IT界の巨人たちがファッション業界に関心を寄せる理由は?

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買収の噂、ブランドとのコラボレーション、雑誌の表紙、ファッションショーの最前列……マーク・ザッカーバーグやジェフ・ベゾスをはじめとするテック業界の巨人たちは、いまやファッション界を何としてでも取り込もうとしている。その背景には、彼らにとって見過ごせない理由がある。

ジーンズにスニーカー、Tシャツというお決まりのスタイルは、もはや過去のものだ。最近では、「テック・ブロ(IT業界で働く男性)」と呼ばれるテクノロジー業界の大物たちが著名なデザイナーたちの傍らに姿を見せたり、最先端のブランドを身にまとったりしている。そうした動きから浮かび上がるのは、彼らが本当に求めているもの、つまり、200年の歴史を持つ業界が有する正統性と文化的影響力である。

5月4日、ファッション業界で最も重要なイベントのひとつであるMETガラが開催された。今年のMETガラで名誉会長を務めたのは、ほかならぬジェフ・ベゾスと妻のローレン・サンチェスであり、ふたりは主催団体へ1000万ドルを寄付した。

「コスチュームアート」をテーマとする2026年のMETガラに出席したジェフ・ベゾスとローレン・サンチェス・ベゾス。
(2026年5月4日、ニューヨーク、メトロポリタン美術館)
photography: Kevin Mazur/Getty Images for The Met Museum

何としても手に入れたいファッションの影響力

アマゾンの創業者で筆頭株主であるジェフ・ベゾスがファッション界に足を踏み入れるのは、今回が初めてではない。アマゾンは2012年、テクノロジー企業としていち早くMETガラのスポンサーを務めた企業のひとつだった。しかし、ここ数カ月でベゾスのファッション業界への関心はさらに高まっているように見える。実際、ベゾスと妻のローレン・サンチェスは、コンデナストの最高コンテンツ責任者であり、ファッション界に絶大な影響力を持つアナ・ウィンターとたびたび親しげに語り合う姿を見せている。さらにローレン・サンチェスは、2025年6月の結婚式に際して「ヴォーグ」の表紙を飾った。また今年1月には、夫妻がディオールのアーティスティック・ディレクター、ジョナサン・アンダーソンとともに、2026年春夏オートクチュールコレクションのバックステージでポーズを取っている。こうした動きに加え、根拠はないものの、ベゾスがコンデナストを買収するのではないかという噂が絶えず取り沙汰されていることを考えると、シリコンバレーとファッション業界の結びつきはかつてないほど強まっているようだ。

メトロポリタン美術館で開催された「コスチュームアート」をテーマとする2026年METガラに出席したプリシラ・
チャンとマーク・ザッカーバーグ。(ニューヨーク、2026年5月4日)
photography: Cindy Ord/Getty Images for The Met Museum

そして、こうした動きを見せているテック界の巨人はベゾスだけではない。マーク・ザッカーバーグもまたMETガラに出席し、プラダのスーツに身を包んでいた。今年2月、ミラノ・ファッションウィークで同ブランドのショーの最前列に姿を見せて以来、Metaとプラダによるアイウェアのコラボレーションが実現するのではないかとの噂が盛んに飛び交っている。

「マーク・ザッカーバーグがグレーのTシャツを脱ぎ捨て、プラダを着てファッションショーに現れたことには、非常に大きな意味があります」と語るのは、フリーランスのアートディレクターで「IALS Magazine」の創設者、さらにフランス政府の「Osez l’IA(AI活用への挑戦)」プロジェクトのアンバサダーを務めるナタリー・デュピュイだ。

「もしMetaのスマートグラスとラグジュアリーブランドとの提携が実現すれば、その製品の魅力や憧れの対象としての価値は大きく高まるでしょう」

変化する環境

よく考えてみれば、「テック・ブロ」と呼ばれる人々がいまやファッション界に進出していることは、それほど意外なことではない。この現象の背景にあるのは、パーソナルブランディングの重要性が高まっていることだ。

「ジェフ・ベゾスはこれまで、若くして髪が薄くなり、少し華奢な男性というイメージでした。しかしいまでは、『私は世界有数の富豪だ。ならば筋肉をつけ、立派なひげを生やし、成功者らしい力強い男性像を演出しよう』と考えているのでしょう」

そう語るのは、リヨン第2大学の情報・コミュニケーション学教授、ヴァンサン・ビュリッシュだ。

「もちろん、新しいパートナーとの関係が影響している面もあるでしょう。しかし私は、コミュニケーション戦略のアドバイザーたちの影響も考慮すべきだと思います」

この見方に同調するのが、戦略プランニング・コンサルタントのノエミ・バルマだ。

「私にとって、テック業界の巨人たちがファッション界に参入したがるのは、イメージ文化やソーシャルメディアの台頭の延長線上にある、ごく自然な流れです。ファッションはひとつの物語を語ります。彼らはその物語と結びつくことで、自らのイメージを向上させたいと考えているのです」

専門家によれば、注目すべきなのは彼らがファッション界に入り込もうとしていることではなく、むしろその世界が彼らを受け入れていることだという。

「長年、ファッション業界は彼らを業界の一員として認めようとはしませんでした」

しかしいまや、その力関係は逆転している。というのも、彼ら自身が業界の一部を握っているからだ。たとえば、多くのブランドはインスタグラムを通じて知名度を高め、顧客を獲得している。ファッション業界は存在感を維持するためにプラットフォームとそのアルゴリズムを必要としており、一方でテック業界の巨人たちは、現代のカルチャーと歩調を合わせるためにファッションを必要としている。ナタリー・デュピュイはこう指摘する。

「ラグジュアリーは、いまなお憧れが存在する最後の職人的な世界なのです」

そのため、ファッション界は、自社の労働環境や情報流通のあり方をめぐってしばしば批判されるテック業界の巨人たちにとって格好の舞台となっている。彼らはファッション業界に入り込むことで、他ではなかなか手に入らない、極めて収益性の高い「華やかさ」や「魅力」を獲得しようとしているのである。

お金の問題

 ミルク・スタジオで開催されたトム・フォードの2020-2021年秋冬コレクションのショーで熱心に話し込むローレン・
サンチェス・ベゾス、ジェフ・ベゾス、アナ・ウィンター。(ハリウッド、2020年2月7日)
photography: Kevin Mazur / Getty Images

情報・コミュニケーション学の教授であるヴァンサン・ビュリッシュによれば、「テック・ブロ」たちには、より現実的な狙いもあるという。それは、資本提携や投資関係を築くことだ。彼はこう説明する。

「彼らは莫大な資産を持っています。しかし、お金は運用しなければ価値を失ってしまう。だから投資をするのです」

こうしてファッション業界やラグジュアリー業界は、彼が言うところの企業の「新たな成長の原動力」となっている。テック業界の巨人たちは、こうした投資によって自らの資産を増やす一方で、魅力的ではあるものの経済的には脆弱な業界が発展を続けられるよう支えている。こうした戦略によって、彼らはファッション業界に欠かせない存在としての地位を築いている。資金面での支援と引き換えに、業界内での信頼性や「憧れ」のイメージを手にしているのだ。

「文化的な影響力はお金で手に入るのか?」という問いの対するシリコンバレーの男性たちの答えは、どうやら大きな「イエス」だ。そして、その手には分厚い札束が握られている。

From madameFIGARO.fr

※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

  • text: Axelle Dusart (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi