的で、ラグジュアリーの本質を捉えたアプローチですね」

よりよい車をつくるために、走る・壊す・直す。
1階の「ガレージ」と呼ばれる場所では、エンジニアがシステムの点検や新型車の構造試作などを行う。ここにある車は、すべて情報解禁前のトップシークレットであるため、車体がゼブラ柄やマーブル模様のようなラッピングで覆われている。万が一写真が外部に出ても、車の細かな構造がわからないようにするための配慮だという。

「これまで見たこともない、想像もつかない車の案があがってきたとしても、とにかく何でもやってみる(笑)。下山ではそんなチャレンジができるからこそ、新しいものが生まれるんだと思います」と、チーフエンジニアの井藤氏。
最後は、敷地内に作られたテストコースへ。「道がクルマをつくる」をモットーに、ドイツの過酷なカーレース場、ニュルブルクリンクを模して作られたコースは、ヘアピンカーブや悪路の連続。車を限界まで追い込み、壊れたらその場で直し、また走らせる。テストドライバーは、プロのレーサーが務めることも少なくない。LEXUSの車は、市場へ出る前に、こうした高いストレス下で鍛え上げられていく。

一方で、テストコースはこの土地の自然と共存するように作られており、親子連れの鹿が突然顔を出したり、といったのどかな光景も見られる。会長の豊田氏は、このトヨタテクニカルセンター下山を、単なる車両開発の場ではなく、地域の人々や自然とともに歩んでいく共生の場所として形作った。
“GENBA”には、どこまでも新しい発見がある。
今回のワールドプレミアに参加した森の心に最も強く残ったのは、プレゼンテーションの中で登場した「GENBA」という言葉だ。挑戦する自由が与えられ、デザイナー、エンジニア、メカニック、ドライバーなどが、下山というひとつの現場でまだ見ぬ車を生み出していく。圧倒的熱量のスペシャリストたちがチーム一丸となり、ときに意見を闘わせる、LEXUSの車づくりの原点。


LEXUSの開発の現場を目の当たりにし、モデルである森は自身の経験も振り返りながら最後にこう語る。
「ファッションも、実はいろいろな人のアイデアや関わり合いによって生み出されています。LEXUSの車もまた、新たな1台を生み出すために、これだけ多くの人の対話と時間を要することがわかりました。そして、その根っこが現場にあるというのは、ファッションや車というジャンル問わず同じこと。LEXUSというラグジュアリーカーが、ある意味泥臭く、アナログな工程を経て生まれるという事実は、ものづくりにおいてとても大切なことだと思いました」
Hikari Mori 森星
1992年生まれ。東京都出身。モデルとして国内外で活躍し、途上国の女子を支援する公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンのアンバサダーを務める。創業者の一人としてCDを務めるtefutefuでは、日本的ウェルビーイングを促進すべく、伝統や文化を尊重しつつ現代になじむ形に再編集して世界に発信。2022年にはブルガリアウローラアワード及びフィガロジャポンBWAアワードをそれぞれ受賞。
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- text: Mana Sasamori