我が家、いつ買う? どう買う? 都内でマンション購入した女性たちに学ぶ。
家賃を払い続けるならいっそ物件を買うべき? 女性の不動産購入はハードルが高い印象があるけれど、実際にチャレンジした人たちの体験談と、不動産のプロのアドバイスをもとに、いま「買う」選択を考えてみたい。
自分が生きていくための土台を手に入れる。
そもそも私が家なんて買えるのだろうか——漠然とした不安が一歩踏み出すためのブレーキになる人は少なくない。女性の場合、結婚や出産といった将来の不確実性がある中、住宅ローンを背負う心理的負担は賃貸とは比べものにならないからだ。しかし、女性向け物件を数多く取り扱うことり不動産の石岡茜代表に話を聞くと、近年は変化が見られると言う。
「これまで女性にとって家を買うことは、“誰かに養ってもらう暮らし”と地続きでした。けれども、いま主体的に家を購入する女性たちが求めているのは、誰かの帰りを待つための『箱』ではなく、自分が自分として生きていくための『城』です」
検討の始まりは「家賃がもったいない」という等身大の気付きがほとんどだそう。ただ、価値観が変わったとしても、負債の重みが消えるわけではない。
「実際に住宅ローンを組むと、ぼんやりした未来が突然リアルに迫ってきます。すると『この場所を守るためにもっと価値のある仕事をしたい』という思いが自然と芽生えます。家という基盤ができると、誰かの決断を待つのをやめて、自分で意思決定しやすくなるので、それが結果として、キャリアアップや結婚などの好転にも繋がっていくはずです」
家を買うことは単なる不動産購入ではなく、自分の人生を自分の意志で描いていくための確かな土台を手に入れる手段のひとつ。じっくり考えてみては。
石岡 茜/Akane Ishioka
ことり不動産 代表。大学卒業後、不動産関連の事業会社で経験を積み、2013年にことり不動産を創業。現在、学芸大学駅そばに店舗を構え、女性ならではの視点で物件選びをサポートする。著書『持ち家女子はじめます 人生に「いいこと」が起こるおうちの買い方』(飛鳥新社刊)も話題。
https://www.cotorire.com/
リサーチ、計算、比較検討で、理想の物件と出合う。
Eさん|医師|34歳

購入時32歳・年収1,000万円
東京都中央区 1999年築マンション
約55㎡ 1LDK(現在1R)
約8,000万円(諸経費・リノベーション費1,200万円含む)
頭金なし 35年ローン変動金利
20代の頃は、いつか素敵な人と結婚して、家を買ってもらいたいと思っていました。けれど30代になり、誰かに依存するより、自らの土台を固めた方が人生も恋愛も対等で自由になれると気付いたんです。
購入に踏み切ったのは32歳、勤務医時代です。まずは徹底的なリサーチから始めました。住みたいエリアの坪単価、築年数、駅からの距離などをエクセルにまとめ、自作の相場一覧表で検討を重ねました。本気で探し始めて約2カ月、駅徒歩5分で希望の広さ、内見でも好印象だった物件が500万円値下げされた瞬間、「ここだ」と確信。物件代とリノベ費を合わせ約8,000万円、年収の約8倍というフルローンでしたが、返済額と賃貸相場を比較し、資産として残る合理性もエクセルで弾き出していたので迷いはありませんでした。
中古物件を選んだのは、自由なフルリノベがしたかったから。風通しがいいように扉のない広いワンルームに変更。友人を招いて食事ができる大きなキッチンと円卓を主役に据え、自分の背丈に合わせてキッチンやクローゼットの高さをミリ単位で調整しました。
家を買うと結婚が遠のくといわれますが、私の場合は逆でした。「ひとりの力で生きていける」という自立心が心の余裕を生み、当時付き合っていた彼との結婚に繋がったんです。住居という確固たる土台があるからこそ、リスクを恐れず念願だった開業にも踏み出すことができました。
退職をきっかけに、賃貸から持ち家にシフト。
K さん|会社員|40歳

購入時39歳・年収1,100万円
東京都中野区 2002年築マンション
約56㎡ 2LDK
約6,500万円(諸経費含む)
頭金500万円 35年ローン変動金利
新卒から勤めた会社を離れると決めた時、真っ先に頭をよぎったのは転職ではなく転居の準備でした。理由は単純。家賃補助が退職と同時に消滅するからです。「積み重ねた会社員としての信用を有効活用し、家を買う」─それが私の戦略でした。
退職日まで実質1カ月半の超短期決戦。すぐに入居できるリノベ済みの中古物件を探すことに。まずは当時住んでいた沿線を狙いましたが、市場価格は高騰し、予算内では40㎡未満の物件しかありません。そこで土地勘のあったJR中央線沿線にエリアを広げ、毎週末内見しました。信頼できる知人に立ち合ってもらい、「この物件なら売れる」という太鼓判が最終的な決め手となりました。
購入したのは築22年、約56㎡のフルリノベ物件。2LDKでの暮らしを満喫中です。購入後、自分でも驚いたのは、最新のシステムキッチンがあることで以前はおろそかだった自炊を楽しむようになったこと。ラジオを聴きながら料理をし、食洗機に家事を任せる。転職後も仕事中心の生活は変わりませんが、新たな気分転換の時間を手に入れました。
「結婚したら」「仕事が決まったら」とタラレバで先延ばしにするのは、住宅ローンという長期戦においてはリスクでしかありません。40代50代になって初めて重い決断をするより、若さと信用があるうちに練習のつもりで買ってみる。その合理的な判断が、いまの私の自由を担保してくれています。
子育て優先の物件に、夫婦対等なペアローンを選択。
Yさん|会社員|39歳

購入時37歳・年収480万円
東京都中央区 1982年築マンション
約70㎡ 1LDK+DEN(現在2LDK+DEN)
約6,300万円(諸経費・リノベーション費約900万円含む)
頭金なし 35年ペアローン変動金利(3,000万円+夫3,300万円)
長女の小学校入学を2年半後に控えた時に住宅購入を決断しました。以前から「家賃は掛け捨ての保険と同じ」という感覚があり、子どもを育てる長期的な拠点として現物資産の「家」を持ちたかったからです。
希望エリアは、土地勘があって評判のよい公立小学校がある「隅田川の内側」でした。資産価値が下がりにくい都心の新耐震基準マンション、かつ家族が穏やかに過ごせる広さを求めたところ、中央区で希望条件をすべて満たす中古物件に出合いました。
私たち夫婦は、話し合いを重ね50:50のペアローンを選択。これは高価格な物件を購入するためだけではありません。仕事も家計も対等なパートナーシップの象徴であり、どちらかに過度な遠慮をせず、互いに自立して支え合える関係性を重視した我が家の結果です。
購入後は、理想の住まいを形にするため、約900万円でフルリノベ。高身長な私たち夫婦に合わせたキッチンの高さ、夫の趣味を尊重した個室の書斎、娘が「アリエルみたい」と喜ぶブルーの壁紙が海のようなトイレなど、優先順位をつけてこだわりを実現しました。
子どもが小学生の間はこの家で暮らす予定ですが、家族のライフステージや仕事の変化に応じて、賃貸に出したり住み替えたりすることも視野に入れています。家を「一生に一度の買い切り」と考えなくてよいのは、資産価値も意識して選んだこの家ならではのメリットだと感じています。
- text: Yoko Sueyoshi
*「フィガロジャポン」2026年3月号より抜粋